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救急整形外傷レジデントマニュアル 第2版

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整形外科医「以外」のための整形外科当直マニュアル。この本さえあれば、当直中の整形外科疾患の対応には困らない。どの時点で専門医にコンサルトすればよいかも判断できる。診療中に常備しておきたい整形外傷本の決定版! 第2版では、6章「骨折」のX線写真をより典型的なものに更新し、7章「重症軟部組織感染症」を充実。9章「高齢者関連」を新設し、「骨脆弱性骨折」「非定型大腿骨骨折」などに関して追記。
*「レジデントマニュアル」は株式会社医学書院の登録商標です。
シリーズ レジデントマニュアル
田島 康介
発行 2018年11月判型:B6変頁:194
ISBN 978-4-260-03688-7
定価 3,850円 (本体3,500円+税)

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第2版の序:読者へのメッセージ

 救急医療における標準的なマニュアルである『救急レジデントマニュアル』(以下,親本)も本年,第6版が刊行された.本書は,親本第4版の改訂作業中に筆者が「四肢骨盤外傷」の項の担当執筆者となったことをきっかけとする.しかし,与えられた20ページ分の文字数では運動器外傷のエッセンスを到底網羅できないことが悩みであった.そこで,当時筆者が出向していた慶應義塾大学救急医学教室教授(当時)で,親本の編集責任者でもあった堀進悟先生に相談を申し上げたところ,「救急整形外傷というテーマで親本の姉妹書を書いてみてはどうか」と背中を押していただき,2013年に親本第5版の刊行と同時に本書の初版を刊行した.
 筆者は2001年から整形外科医としてのキャリアを,2011年からは救急医としてのキャリアもスタートさせた,整形外科専門医ならびに救急科専門医である.例えば交通事故により搬送された下腿の開放骨折をみたら,整形外科医はまず洗浄・抗菌薬投与・創外固定や鋼線牽引を始めようとする.救急医は患者の気道確保(Airway)から呼吸(Breathing),循環動態の確認(Circulation)の順で患者を全身から診察していく.ひとつの科の常識は,他科では非常識であることはよくあることで,また施設間でも診療の作法が異なることも多々ある.
 整形外科医と救急医の双方の立場で日々診療にあたっている筆者の目から,「整形外科医は救急医(初療医や当直医)に何を期待しているのか」「救急医は整形外科のどういったことがわからないのか」に焦点を当てて本書を執筆した.つまり本書は,救急外来や当直で使用することを目的として執筆された「整形外科医以外のための整形外科の本」であり,一般的な整形外科の各種マニュアルとは異なった性格である.
 本書では整形外科の慢性疾患についてはほとんど記載がない.また,整形外科医が行う専門処置についても,初歩的でかつ必要最低限のものしか記載していない.このような,整形外科医以外の立場から執筆した整形外科診療のマニュアルは,おかげさまで親本と同等に読者の支持をいただけたため,このたび第2版をお届けすることができた.本改訂では,近年社会問題となっている高齢者の脆弱性骨折や,緊急性の高い壊死性筋膜炎の診断・治療などについても加筆している.
 時間外診療における外科系診療の多くは整形外科関係であり,専門医でない場合は常に不安を抱えながらの診療となる.どこまでは自分で治療して,どこからは専門医を呼んだほうがよいのかといった救急外来での不安・疑問の解消に本書が役に立つことを切に願っている.

 2018年10月
 藤田医科大学病院教授・救急科
 田島 康介

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第1章 創傷処置
 用語の定義
 創傷処置の前に
  1 受傷機転の確認
  2 画像検査
  3 洗浄,デブリードマン
  4 縫合するか否か
 縫合
  1 縫合糸の選択
  2 麻酔方法
  3 縫合方法
  4 出血に対する処置
  5 ドレーン挿入
  6 縫合後のドレッシング
 創傷処置後のケア
  1 抗菌薬の処方
  2 破傷風トキソイド
  3 創傷処置後の予定

第2章 外固定の仕方(シーネの当て方)
 総論
 用語の定義
 外固定の原則
 良肢位
 ソフトシーネ
 アルフェンスシーネ
 シーネの巻き方
  1 シーネ幅の選択の目安
  2 用意するもの
  3 包帯の巻き方
  4 シーネの実際
 特殊な固定
  1 鎖骨骨折
  2 上腕骨近位部骨折(上腕骨頚部骨折・上腕骨外科頚骨折)
  3 大腿骨近位部骨折(大腿骨頚部骨折・大腿骨転子部骨折),大腿骨骨幹部骨折
 小児の骨折
 外固定の合併症
  1 皮膚潰瘍
  2 神経麻痺
  3 コンパートメント症候群

第3章 そのほかの基本手技
 関節穿刺
  1 膝関節穿刺・外側法
  2 膝関節穿刺・前方法
 爪下血腫の除去
 トリガーポイント注射

第4章 軟部組織損傷
 打撲
  1 診断と治療
  2 コンパートメント症候群(筋区画症候群)
 靱帯損傷,捻挫
  1 診断と初期治療
 筋・腱損傷
  1 開放性損傷
  2 閉鎖性損傷
 神経損傷
  1 指尖部の感覚障害
 血管損傷
  1 止血の基本
  2 止血法
  3 動脈損傷部位における末梢壊死
 そのほかの特殊な損傷
  1 四肢や指の切断
  2 デグロービング損傷

第5章 脱臼
 脱臼の診断
 脱臼整復時の麻酔
 整復法
  1 肩関節脱臼
  2 手指の脱臼
  3 肘関節脱臼
  4 股関節脱臼
  5 膝蓋骨脱臼
  6 膝関節脱臼
  7 足関節脱臼
  8 顎関節脱臼
  9 そのほかの脱臼

第6章 骨折
 上肢編
  1 手指周囲の骨折
  2 手の骨折
  3 手関節周囲の骨折
  4 前腕部の骨折
  5 肘関節周囲の骨折
  6 上腕部の骨折
  7 肩関節周囲の骨折
 下肢編
  1 足趾周囲の骨折
  2 足部の骨折
  3 足関節周囲の骨折
  4 下腿部の骨折
  5 膝関節周囲の骨折
  6 大腿部の骨折
  7 股関節周囲の骨折
 骨盤編
  1 まず患者受け入れが可能か判断する
  2 患者が搬入されたらまず行うべきこと
  3 骨盤の解剖
  4 骨盤単純X線における骨折の評価と分類
  5 CTの撮影
  6 初期治療
  7 根治手術
 脊椎編
  1 高エネルギーでない外傷
  2 高エネルギー外傷

第7章 非外傷性疾患
 一般医が知っておくべき非外傷性整形外科疾患
  1 神経障害
  2 関節痛(結晶誘発性関節炎)
  3 関節の感染症
  4 軟部組織感染症
 整形外科的愁訴の他科疾患
  1 肩甲背部痛(胸背部痛)
  2 腰痛

第8章 小児関連
 総論
  1 小児骨折の特徴
  2 診断
  3 患児の帰宅に際して
 各論
  1 肘内障
  2 上腕骨顆上骨折
  3 単純性股関節炎
  4 大腿骨頭すべり症,上前腸骨棘剥離骨折

第9章 高齢者関連
 総論
  1 脆弱性骨折とは
  2 診断
  3 治療戦略
 各論
  1 非定型大腿骨骨折
  2 脆弱性骨盤骨折

第10章 診断書の書き方
 病院書式診断書の書き方
 保険会社の診断書(通院証明)の書き方
 労災関連書類の書き方

索引

MEMO
指尖部損傷におけるwet dressing
縫合後の被覆
救急外来でできる駆血法
damage control orthopaedics
見逃しやすい「骨折に合併する骨折」
Barsony(バルソニー)

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救急医のみならず,一人当直をする整形外科レジデントにもぜひ
書評者: 峰原 宏昌 (北里大病院講師・救命救急・災害医療センター)
 田島康介先生に初めてお会いしてから約7年が過ぎました。その当時,田島先生はちょうど,大学で整形外科から救急科に出向されており,ひたむきに整形外傷に取り組んでおられました。その様子を知っている者からすると,今回出版された『救急整形外傷レジデントマニュアル 第2版』は,ほとんどの内容が,先生御自身が日々の診療の中で経験されたことを中心に書かれたものであると推察できます。

 理路整然とした研究発表をされておられた田島先生のことを思い,期待をしつつページをめくると,創傷処置に始まり,シーネの当て方,関節穿刺,爪下血腫の除去の仕方まで,さらには軟部組織損傷,脱臼,骨折,非外傷性疾患,小児関連,高齢者関連へと続いています。時折,筆者の推奨する方法などを詳しく説明しながら,POINT,MEMOなどのわかりやすい解説もあり,心を惹きつけられました。読み終えた後で,「整形外科を専門としない救急医でも読みやすい内容となっている。いや,これは一人当直をする整形外科レジデントにもぜひ読んでもらいたいマニュアルだ」と直感しました。

 「第2版の序」の田島先生のメッセージにもあるように,救急医と整形外科医はお互いの治療の常識が若干異なる部分があるようです。救急整形外傷患者の初療にかかわる医師やその状況(勤務体制・人数)は,施設によって異なっています。整形外科医が初療に参加できない状況や施設もあるでしょうし,整形外科医でさえ見落としてしまう外傷もあるかも知れません。しかし,どのような状況下でも外傷患者を治療するチームとしてぜひとも他科の考えを理解して横断的な知識を身につけていただきたいと思います。言うまでもなく,整形外傷における初療は非常に重要であり,重度外傷に限らず,2次救急レベルの外傷でさえ,時に初療の選択がその患者の人生を決定づけてしまうことがあるからです。その初療の選択の際に,このマニュアルが非常に力を発揮するのではないでしょうか。
救急医が整形外科外傷の初期治療レベルを引き上げるのに最適な手引書
書評者: 土田 芳彦 (湘南厚木病院副院長・外傷センター長)
 田島康介先生著『救急整形外傷レジデントマニュアル』の第2版が出版されました。この著書は救急医療に携わる「整形外科以外の医師」を対象として作られました。すなわち,「急性期の対応にのみ集中して書かれ,再建治療などには言及されていない」ということですが,なかなかどうして,「整形外科のレジデント」にも携帯し使用してほしい内容となっています。

 私は長年,整形外科外傷治療に関わってきましたが,常々,救急担当医による整形外科外傷の初期治療は不十分だと感じていました。救急の現場においては,まずは救命が第一であり,機能再建は二の次ということがエクスキューズになっているのでしょうか? 救命医療そのもののレベルに比較して,整形外科外傷の初期治療レベルはかなり低いのが現状です。

 整形外科外傷の多くは,適切な初期治療が行われれば運命が変わります。診断の誤りや見逃しによる不可逆的転帰や,初期治療の誤りによる不可逆的転帰は避けたいものです。

 しかし,整形外科外傷は種類が多く,しかも複雑で,そのため理解し難く学ぶために時間がかかってしまいます。すなわちとっつきづらいということが不十分な初期治療の一要因にもなっています。整形外科外傷の本当の初期治療は,その次に行われる再建治療を理解することが必要ですから,その習得には本来は半年から一年の教育が必要,いや,一年でも足りないかもしれません。

 それならば,いっそ初期だけに集中して学ぶという無謀な対策もありかとも思います。そのためには必然的に良い手引書が必要であり,本書の登場というわけです。

 本書は実は,通読での使用には向きませんし,それは望むところではないでしょう。実際の症例に応じて,その都度,辞書のように使用してほしいと思います。

 一つ注意点があります。本に書いてある文字情報を理解し,それを実践につなげるには,相当の能力が必要なものです。ですから,本書を読んで初期治療の方法を選択したとしても,願わくば常に専門家のフィードバックを受けてほしいと思います。そうすることで,より適切な理解につながることでしょう。
多くの症例経験を積んできた著者ならではの非常に論理的なマニュアル
書評者: 千葉 純司 (東女医大東医療センター教授・整形外科学)
 藤田医大病院は,毎年日本で最も多くの救急搬送患者を受け入れており,その中で,中心的役割を果たしているのが,田島康介教授である。田島教授のより早く,より正確な診察,診療には,われわれ整形外科医も,畏敬の念を抱いている。欧米では「外傷学」,「外傷整形外科学」が確立されているが,この分野においてわが国は,医療後進国と言わざるを得ない。その中で,田島教授は優れた指導者として,常に後輩医師達の指導に当たっており,本書は多くの症例経験を積んできた田島教授ならではの非常に論理的な内容の解説書となっている。

 医療の対象は当然ヒトではなく人であり人間である。患者さんの人権尊重を医療行為の基本とすべきは言うまでもない。この姿勢から患者さんの信頼を得るあらゆる具体的行動が生まれる。診療技術の優劣が患者さんの治療成績や信頼関係に重要であり,高度な医療技術を維持する必然性もここから派生する。

 医師の世界,特に大学は,何か硬直したピラミッド型の閉鎖空間のように世間ではイメージされているが,本当は言うまでもなくダイナミックで激烈な競争社会である。医師であれば誰でも自分のレジデント時代には,良い意味でも悪い意味でもライバル意識をむき出しで切磋琢磨したことを思い出すであろう。レジデントに限らず医療界全体が他に遅れまいと必死になっている。これが国内だけならまだしも,今は世界と競争しなければならないので,油断しているとたちまち医療後進国になってしまう現実がある。もちろんこの競争が,医学を飛躍させ日本の高度な医療水準を維持している原動力なのであるが,その反面,過労死や倫理を逸脱した行為を多発させてしまっているのも事実である。これに加え整形外科などの外科系のレジデントには特殊な事情がある。ギブスの巻き方,メスの使い方,はさみの持ち方,糸結びの仕方などなどの職人的技術は,マンツーマンで教えなければ後世に伝わらない。土をこねて壺を形成し釜で焼いて不出来なら叩き割るというのとはわけが違う。失敗は許されないからどうしても体に覚えさせる厳しい指導になる。医療という荒海でレジデント達が遭難しないためには,医師としての確固とした知識,技術,そして倫理,哲学の一日も早い習得が不可欠であり,それが患者さんのためであり,ひいては自分のためでもある。「整形外科外傷治療」は片手間でできるほどやさしくはなく,厳然たる整形外科の専門分野であることに間違いないが,この本がレジデント達にとって,整形外傷学のバイブルになるものと確信している。

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