認知症イメージングテキスト
画像と病理から見た疾患のメカニズム
画像と病理から認知症の病態に迫る!
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アルツハイマー型認知症や血管性認知症、レビー小体型認知症など、認知症をきたす疾患の責任病変や症状の発症メカニズムなどをビジュアルに解説した1冊。MRIやCT、SPECTなどの画像所見、ミクロ・マクロの病理所見を豊富に用い、いまだ謎の多い認知症疾患の病態に迫る。細胞構築や機能に基づいて脳を定型的に区域分けする「パーセレーション」など、最新のトピックも収載。
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- 序文
- 目次
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序文
開く
序
MRI撮像技術の発展が目覚ましい.近年,高磁場MRI装置の普及が進んでいるが,研究用の7 Tesla MRIでは通常の撮影法でも1mm程度の微小脳内病変や脳小血管を検出することが可能となった.また,臨床機としての高磁場装置である3 Tesla MRIであっても,撮像法の工夫によっては同サイズの病変を検出できる時代になった.これらMRI技術の長足の進歩は,近未来のMR microscopyの可能性を予見させる.実地臨床においては,画像と病理の関連に精通することが精度の高い読影や診断技術の礎になる.以上の点は通常の1.5 Tesla以下の磁場装置やCTであっても基本理念としては共通であり,高い精度の読影水準を経験することで,画像で見えている所見の背景に存在する病理変化や分子機構をより深く理解することが可能となる.
編者は長年,認知症,脳卒中の分野で神経画像と神経病理を専門としてきた.技術の進展とともに,近年とみに両者の距離が近くなったことを痛感している.画像を見ると病理像が理解され,病理所見から神経画像所見が予測されることをしばしば経験する.神経画像は神経病理や病態を映す鏡であり,高磁場MRIはそこに生じている遺伝子やタンパク発現の変化を推測する手段となりつつある.このような時代にあって,画像と病理の関連に重点をおき,両者の関連を視覚的に理解できるイメージングテキストを上梓できたことは幸いである.
本書の出版にあたっては,認知症の画像と病理に精通する東京医科大学の羽生春夫先生,神経画像と神経病理でそれぞれの分野を代表する国立精神・神経医療研究センターの松田博史先生,愛知医科大学の吉田眞理先生に編者として大変なご尽力を頂戴した.本書が超高齢社会の喫緊の課題となっている認知症の専門的診断の一助となり,認知症診療のなお一層の発展に資することを願ってやまない.
2018年4月
編者を代表して 冨本秀和
MRI撮像技術の発展が目覚ましい.近年,高磁場MRI装置の普及が進んでいるが,研究用の7 Tesla MRIでは通常の撮影法でも1mm程度の微小脳内病変や脳小血管を検出することが可能となった.また,臨床機としての高磁場装置である3 Tesla MRIであっても,撮像法の工夫によっては同サイズの病変を検出できる時代になった.これらMRI技術の長足の進歩は,近未来のMR microscopyの可能性を予見させる.実地臨床においては,画像と病理の関連に精通することが精度の高い読影や診断技術の礎になる.以上の点は通常の1.5 Tesla以下の磁場装置やCTであっても基本理念としては共通であり,高い精度の読影水準を経験することで,画像で見えている所見の背景に存在する病理変化や分子機構をより深く理解することが可能となる.
編者は長年,認知症,脳卒中の分野で神経画像と神経病理を専門としてきた.技術の進展とともに,近年とみに両者の距離が近くなったことを痛感している.画像を見ると病理像が理解され,病理所見から神経画像所見が予測されることをしばしば経験する.神経画像は神経病理や病態を映す鏡であり,高磁場MRIはそこに生じている遺伝子やタンパク発現の変化を推測する手段となりつつある.このような時代にあって,画像と病理の関連に重点をおき,両者の関連を視覚的に理解できるイメージングテキストを上梓できたことは幸いである.
本書の出版にあたっては,認知症の画像と病理に精通する東京医科大学の羽生春夫先生,神経画像と神経病理でそれぞれの分野を代表する国立精神・神経医療研究センターの松田博史先生,愛知医科大学の吉田眞理先生に編者として大変なご尽力を頂戴した.本書が超高齢社会の喫緊の課題となっている認知症の専門的診断の一助となり,認知症診療のなお一層の発展に資することを願ってやまない.
2018年4月
編者を代表して 冨本秀和
目次
開く
序論 画像から見た脳の解剖
辺縁系 海馬
辺縁系 前脳基底部
辺縁系 Papez回路
大脳皮質 アルツハイマー病に強く関連する大脳皮質領域
大脳基底核 認知機能に関連する大脳基底核
第1章 認知症総論
[1] 診断の流れ
1 認知症の定義
2 認知症と区別すべき病態
3 認知症診療の手順
4 認知機能障害の評価法
5 認知症の原因疾患
6 認知症の診断基準
7 軽度認知障害(MCI)
[2]認知症の主要症候─中核症状
1 記憶障害
2 見当識障害
3 遂行機能障害
4 大脳高次機能障害(失語・失行・失認など)
[3]認知症の主要症候─認知症の行動・心理症状
[4]治療総論─薬物療法
1 認知症薬物療法の目的
2 AD治療薬
3 幻覚,興奮,妄想,徘徊などのBPSDに対する薬物療法
[5]治療総論─非薬物療法・リハビリテーション
1 認知症の非薬物療法の定義と種類
2 非薬物療法の長所と短所
3 非薬物療法の効果
4 医療経済的側面
5 認知症短期集中リハビリテーション
6 パーソンセンタードケア,ユマニチュード,バリデーション療法
7 非薬物療法が生み出すもの
8 非薬物療法の導入順序
[6]治療総論─予防
1 栄養
2 運動
3 学習
4 生活習慣病
5 絵画療法
6 音楽療法
7 通所サービス(リハビリテーション)
第2章 診断に有用な画像検査
[1]脳のパーセレーション
1 概要
2 ブロードマン分類によるパーセレーション
3 Automated Anatomical Labeling(AAL)によるパーセレーション
4 FreeSurferによるパーセレーション
[2]CT・MRI
1 頭部CT画像を用いた認知症の診断
2 頭部MRI画像を用いた認知症の診断
[3] SPECT
1 SPECT検査とは
2 脳血流SPECT検査
3 ベンゾジアゼピン受容体密度SPECT検査
[4]PET
1 PET検査とは
2 18F-FDG-PET検査
3 アミロイドPET検査
4 タウPET検査
[5]MIBG心臓交感神経シンチグラフィ
1 MIBGとは
2 MIBG心臓交感神経シンチグラフィ検査
3 MIBG低下の要因
[6]ドパミントランスポーターSPECT
1 イオフルパンSPECT
2 鑑別疾患
3 診断法
第3章 知っておきたい認知症の病理
[1]アミロイドβ(Aβ)
1 Aβ
2 Aβの産生
3 アルツハイマー病とAβ
4 老人斑
5 脳アミロイド血管症
6 Aβ関連血管炎
7 アミロイド仮説
[2]タウ
1 タウ
2 孤発性タウオパチー
3 FTDP-17
4 加齢とタウ
[3]TDP-43,FUS
1 ピック病の疾患概念の変遷と前頭側頭葉変性症
2 TDP-43プロテイノパチー
3 FTLD-TDPと遺伝子変異
4 FTLD-TDPと運動ニューロン障害
5 FUS
6 他の神経変性疾患とTDP-43病理
[4]αシヌクレイン
1 αシヌクレインとシヌクレイノパチー
2 レビー小体病の病理
3 多系統萎縮症(MSA)の病理
第4章 主要疾患の病態
[1]アルツハイマー病
1 序論
2 病態
3 分類,遺伝
4 診断基準
5 症状
6 鑑別診断
7 画像検査
8 髄液バイオマーカー
9 症例提示
10 薬物治療
11 予防
12 最後に
[2]血管性認知症
1 分類
2 臨床的特徴
3 症状と発生のメカニズム
4 画像と病理
5 主な血管性認知症
6 診療
7 非典型例
[3]レビー小体型認知症
1 定義と分類
2 疫学と診断基準
3 画像と生理学的検査
4 病理,生化学的特徴
5 臨床症状と治療方針
[4]前頭側頭葉変性症
1 前頭側頭葉変性症の命名と定義の変遷
2 タウ蛋白に関連した前頭側頭葉変性症(FTLD-tau)
3 TDP-43に関連した前頭側頭葉変性症(FTLD-TDP)
4 FUS蛋白に関連した前頭側頭葉変性症(FTLD-FUS)
5 行動障害を伴った前頭側頭型認知症,進行性非流暢性失語,意味性認知症
[5]進行性核上性麻痺
1 定義
2 PSPの臨床病型と症候発生のメカニズム
3 病理と画像
[6]大脳皮質基底核変性症
1 定義
2 CBDの臨床病型と症候出現のメカニズム
3 病理と画像
4 臨床(CBS)からみた背景病理
[7]ハンチントン病
1 概念
2 分子遺伝学
3 臨床的特徴
4 若年型HD
5 経過
6 画像と病理
7 診断
8 鑑別診断
9 治療および包括的なケア
[8]嗜銀顆粒性認知症
1 嗜銀顆粒性認知症について
2 臨床症候および診断
3 病理と病態
4 病変のステージ分類と認知症との関連
5 治療および今後の展望
[9]神経原線維変化型老年期認知症
1 はじめに
2 疫学
3 臨床症候
4 神経病理所見
5 病態
6 鑑別診断
7 primary age-related tauopathyとの関連
8 治療および今後の展望
[10]石灰沈着を伴うびまん性神経原線維変化病
1 はじめに
2 臨床症状と画像所見,検査所見
3 神経病理学的所見
4 治療と予後
[11]クロイツフェルト・ヤコブ病
1 はじめに
2 症状と診断
3 病理所見
4 治療と予後
[12]正常圧水頭症
1 正常圧水頭症とは
2 症状と診断
3 病理所見
4 病態
5 治療と予後
[13]内科疾患による認知症
1 主な原因と分類
2 ビタミンB1欠乏症
3 神経梅毒
4 薬剤性認知障害
[14]脳外科疾患による認知症
1 Gliomatosis cerebri
2 Lymphomatosis cerebri
3 慢性硬膜下血腫
4 硬膜動静脈瘻
5 慢性外傷性脳症
[15]悪性リンパ腫
1 中枢神経系原発悪性リンパ腫
2 全身性悪性リンパ腫の中枢神経系への浸潤
3 血管内リンパ腫症
[16]human immunodeficiency virus(HIV)
1 感染による認知症
2 HIV関連神経認知障害
3 進行性多巣性白質脳症(PML)
[17]海馬硬化症
1 病理と分類
2 臨床症状
3 画像所見
[18]Huntington’s disease-like syndrome(HDLS)
1 HDL1
2 HDL2
3 HDL3
4 SCA17(HDL4)
[19]神経核内封入体病/エオジン好性核内封入体病
付録1 改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)
付録2 日本語版MoCA(MoCA-J)
索引
コラム1 ビンスワンガー病
コラム2 血管性認知障害(VCI)
コラム3 CADASILとCARASIL
コラム4 有棘赤血球を伴う舞踏病
コラム5 ファール病
辺縁系 海馬
辺縁系 前脳基底部
辺縁系 Papez回路
大脳皮質 アルツハイマー病に強く関連する大脳皮質領域
大脳基底核 認知機能に関連する大脳基底核
第1章 認知症総論
[1] 診断の流れ
1 認知症の定義
2 認知症と区別すべき病態
3 認知症診療の手順
4 認知機能障害の評価法
5 認知症の原因疾患
6 認知症の診断基準
7 軽度認知障害(MCI)
[2]認知症の主要症候─中核症状
1 記憶障害
2 見当識障害
3 遂行機能障害
4 大脳高次機能障害(失語・失行・失認など)
[3]認知症の主要症候─認知症の行動・心理症状
[4]治療総論─薬物療法
1 認知症薬物療法の目的
2 AD治療薬
3 幻覚,興奮,妄想,徘徊などのBPSDに対する薬物療法
[5]治療総論─非薬物療法・リハビリテーション
1 認知症の非薬物療法の定義と種類
2 非薬物療法の長所と短所
3 非薬物療法の効果
4 医療経済的側面
5 認知症短期集中リハビリテーション
6 パーソンセンタードケア,ユマニチュード,バリデーション療法
7 非薬物療法が生み出すもの
8 非薬物療法の導入順序
[6]治療総論─予防
1 栄養
2 運動
3 学習
4 生活習慣病
5 絵画療法
6 音楽療法
7 通所サービス(リハビリテーション)
第2章 診断に有用な画像検査
[1]脳のパーセレーション
1 概要
2 ブロードマン分類によるパーセレーション
3 Automated Anatomical Labeling(AAL)によるパーセレーション
4 FreeSurferによるパーセレーション
[2]CT・MRI
1 頭部CT画像を用いた認知症の診断
2 頭部MRI画像を用いた認知症の診断
[3] SPECT
1 SPECT検査とは
2 脳血流SPECT検査
3 ベンゾジアゼピン受容体密度SPECT検査
[4]PET
1 PET検査とは
2 18F-FDG-PET検査
3 アミロイドPET検査
4 タウPET検査
[5]MIBG心臓交感神経シンチグラフィ
1 MIBGとは
2 MIBG心臓交感神経シンチグラフィ検査
3 MIBG低下の要因
[6]ドパミントランスポーターSPECT
1 イオフルパンSPECT
2 鑑別疾患
3 診断法
第3章 知っておきたい認知症の病理
[1]アミロイドβ(Aβ)
1 Aβ
2 Aβの産生
3 アルツハイマー病とAβ
4 老人斑
5 脳アミロイド血管症
6 Aβ関連血管炎
7 アミロイド仮説
[2]タウ
1 タウ
2 孤発性タウオパチー
3 FTDP-17
4 加齢とタウ
[3]TDP-43,FUS
1 ピック病の疾患概念の変遷と前頭側頭葉変性症
2 TDP-43プロテイノパチー
3 FTLD-TDPと遺伝子変異
4 FTLD-TDPと運動ニューロン障害
5 FUS
6 他の神経変性疾患とTDP-43病理
[4]αシヌクレイン
1 αシヌクレインとシヌクレイノパチー
2 レビー小体病の病理
3 多系統萎縮症(MSA)の病理
第4章 主要疾患の病態
[1]アルツハイマー病
1 序論
2 病態
3 分類,遺伝
4 診断基準
5 症状
6 鑑別診断
7 画像検査
8 髄液バイオマーカー
9 症例提示
10 薬物治療
11 予防
12 最後に
[2]血管性認知症
1 分類
2 臨床的特徴
3 症状と発生のメカニズム
4 画像と病理
5 主な血管性認知症
6 診療
7 非典型例
[3]レビー小体型認知症
1 定義と分類
2 疫学と診断基準
3 画像と生理学的検査
4 病理,生化学的特徴
5 臨床症状と治療方針
[4]前頭側頭葉変性症
1 前頭側頭葉変性症の命名と定義の変遷
2 タウ蛋白に関連した前頭側頭葉変性症(FTLD-tau)
3 TDP-43に関連した前頭側頭葉変性症(FTLD-TDP)
4 FUS蛋白に関連した前頭側頭葉変性症(FTLD-FUS)
5 行動障害を伴った前頭側頭型認知症,進行性非流暢性失語,意味性認知症
[5]進行性核上性麻痺
1 定義
2 PSPの臨床病型と症候発生のメカニズム
3 病理と画像
[6]大脳皮質基底核変性症
1 定義
2 CBDの臨床病型と症候出現のメカニズム
3 病理と画像
4 臨床(CBS)からみた背景病理
[7]ハンチントン病
1 概念
2 分子遺伝学
3 臨床的特徴
4 若年型HD
5 経過
6 画像と病理
7 診断
8 鑑別診断
9 治療および包括的なケア
[8]嗜銀顆粒性認知症
1 嗜銀顆粒性認知症について
2 臨床症候および診断
3 病理と病態
4 病変のステージ分類と認知症との関連
5 治療および今後の展望
[9]神経原線維変化型老年期認知症
1 はじめに
2 疫学
3 臨床症候
4 神経病理所見
5 病態
6 鑑別診断
7 primary age-related tauopathyとの関連
8 治療および今後の展望
[10]石灰沈着を伴うびまん性神経原線維変化病
1 はじめに
2 臨床症状と画像所見,検査所見
3 神経病理学的所見
4 治療と予後
[11]クロイツフェルト・ヤコブ病
1 はじめに
2 症状と診断
3 病理所見
4 治療と予後
[12]正常圧水頭症
1 正常圧水頭症とは
2 症状と診断
3 病理所見
4 病態
5 治療と予後
[13]内科疾患による認知症
1 主な原因と分類
2 ビタミンB1欠乏症
3 神経梅毒
4 薬剤性認知障害
[14]脳外科疾患による認知症
1 Gliomatosis cerebri
2 Lymphomatosis cerebri
3 慢性硬膜下血腫
4 硬膜動静脈瘻
5 慢性外傷性脳症
[15]悪性リンパ腫
1 中枢神経系原発悪性リンパ腫
2 全身性悪性リンパ腫の中枢神経系への浸潤
3 血管内リンパ腫症
[16]human immunodeficiency virus(HIV)
1 感染による認知症
2 HIV関連神経認知障害
3 進行性多巣性白質脳症(PML)
[17]海馬硬化症
1 病理と分類
2 臨床症状
3 画像所見
[18]Huntington’s disease-like syndrome(HDLS)
1 HDL1
2 HDL2
3 HDL3
4 SCA17(HDL4)
[19]神経核内封入体病/エオジン好性核内封入体病
付録1 改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)
付録2 日本語版MoCA(MoCA-J)
索引
コラム1 ビンスワンガー病
コラム2 血管性認知障害(VCI)
コラム3 CADASILとCARASIL
コラム4 有棘赤血球を伴う舞踏病
コラム5 ファール病
書評
開く
画像と病理の関係を視覚的に理解できるユニークな一冊
書評者: 池田 学 (阪大教授・精神医学)
近年の進歩が著しく,出版が相次いでいる認知症の神経画像に関するテキストと思い込んで,この本を手に取った。しかし,良い意味で期待は全く裏切られた。図譜の半数は美しい神経病理に関するものであり,さらには各疾患の病態仮説や最新の臨床診断基準が丁寧に盛り込まれている。まさに,副題の「画像と病理から見た疾患のメカニズム」に沿った内容となっている。
序文にあるように,本書の出発点は,技術の進展とともに近年とみに距離が近くなりつつある神経画像と神経病理の関連を視覚的に理解できるようにしたいという編者の慧眼にある。わが国を代表する4人の神経画像と神経病理のエキスパートの協働により,このようなユニークなテキストブックが誕生したことを喜びたい。
本書はまず,海馬,前脳基底部といった認知症や高次脳機能障害における最も重要な神経基盤について,MRI上の位置関係を画像と図譜を対比させながら丁寧に解説している。これから認知症臨床や研究を開始しようとしている初学者にとって,極めて有用な内容となっている。さらに,MRI SWI像やMIBG心筋交感神経シンチグラフィ,ドパミントランスポーターSPECTなど日常診療でも頻用され始めた新しい神経画像についての考え方,利用法と限界が丁寧に解説されていて,認知症の日常臨床に直ちに役立つ内容となっている。
神経病理に関しては,アミロイドβ,タウ,TDP-43,αシヌクレインなど主要な認知症の異常蓄積タンパクが美しい写真とともに,組織学的分類や重症度評価,臨床サブタイプとの関連で解説されており,臨床のエキスパートである認知症専門医にとっても,最新の神経病理学的知見を整理する機会になると思われる。
最後に,アルツハイマー病など主要な各認知症の神経病理や分子生物学的知見に基づき病態仮説を紹介し,診断基準や臨床症状の詳細な解説とともに各種の神経画像の特徴的所見を紹介している。臨床医にとっては,遭遇した患者の疾患に合わせて,この最終章から読み込んでいくことも可能であろう。
本書によって神経画像と神経病理を両方向から学ぶことができるようになった恩恵を享受して,読者の認知症の病態理解や臨床診断技術がさらに進展することを期待したい。
書評者: 池田 学 (阪大教授・精神医学)
近年の進歩が著しく,出版が相次いでいる認知症の神経画像に関するテキストと思い込んで,この本を手に取った。しかし,良い意味で期待は全く裏切られた。図譜の半数は美しい神経病理に関するものであり,さらには各疾患の病態仮説や最新の臨床診断基準が丁寧に盛り込まれている。まさに,副題の「画像と病理から見た疾患のメカニズム」に沿った内容となっている。
序文にあるように,本書の出発点は,技術の進展とともに近年とみに距離が近くなりつつある神経画像と神経病理の関連を視覚的に理解できるようにしたいという編者の慧眼にある。わが国を代表する4人の神経画像と神経病理のエキスパートの協働により,このようなユニークなテキストブックが誕生したことを喜びたい。
本書はまず,海馬,前脳基底部といった認知症や高次脳機能障害における最も重要な神経基盤について,MRI上の位置関係を画像と図譜を対比させながら丁寧に解説している。これから認知症臨床や研究を開始しようとしている初学者にとって,極めて有用な内容となっている。さらに,MRI SWI像やMIBG心筋交感神経シンチグラフィ,ドパミントランスポーターSPECTなど日常診療でも頻用され始めた新しい神経画像についての考え方,利用法と限界が丁寧に解説されていて,認知症の日常臨床に直ちに役立つ内容となっている。
神経病理に関しては,アミロイドβ,タウ,TDP-43,αシヌクレインなど主要な認知症の異常蓄積タンパクが美しい写真とともに,組織学的分類や重症度評価,臨床サブタイプとの関連で解説されており,臨床のエキスパートである認知症専門医にとっても,最新の神経病理学的知見を整理する機会になると思われる。
最後に,アルツハイマー病など主要な各認知症の神経病理や分子生物学的知見に基づき病態仮説を紹介し,診断基準や臨床症状の詳細な解説とともに各種の神経画像の特徴的所見を紹介している。臨床医にとっては,遭遇した患者の疾患に合わせて,この最終章から読み込んでいくことも可能であろう。
本書によって神経画像と神経病理を両方向から学ぶことができるようになった恩恵を享受して,読者の認知症の病態理解や臨床診断技術がさらに進展することを期待したい。
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