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下部消化管内視鏡診断アトラス

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消化管領域の臨床研究や診療において、内視鏡は必須のモダリティとなりました。特に、内視鏡診断の領域では白色光による観察のみならず、色素内視鏡、デジタル色素内視鏡、拡大内視鏡、超拡大内視鏡などの画像強調内視鏡検査が日常臨床に広く取り入れられています。そのような状況において、本書は消化管内視鏡診断の醍醐味を若手の先生方に知っていただくことを目標に企画されました。上部編&下部編の2冊を刊行。
編集 松本 主之
発行 2020年10月判型:A5頁:256
ISBN 978-4-260-04156-0
定価 5,940円 (本体5,400円+税)

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 消化管領域の臨床研究や診療において,内視鏡は必須のモダリティーとなりました.特に,内視鏡診断の領域では白色光による観察のみならず,色素内視鏡,デジタル色素内視鏡,拡大内視鏡,超拡大内視鏡などの画像強調内視鏡検査が日常診療に広く取り入れられています.そのような状況において,『内視鏡診断アトラス』は消化管内視鏡診断の醍醐味を若い先生方に知っていただくことを目標として企画されました.そのうち,本書は下部消化管を取り扱ったものになります.
 下部消化管といっても,小腸と大腸では診断体系が大きく異なります.まず,疾患として小腸では悪性腫瘍が少なく,炎症性疾患に遭遇する機会が多くなります.これに対し,大腸疾患における内視鏡の主な役割は,大腸癌を含む腫瘍性疾患の診断と治療です.一方,内視鏡機器として,小腸ではカプセル内視鏡という“意図せずに撮影された画像”の分析が要求されるのに対し,大腸疾患では種々の画像強調内視鏡検査所見を詳細に解析することが重要です.このように,下部消化管疾患の多彩さも念頭に置いて,小腸・大腸疾患の内視鏡所見をわかりやすく解説していただくよう執筆者の先生方にお願いいたしました.
 本書では,小腸・大腸疾患における内視鏡静止画像とそれに対応する病理組織所見がコンパクトにまとめられています.したがって,内視鏡診療の現場ですぐに皆様のお役に立てるものと確信しています.特に研修医や専門医,専攻医の先生方にとっては,“たった今撮影した内視鏡画像”の病理学的な成り立ちを想起するために重要な情報を提供してくれるものです.ぜひ検査室で携帯し,日々の診療で本書を参考としながら「消化器内視鏡学」を身につけていただければと存じます.
 内視鏡医学の研究でも,近年AI 診断が盛んに議論されています.コンピュータによるdeep learningに基づいて内視鏡診断のアルゴリズムを構築し,感度・特異度の高い診断学を確立しようとするものであり,一部の技術はすでに消化管内視鏡の領域で応用されています.ただし,AIが広く普及すると,AI診断の正否を最終的に判断する高い診断能力が内視鏡医に要求されます.このような点からも本書は読者の皆様の力になれるものと考えています.
 最後に,美麗な画像を準備し執筆いただいた諸先生方,および本企画に最後までご協力いただいた医学書院の能藤久臣氏,片山智博氏に心より御礼申し上げます.

 2020年7月
 松本 主之

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小腸
 先天性異常,解剖学的異常
  小腸憩室
  Meckel憩室
  Meckel憩室内翻症,腸管重複症
 炎症(感染性)
  Whipple病
  糞線虫症,イソスポーラ症
  回虫症
  サイトメガロウイルス腸炎
  エルシニア腸炎
  腸チフス,パラチフス
 炎症(非感染性)
  セリアック病
  非特異性多発性小腸潰瘍症(CEAS)
  虚血性小腸炎
 脈管性病変
  血管拡張症(angioectasia)
  遺伝性出血性毛細血管拡張症(HHT)
  リンパ管拡張症
 全身性疾患に伴う小腸病変
  全身性強皮症
 その他の小腸病変
  異所性膵組織(小腸異所性膵)
 腫瘍・腫瘍様病変
  小腸腺腫
  小腸癌
  NET,NEC
  血管腫
  炎症性線維状ポリープ(IFP)
  Peutz-Jeghers症候群
  GIST
  悪性リンパ腫
  悪性黒色腫
  転移性小腸腫瘍
  von Recklinghausen病

大腸
 先天性異常,解剖学的異常
  腸管重複症
 炎症(感染性)
  感染性腸炎
  Clostridioides difficile感染症
  アメーバ赤痢
  サイトメガロウイルス腸炎
  放線菌症
  クラミジア直腸炎
  腸結核
 炎症(非感染性)
  薬剤起因性出血性大腸炎
  免疫チェックポイント阻害薬関連腸炎
  cap polyposis
  直腸粘膜脱症候群
  microscopic colitis
  腸間膜静脈硬化症
  腸間膜脂肪織炎
  虚血性大腸炎
  憩室炎,憩室出血
  Crohn病
  潰瘍性大腸炎
  放射線性腸炎
  lymph follicular proctitis
  急性出血性直腸潰瘍
  NSAIDs起因性腸病変
  好酸球性消化管障害
  Behçet病・単純性潰瘍
 脈管性病変
  大腸静脈瘤
  動静脈奇形
  直腸Dieurafoy潰瘍
  blue rubber bleb nevus syndrome
  IgA血管炎,EGPA
 全身性疾患に伴う大腸病変
  アミロイドーシス
  全身性エリテマトーデス(SLE)
  成人T細胞白血病/リンパ腫(ATL)
  HIV感染症/AIDS
  移植片対宿主病(GVHD)
 その他の大腸病変
  大腸マラコプラキア
  腸管子宮内膜症
  腸管嚢胞状気腫症
 腫瘍・腫瘍様病変
  過形成性ポリープ
  通常型大腸腺腫
  鋸歯状病変(TSA,SSA/P)
  側方発育型腫瘍(LST)
  若年性ポリープ
  Peutz-Jeghers型ポリープ
  colonic muco-submucosal elongated polyp(CMSEP)
  大腸癌① 0-I型Tis(M)癌
  大腸癌② 0-I型T1(SM)癌
  大腸癌③ 0-II型Tis(M)癌
  大腸癌④ 0-II型T1(SM)癌
  大腸癌⑤ 2型
  大腸癌⑥ 4型
  NET,NEC
  杯細胞カルチノイド
  血管腫
  脂肪腫
  炎症性線維状ポリープ(IFP)
  形質細胞腫
  GIST
  神経系腫瘍
  悪性リンパ腫
  虫垂粘液嚢腫
  家族性大腸腺腫症(FAP)
  Cowden病
  Cronkhite-Canada症候群
  若年性ポリポーシス
  serrated polyposis syndrome(SPS)
 肛門部病変
  肛門管尖圭コンジローマ
  肛門管癌

索引

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内視鏡検査の実力がアップすること間違いなし
書評者:芳野 純治(大名古屋ビルセントラルクリニック院長/藤田医大名誉教授)

 本書はどちらもA5判の大きさで,総ページ(索引を除く)は『上部消化管内視鏡診断アトラス』が247ページ,『下部消化管内視鏡診断アトラス』が237ページ,疾患数は前者が108疾患,後者が96疾患である。すなわち,1疾患がほぼ2ページにまとめられ,左ページは「疾患の概念・特徴」と「内視鏡所見と診断のコツ」,右ページは画像である。左右は見開きになっており,「内視鏡所見と診断のコツ」を読みながら,画像を確認することができる。画像は書名が「内視鏡診断アトラス」とあるように診断の鍵となる内視鏡画像であるとともに,内視鏡画像の成り立ちを説明する病理組織像,X線像などが添えられている。内視鏡画像には通常の内視鏡像の他に,必要に応じて拡大内視鏡像,NBI像,超音波内視鏡像なども加えられている。可能な限り簡潔になるように編集されているが,内視鏡所見が多彩な疾患では画像にページ数を多く割いている。

 これらの画像は美しく鮮明である。執筆者による選りすぐりの画像であり,編者が画像にいかにこだわっているのかがよくわかる。そういえば,下部消化管の編者の松本主之先生は,医学雑誌『胃と腸』の編集委員長であり,上部消化管の編者の長浜隆司先生,竹内学先生はいずれも『胃と腸』編集委員である。また,執筆者に『胃と腸』編集委員の多くが加わっている。『胃と腸』は画像診断を重視しており,画像から病態解明などが行われてきた。そのこだわりを本書の随所に窺い知ることができる。その他の執筆者も内視鏡診断の一流の方ばかりである。

 また,本文の「疾患の概念・特徴」と「内視鏡所見と診断のコツ」の説明は箇条書きで,疾患の概念・特徴,画像所見のうち何が重要であるのかが容易に理解できるようにしてある。本書をA5判の大きさにしたのは,持ち運びを容易にしていつでも開けることを可能にしたかったのか,内視鏡室の机の上に邪魔にならないように置けるようにしたのか。しかし,考えてみると,A5判とコンパクトにしたため,大切なことが簡潔に記載されている。そのため,日本消化器内視鏡学会専門医を受験する際に疾患の特徴・所見はここに書かれていることを覚えていればよいのではないかとも思われる。記載された疾患は同学会の専門医カリキュラムに沿って精選されているとのことであり,本書を読みながら,内視鏡検査を行えば実力がアップすることは間違いないであろう。本書は消化器内視鏡診断に特化して編集されており,診断を行う者にとって座右の書であると言える。


物語として読める辞書
書評者:市原 真(札幌厚生病院病理診断科主任部長)

 ある内視鏡医が著した教科書を読んだときのこと。ミニコラム内にこんなエピソードがあった。

 「ベテラン病理医の部屋を訪れたところ,私がドアを開けるなり,まだ何も言っていないのに,『本か?』と言い当てられた。図星であった」。

 私はここに,病理検査室の「あるべき姿」を見た。臨床医に頼られるような病理医をめざすのはもちろんだが,「臨床医に頼られるような書架」を整備したいという気持ちが高まったのである。

 もともと,わが病理検査室の本棚には,前任者たちが精魂込めて収集した教科書がひしめき合っていた。新旧の規約やガイドラインはもちろん,私が医師免許を取得する前から版を重ねているような名著もあった。私もそこに少しずつ本を買い足して,時折整理してはアヤシク笑みを浮かべている。時折臨床医が本を探しにやってくるのを見るのはうれしい。先人たちによる手入れのかいあってか,はたまた,勤め先の愛ある図書研究費のたまものか。

 そんな「病理図書利用者」たちが手に取った本を鳥瞰すると,臨床家たちが頼りたくなる書籍には二種類あるようだと気付く。一つを「網羅系」,もう一つを「物語系」と仮に名付ける。

 網羅系書籍とは,医学知識を区分けして提示することで,全てがそろった安心感と,辞書のように引ける利便性を提供する。一方で,物語系の書籍は,サイエンスに通底する論理構造を,語りかけるようにひもといてくれる。

 辞書を通読するよりも小説を読み通すほうが手軽だ。しかし,辞書的に使える本がないと現場では不便だし不安である。網羅系書籍は総じて高額なので,公共の書架には網羅系のアトラスをやや多めに並べておけば,みんなの役に立つだろう。

 さて,この度発刊となった『下部消化管内視鏡診断アトラス』は,雑誌『胃と腸』の精神が凝縮された,「網羅系」書籍の最新版である。意図と理念の解像度が高い美麗な写真! 書架に一冊あるとほっとする。馬手に内視鏡,弓手にアトラス――。

 と,まあ,良いアトラスを褒めるときの決まり文句である「美麗な写真」で本書を語ることは容易だ。実際,「写真がきれい」という価値の一点突破でベストセラーになるクオリティはある。ただ,それだけの本だろうか? 本書の魅力は他にもある。

 実はこの本,説明文が「敬語」なのである。編集の小技にびっくりしたが,それがもたらす効果にさらに驚く。解説者たちの声が,読書中に脳内に響いてくるのだ。鶴田修先生とか清水誠治先生とか小澤俊文先生とか佐野村誠先生とか田中信治先生とか,ああ書き切れない,「早期胃癌研究会の最前列で読影をされている先生方」が説明する横で画像を見ているような気分になる。そのおかげで,「網羅系アトラスなのに,通読できてしまう」のだ。なんと言ってもこれがすごい。あと,値段が安い。印税でランチすら食えないレベル。このアトラスなら個人で買える。あ,そうそう,最後に一つ。バーチャルスライドベースのルーペ写真ってやっぱりきれいですねー!

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本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。

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