解説書,教科書的な要素が増え,臨床に直結する内容も豊富になったアトラス
書評者:小澤 一史(日医大大学院教授/生体制御形態科学)
『プロメテウス解剖学アトラス』の第1巻として「解剖学総論/運動器系」が刊行されて以来,それに続く「頸部/胸部/腹部・骨盤部」の出版を,まだかまだかと大変に待ち遠しかったのは私だけではないだろう。第1巻でその図の美しさ,精密さがすでに示されていたわけであるから,続編の質が極めて高いことは想像に難くな...
解説書,教科書的な要素が増え,臨床に直結する内容も豊富になったアトラス
書評者:小澤 一史(日医大大学院教授/生体制御形態科学)
『プロメテウス解剖学アトラス』の第1巻として「解剖学総論/運動器系」が刊行されて以来,それに続く「頸部/胸部/腹部・骨盤部」の出版を,まだかまだかと大変に待ち遠しかったのは私だけではないだろう。第1巻でその図の美しさ,精密さがすでに示されていたわけであるから,続編の質が極めて高いことは想像に難くなかった。実際に,本書を手にとり,そのページを開いて,思わず「にんまり」としないわけにはいかなかった。
「解剖学総論/運動器系」ではその名の通り,「アトラス」としての役割が高い本であると感じたが,今回の「頸部/胸部/腹部・骨盤部」ではアトラス的な要素はもちろんであるが,「解説書」「教科書」的な要素が多くなり,特に基礎科学として解剖学的な見地から内臓学を学ぶとともに,臨床医学に直結する内容が豊富に散らばっており,工夫がなされている様子がよく分かる。
例えば間接喉頭鏡の観察像,呼吸による肺容積の変化や力学的な影響,胃粘膜の内視鏡像,種々のX腺画像,臓器と神経支配の図などが「ここ!」というポイントに示され,学ぶ楽しみを引き出そうとする著者の思いがにじみ出ている。内臓系が中心ということもあり,発生学的な説明や生理学的な機能面での解説も多く見られ,充実した「アトラス」になっている。
最終章で扱っている「各器官に分布する神経・血管・リンパ管」では,非常に簡潔に単純化した内臓と神経,血管,リンパ管との関係が示されている。
この単純化された関係図を見ながら,詳しい教科書の記述を読めば,これらの仕組みを能率よく身につけることができる。まさに「自ら学ぶ」ための道標としても利用でき,解剖学における少人数のチュートリアル的学習などにも活用できると感じた。
さて,全体を見渡して感じたもう1つの点は,アトラスの図と解説が余裕をもって配置されており,適度な「空き」のスペースが設けられていることである。解剖学を学ぶ学生,医師,医療関係者,様々な学習者には,このスペースを大いに有効利用し,自分なりの学習情報を加えたりして,自分だけの,または自分流の『プロメテウス解剖学アトラス』を作成してもらいたいと思う。
私自身,すでにこのスペースを利用して,例えば組織学的なプラスアルファ,生理学的なプラスアルファ,分子生物学的なプラスアルファ,臨床的なプラスアルファを書き込み,オリジナルなプロメテウス作りにはまりつつある。次の「頭部/神経解剖」も本当に待ち遠しい。