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プロメテウス解剖学アトラス 頭部/神経解剖


(在庫なし)

監訳:坂井 建雄/河田 光博

  • 判型 A4変
  • 頁 432
  • 発行 2009年02月
  • 定価 12,100円 (本体11,000円+税10%)
  • ISBN978-4-260-00603-3
立体的な構造が理解できる、革命的な解剖学アトラス、シリーズ第3巻
これまでの解剖学図譜とは一線を画す革命的なアトラスの第3巻。CGによって作成された図譜の美しさは秀逸。特に頭部と神経解剖を扱った本書は、神経・血管の走行を細部に至るまで示し、頭部と脳の複雑な構造がこれまでにない視点から理解できる。また随所に臨床に応用できる表やチャートが盛り込まれ、構造と機能をリンクさせて学ぶことができる。医学部の学生はもちろん、脳神経外科、耳鼻咽喉科、頭頸部外科、歯科などの臨床医、コ・メディカルに最適。
序 文
訳者 序

 『プロメテウス解剖学アトラス』の第3巻をここにお届けする.2007年1月に上梓した第1巻では解剖学総論と運動器を,2008年7月の第2巻では頸部と胸腹部の内臓を扱っていた.最終巻となるこの第3巻では,頭部の器官と中枢神経系を扱う.

 本書の原著“Promethe...
訳者 序

 『プロメテウス解剖学アトラス』の第3巻をここにお届けする.2007年1月に上梓した第1巻では解剖学総論と運動器を,2008年7月の第2巻では頸部と胸腹部の内臓を扱っていた.最終巻となるこの第3巻では,頭部の器官と中枢神経系を扱う.

 本書の原著“Prometheus LernAtlas der Anatomie”は,ドイツが培った肉眼解剖学の伝統と,21世紀のコンピューター技術を融合させた,まさに解剖学の歴史の新しい1ページを切り開く解剖学書である.アトラスと銘打っているが,単なる解剖図譜ではなく,また記述を中心に据えた教科書でもない.視認性に優れた解剖図と文字情報を伝えるテキストの特性を生かして融合させた,統合型の解剖学書である.その構成は,系統解剖学や臨床解剖学といった伝統的な枠組みを単に踏襲するのではなく,医学生の学習に必要な事項を再吟味し,重要度に基づいて新たに選択し,新しい魅力的な解剖学の枠組みを実現したものである.解剖学書の命ともいえる解剖図も,独自の構想の下に新たに描かれているが,ここでも画家の優れた感性と技量,さらにコンピューターによる画像処理を用いて,これまでにない高品質のものを実現している.本書を手にとりページをめくると,整理された大量の情報が気持ちよく流れ込んでくる.必要な情報を求めてインターネットでホームページを探していくような快適感がある.

 本書は,全3巻構成のドイツ語版原書として2004年から2006年にかけて出版され,現在では英語版のほかに,日本語,フランス語,スペイン語,ポルトガル語,イタリア語,オランダ語,トルコ語,ギリシャ語,韓国語,ポーランド語での翻訳出版が進んでいる.出版界でも広く注目を集めており,ドイツ語版の第1巻が「2004年ドイツの最も美しい本」(ドイツ・エディトリアルデザイン財団)に選ばれ,英語版の第1巻がBenjamin Franklin Award 2006を受賞している.
 日本語版の第3巻である本書「頭部/神経解剖」は,消化・呼吸器の入り口と重要な感覚器が集まる頭部と,情報処理の中枢である脳と脊髄という,臨床解剖学においてとくに重要な部分を扱っている.医学生および臨床医だけでなく,幅広い医療職の人たちにも大いに役立つだろう.

 本書「頭部/神経解剖」の翻訳にあたっては,坂井と河田が全体に目を通しながら監訳を担当し,実力と実績のある方々に翻訳の分担をお願いした.翻訳のテキストとしてはドイツ語版を用い,必要に応じて英語版も参照した.訳語については,原則として日本解剖学会監修・解剖学用語委員会編集『解剖学用語 改訂13版』に準じた.とくに中枢神経系に関しては,原著における用語の概念を生かすために訳語を工夫したところがいくつかある.日本語訳にあたっては瑕疵がないように細心の注意をしたつもりではあるが,至らぬところは監訳者の責である.

 わが国における解剖学教育では,長年の献体の活動により十分な解剖体を得て,世界的にも類を見ない充実した人体解剖実習が実現されている.とはいえこの10年ほどの間に,医学教育を取り巻く環境が大きく変化し,基礎医学の教育においても,膨大な知識の習得を効率よく達成することが求められている.解剖学においてはさらに,医学全般の基礎として人体の構造について十分に理解を深め,解剖という行為を通して人体を扱う責務の重さを体験し,医療においてなくてはならない他者への愛を涵養するという,全人的な教育を心がけている.優れた教材の開発は,教育の困難と負担とを軽減し,より充実した解剖学教育を行うのに不可欠なものである.本書『プロメテウス解剖学アトラス』が,多くの学生たちに行き渡り,よりよい医療者となるべくその基礎を築いてくれることを願う由縁である.

 訳者を代表して 坂井建雄,河田光博
 2008年11月3日
書 評
  • 従来の神経解剖書では見たことがない,新しい視点から描かれた図
    書評者:上川 秀士(上川クリニック院長・脳神経外科学)

     解剖学の中でも神経解剖は難しく,わかりづらいと言われることが多い。その理由の一つに三次元的な脳神経系を二次元的な書物で説明していることが考えられる。また,解剖のみの記述であれば,臨床医にとっては日常診療と関係づけにくく,その興味も薄れてしまう。もとより海外の教科書には図のきれいなものがたくさんある...
    従来の神経解剖書では見たことがない,新しい視点から描かれた図
    書評者:上川 秀士(上川クリニック院長・脳神経外科学)

     解剖学の中でも神経解剖は難しく,わかりづらいと言われることが多い。その理由の一つに三次元的な脳神経系を二次元的な書物で説明していることが考えられる。また,解剖のみの記述であれば,臨床医にとっては日常診療と関係づけにくく,その興味も薄れてしまう。もとより海外の教科書には図のきれいなものがたくさんある。しかし,これまでのものは古くからの解剖学のものを踏襲するものが多く,新しさは感じられなかった。また,1つの図で多くのものを説明するため,結局焦点が定まらなくなり,理解しにくくなってしまうことがしばしば見受けられた。多くの解剖学の教科書を見れば見るほど,図の美しさ以外には大きな感動はなくなってしまっていたのである。本書はこれらの問題を見事に解決したといえるであろう。

     本書の特色は,図の美しさは当然のことながら,三次元的な理解の助けとなるわかりやすい図が,髄液や静脈系など従来あまり深く述べられていなかったところまで含めて,たくさん盛り込まれている点である。これらの多くは従来の神経解剖書では見たことがないもので,新しい視点から描かれている。そして,それらは解剖学を超え,生理学,組織学,発生学,病理学などにまで及んでいる。また,局所解剖や局所診断など臨床においても必要な事項を,多くのイラストや表を用いてわかりやすく解説しており,その内容は神経内科や脳神経外科の専門医をも満足させるほどのものである。

     さらに良いことには,理解を助けるために1つの図の中で多くの事項を説明することを避けている。必要なら同じ図を何度も使い,テーマごとに別々に説明していくなど,読みすすめていくうちに,あたかも大学での講義を聴いているような錯覚に陥る。しかも,それぞれの項目が見開きで整理され,非常に見やすい。これほど多くの図を取り入れながら,図ごとに簡潔かつ適切な説明文も添えられており,アトラスと教科書のいずれの役割をも十分に果たしている贅沢な書である。

     私はかつて本書の原書版に出会ったときに,たちまちその素晴らしさに魅了されてしまった。日本語版の出版を待ち望んでいたが,これほど早く実現するとは思わなかった。おそらく多くの人たちも同様の思いだったに違いないと思う。
  • 圧倒的にリアルで,写真より細密な図
    書評者:小林 靖(防衛医大教授・解剖学)

     『プロメテウス解剖学アトラス』第3巻の日本語版がついに刊行された。第1巻を初めて目にしたときの驚きが,第2巻,第3巻と手に取って開くたびに新たによみがえる思いがする。

     『プロメテウス解剖学アトラス』の極めて強い第一印象がその肉眼解剖の精細な図版によるものであることは,多くの評者の指摘してい...
    圧倒的にリアルで,写真より細密な図
    書評者:小林 靖(防衛医大教授・解剖学)

     『プロメテウス解剖学アトラス』第3巻の日本語版がついに刊行された。第1巻を初めて目にしたときの驚きが,第2巻,第3巻と手に取って開くたびに新たによみがえる思いがする。

     『プロメテウス解剖学アトラス』の極めて強い第一印象がその肉眼解剖の精細な図版によるものであることは,多くの評者の指摘しているところである。コンピュータを駆使して作成されたと聞くが,決してこれまでに多く見られたような,単純化された模式的なものではない。実物を詳しく観察した者誰もが納得する,緻密なテクスチャを再現した図は,従来の図譜になかったリアルさを感じさせる。リアルであるという点は写真のほうが有利だと思われがちであるが,焦点深度に限界のある写真と異なり,本書の図はすべてにピントが合っており,描かれている構造のすみずみまで行きわたった細密な描写に圧倒される。それにもかかわらず,正確な陰影の描き方によって,絵の図譜にありがちな平面的な表現とも無縁である。この奥行きの表現は,構造の立体的な理解を容易にする。これは解剖学のみならず臨床各科においても,実地に本書を利用する読者にとって大きな利点であろ。

     第3巻の頭部のセクションは,こうした『プロメテウス解剖学アトラス』の本領が遺憾なく発揮されており,複雑な三次元的配置をとる頭部の各構造を明快にとらえることができる。例えば側頭下窩における顎動脈・神経・筋の位置関係を示した図をご覧いただきたい。これらの図版の数々は,解剖実習室において剖出半ばで途方に暮れる学生にとって力強い援軍と言ってよい。

     本書の次に重要な特徴は,概念の理解を助ける的確な模式図である。これは神経系を扱う際にとりわけ有意義である。外観上似たり寄ったりの神経組織が,部位によってさまざまな異なる機能を担っていることは,適切な伝導路の概念図と解説がなければ初学者にとって極めて理解しづらい。本書はこの点で従来のアトラスとは大きく趣を異にしていて,神経系の機能を学ぶ際にも大いに役立つだろう。

     さらに挙げておきたいのは,末梢神経の記述の豊富さである。これまでの神経解剖学の教科書は,多くの場合中枢の記述に偏りすぎていて,中枢と末梢を通した伝導路の理解に適さないものも見受けられた。本書はアトラスと名乗ってはいるが,上記の伝導路の概念図や解説が末梢神経に関しても充実している。末梢器官の細密な表現と相まって,神経系が標的器官・末梢神経系・中枢神経系を通した伝導路からなるシステムであることを,おのずと理解することができるだろう。

     こうした優れた特徴を備えたアトラスが日本語で利用できることは,とりわけ初学者にとって大きな福音である。正確な翻訳を完成された訳者と監訳者の労に敬意を表したい。
  • 心理に影響する頭部/神経解剖
    書評者:濱口 豊太(埼玉県立大准教授・作業療法学)

     『プロメテウス解剖学アトラス 頭部/神経解剖』は視認性に優れた解剖図と洗練された説明文によって学習者の知的吸収を促進する肉眼解剖学教科書である。先に刊行された第1巻には,総論と運動器系,第2巻には頸部・胸部・腹部・骨盤部が収録され,第3巻の本書は,高次神経機能を支える脳と脊髄,神経機能としての知覚...
    心理に影響する頭部/神経解剖
    書評者:濱口 豊太(埼玉県立大准教授・作業療法学)

     『プロメテウス解剖学アトラス 頭部/神経解剖』は視認性に優れた解剖図と洗練された説明文によって学習者の知的吸収を促進する肉眼解剖学教科書である。先に刊行された第1巻には,総論と運動器系,第2巻には頸部・胸部・腹部・骨盤部が収録され,第3巻の本書は,高次神経機能を支える脳と脊髄,神経機能としての知覚系,運動系が展開されている。頭部に集中する視覚・前庭覚・聴覚・味覚・嗅覚などの知覚受容器と,消化器と呼吸器の入口である口腔,咽頭部の学習に適した書である。

    ◆機能的理解を促進する視覚手法

     「全体から局所へ」「単純から複雑へ」「一つの器官から臓器間の機能的関連へ」,本書のシリーズは一貫していくつかの段階に分けて解剖している。最初に頭蓋左側面を示し,左側面から見た骨の範囲や境界を識別して局所の構造理解へと誘う。全体から局所への流れだ。頭蓋骨構造の次は表情筋が概観され,そこに血管,神経,結合組織などの位置関係と機能が解説される。脳神経の序盤までの図は立体的かつ色で識別された肉眼解剖図であるが,それ以降,単純平面図と立体構成図とを使い分けている。これは単純から複雑な構造の理解を読者にもたらす手法であろう。脳幹の神経核や末梢神経節の局在と神経走行,あるいは,視覚・聴覚・前庭覚などの知覚器の構造と機能を読者に理解させるために,この手法は効果的だ。

     読者はこのような教育的配慮を受けながら,脳‐神経‐筋,脳‐知覚器,内臓諸臓器の接続によって臓器間の機能的関連までを理解できる。加えて,随所に解剖学的位置,触診部位,視診部位,病変したときの症状などが図解される。本書は人体構造とその機能のみならず,適宜に診断と治療への示唆までを具備している。

    ◆心理の解剖学

     表情筋の構造と機能には他者の心理に働きかける作用がある。心理情報授受の手段としてヒトの表情変化が系統的な解剖学書に解説されたのは本書が初めてではないだろうか。本書には「頭部の筋」の節に表情筋の作用として「口輪筋の収縮は決意を表す」「頬筋の収縮は満足を表す」など12種類の表情筋の心理作用が示されている。神経解剖の章,機能系では知覚系に並んで辺縁系がある。脳地図の上に帯状回と海馬と扁桃体がブロードマンの領域番号とともに描かれ,「辺縁系は衝動や情動行動に関与し,記憶,学習にも関わっている」と解説されている。同じく機能系「脳:臨床」には特定の脳領域の傷害に起因する行動変化が辺縁系の解剖図とともに示されている。脳と諸臓器の連絡が解剖学で明らかにされ,それらが心理・行動発現の基盤となる様が解剖学書に記されたことは,行動医学,心身医学を追究する者に勇気を与えることだろう。

     本書の図解は,解剖学ならびに脳科学の膨大な情報量とその複雑さや深さを読者に感じさせない。それほど本書は整えられている。医学のみならず,心理学や教育学にも本書を参考としてみる価値がある。
  • 解剖をしているような,講義を聞いているような感覚になる
    書評者:渡辺 雅彦(北大大学院教授・分子神経解剖学)

     『プロメテウス解剖学アトラス』の第3巻「頭部/神経解剖」は,「解剖学総論/運動器系」,「頸部/胸部/腹部・骨盤部」に続く最終巻である。本書を手に取ると,つい引き込まれてページをめくりながら読んでしまう。その理由を分析してみた。

     まず第一に,本書の図の一つ一つが実に美しいことである。これまで...
    解剖をしているような,講義を聞いているような感覚になる
    書評者:渡辺 雅彦(北大大学院教授・分子神経解剖学)

     『プロメテウス解剖学アトラス』の第3巻「頭部/神経解剖」は,「解剖学総論/運動器系」,「頸部/胸部/腹部・骨盤部」に続く最終巻である。本書を手に取ると,つい引き込まれてページをめくりながら読んでしまう。その理由を分析してみた。

     まず第一に,本書の図の一つ一つが実に美しいことである。これまでの解剖学図譜で行われてきたような,実物を精巧に再現する図や,できるだけ多くの構造体を網羅するカラフルな図や,理解を助けるために単純化した模式図とも異なり,プロメテウスならではのユニークな図が満載されている。例えば,最初の頭蓋の章では,約40頁に百数十点の頭蓋の全体や各部の図が登場する。そこには,まるで写真のような精巧さで頭蓋底や頭蓋の断面が描かれた図が登場する一方,その隣には各頭蓋骨をパステルカラーで色分けされた図も提示され,個々の頭蓋骨がどのように頭蓋を構成しているのかがよくわかる。頭部の断面解剖では,CTやMRI画像の理解を意図した図も豊富に提供されている。さらに,これらの図が,著者らの意思と目的を具現する手段として作成されている。例えば,脳神経や眼窩領域の部分では,理解させたい部分の表情筋や骨を順次切り取った図が提示され,脳神経や血管の走行経路と分布が理解できる。剖出を行いながらその先の構造体を明らかにしていく,ちょうど解剖学実習を行っているような感覚になる。

     第二は,その構造の特徴と働きを理解するための説明が,図の一つ一つに与えられていることである。しかも,従来の系統的な解剖学書とは異なり,本書の説明は与えられた図に関連した事項を中心に構成され,読み進めていると結果的に重要なポイントがすべて網羅されるようにできている。まさに,優れた解剖学の講義を聞いたような感覚になる。例えば,脳室系の章では,脳室系の全体像と隣接する重要な構造の説明から始まり,そのどこで脳脊髄液が作られ,循環し,吸収されるのかが,14点の図とその説明により展開していく。著者らは,本書の目標が「学生にとって優れた設計の学習環境を作り上げること」と「説明の少ないあるいは説明なしの図を提供することはしない」を,その序文に書いている。本書には,著者らの意気込みと意図が染み渡っている。

     第三に,本書は,解剖学を基盤としながらも医学全体を視野に入れた教科書である点である。脳の各部位の生理機能や機能障害,ウィリス動脈輪などの変異,外眼筋や神経伝導路などの機能解剖学,脳浮腫の際に起こる脳ヘルニア,診察や検査など臨床医学に関連した解剖学的事項など,人体の構造に関連した生理学的,病理学的,臨床的な側面まで包含している。

     したがって,本書を,解剖学の講義実習のテキストにとどまらず,他の基礎医学や臨床医学に進んでからさらに紐解く座右の医学書として推薦したい。
  • 人体探検の素晴らしい案内人
    書評者:仲嶋 一範(慶應義塾大教授・解剖学)

     書評を書くに当たり,まずは解剖学実習を終えたばかりの現役の医学生たち数名に率直な感想を聞いてみた。いずれもとても高い評価であり,「こういう本を読みながら実習を進めれば,自分の解剖学の勉強もより効率的で奥深いものになっていたに違いない」という感想であった。そろってそのような感想が出てくるに足るユニー...
    人体探検の素晴らしい案内人
    書評者:仲嶋 一範(慶應義塾大教授・解剖学)

     書評を書くに当たり,まずは解剖学実習を終えたばかりの現役の医学生たち数名に率直な感想を聞いてみた。いずれもとても高い評価であり,「こういう本を読みながら実習を進めれば,自分の解剖学の勉強もより効率的で奥深いものになっていたに違いない」という感想であった。そろってそのような感想が出てくるに足るユニークな特徴を,この本は有している。

     古典的で著名な複数のアトラスを含め,解剖学のアトラスは数多く出版されているが,本書は,単なる「地図帳」的なアトラスというよりは「図鑑」的であり,子どものころに夢中になって読んだ図鑑のように,いつの間にか引き込まれていろいろなページをめくり,熱中してしまうような面白さがある。医学生にとって必要かつ重要な情報が,コンピューターグラフィックスによる洗練されたわかりやすい画像情報に乗って快適に展開される。情報量は大量であるにもかかわらず,楽しみながら読み進めるうちに知らず知らずのうちにさまざまな知識が身についていくものと思う。

     本書が「図鑑」的である一つの理由は,それぞれの図がとてもわかりやすく,立体感をもって精細に描かれている上,見事な画像処理によって,時には表面から透かして奥の構造を表示したり,逆に表面の必要な情報のみを表示して奥の構造を透かしたりするなどの工夫をこらし,立体的な全体の位置関係を容易に理解できるように描かれていることにある。また,単に全体を見せるばかりでなく,それぞれの段階で必要な関連構造のみを提示する方法をとることによって,初学者がポイントをつかみやすくなっている。特に三次元的に複雑な内部構造を有する脳の構造を学ぶ上では極めて有効であろう。画家の優れた感性と高度な技術に感銘せざるを得ない。

     もう一つの理由は,単なる人体構造の解剖学的な記載にとどまらず,個々の構造に関連した生理学的な機能やほかの組織との関係,臨床的な事項に関する解説が充実していることである。特に神経解剖については,発生過程から紐解き,最終的な形態が完成するまでの道筋が随所に描かれているため理解しやすい。解説も,それだけが一人歩きすることはなく,あくまでも精緻で工夫された画像を中心に組み立てられているため,視覚的に頭に入ってくる。単なる「解剖学書」の域を超えて,全身を生きた一つの個体としてとらえ,その中における個々の構造の機能的位置づけが明確に解説されているため,特に医学部に進学したばかりの学生が解剖実習を行うに当たり,人体探検の素晴らしい案内人の役割を果たしてくれるものと思う。また,高学年や医師になって臨床医学を学んでから読み直しても,それぞれの病態や正常機能の構造的基盤を理解することができ,大変役に立つものと確信する。

     本書は,初学者から現役の医師を含む医療従事者,医学関連分野の教員に至る幅広い層に自信を持って推薦したい良書である。本書の日本語版の出版のために尽力された訳者の先生方および関係各位に感謝したい。
目 次
頭部
 1 頭蓋
 2 頭部の筋
 3 頭頸部の血管
 4 脳神経
 5 局所解剖
 6 口腔
 7 鼻
 8 眼と眼窩
 9 耳と平衡覚器
 10 断面解剖
神経解剖
 1 序論
 2 脳と脊髄の髄膜
 3 脳室系と脳脊髄液
 4 終脳
 5 間脳
 6 脳幹
 7 小脳
 8 脳の血管
 9 脊髄
 10 脳の断面解剖
 11 自律神経系
 12 機能系
付録
 文献
 索引