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臨床検査技師のための 血算の診かた

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臨床検査技師の視点からみた血算の読み方について、医師が見逃しやすいポイントを中心に、パニック値を含めて報告・相談すべき点を解説。具体的な症例・検査データをあげながら、考えられる疾患・病態、医師への報告の緊急度、見逃したらどうなるか、など考えながら読める実践書。経験のある臨床検査技師の血算の診断能力は、一般臨床医よりまさると著者は言う。技師だけでなく血算を勉強したいコメディカルの方にもおすすめ。
岡田 定
発行 2017年04月判型:B5頁:184
ISBN 978-4-260-02879-0
定価 3,850円 (本体3,500円+税)

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 本書は,臨床検査技師の視点で「血算の診かた」をガイドする本です。「誰も教えてくれなかった血算の読み方・考え方」(医学書院,2011年)は「医師」のための本でしたが,本書はまさに「臨床検査技師」のための本です。
 本書のコンセプトは,「検査技師も血算の診断に関わろう」です。従来のように「血算のデータを出して医師に報告する」だけでなく,これからは「血算の診断にも関わって医師を援助しよう」です。

 聖路加国際病院で血液診療とレジデント教育に長年携わるなかで,「医師は『重大な疾患を意味する血算』をしばしば見逃している」ということに気づきました。気づいたことはそれだけではありません。「検査技師にはその『重大な疾患を意味する血算』がわかっていた」ということがよくあることです。「血算の診かた」について講演させていただくことがありますが,「その血算が意味する重大な疾患」が会場の医師にはわからなくても検査技師にはわかる,ということが少なくありません。経験ある検査技師の「血算の診断能力」は,一般臨床医のそれより上なのです。
 それならば,検査技師のあなたの「血算の診断能力」を患者さんのために,もっと活かしてほしいのです。「データを出して医師に報告する」だけの世界から,「データを診断して医師の診療を援助する」世界に勇気をもって飛び込んでほしいのです。あなたは医師のために仕事をしているわけではありません。あなたは患者さんのために仕事をしているのです。それなら,あなたの「血算の診断能力」を,実際の患者診療に活かすようにしてほしいのです。
 「検査技師は診断をしてはならない」という古い決まりがあるそうですが,「検査技師は医師の診断を援助してはならない」という法律はありません。血算が医師に報告されても医師が適切に診断できなければ,患者さんの役に立つことはできません。医師の診断を検査技師が援助できれば,患者さんを助けることができます。
 具体例をお示しします。1年以上前から白血球増加が続く73歳男性がおられました。ある日の血算は,WBC 14,600/μL(骨髄球 1.5,後骨髄球 0.5,分葉核球 73.5,好酸球 2.0,好塩基球 3.0,リンパ球 13.5,単球 6.0%),Hb 13.4 g/dL,PLT 31.1万/μLでした。数名の医師が数か月毎に診ていましたが,慢性の白血球増加に気づいていても,「骨髄球・後骨髄球の出現,好塩基球増加」の重大な意味には医師は誰も気づきませんでした。でも,もしあなたが担当医へ「ひょっとして慢性骨髄性白血病かもしれません」と連絡したらどうでしょう。それだけで,患者さんを救うことができるのです(詳しくはp.103)。
 章立ては,第1章 貧血,第2章 赤血球増加症,第3章 血小板減少症,第4章 血小板増加症,第5章 白血球減少症,第6章 白血球増加症,第7章 白血球分画異常,第8章 汎血球減少症からなります。
 各章の最初に,たとえば第1章では貧血の診かた 大原則を,と一緒にまとめます。どの章でも,あなたが患者さんの血算や臨床情報にアクセスする実際の状況を再現します。まず患者さんのある日の血算に目が留まります。気になって過去の経時的な血算をチェックします。ここで,どのような疾患や病態を考えますか?などの質問(Q)が出され,その解答(A)が示されます。次に電子カルテで患者さんの追加情報を得ます。そこでまたQAが繰り返されます。さらに,その後の経過最終診断と続きます。本書がユニークなのはここからです。患者さんが経験するリアルな世界を実感していただくために,この血算を医師はこのように見逃すことを予想し,あなたも医師も見逃したら患者さんはどうなるかを推測します。最後にワンポイントレッスンで知識をまとめ,ここが肝でポイントを最終確認します。

 血算は数ある臨床検査のなかで最も頻用されます。まさに「臨床検査のバイタルサイン」です。その血算を最初に目にして経時的変化に気がつくのはあなたなのです。電子カルテであれば,検査技師も患者さんの病歴や身体所見にも容易にアクセスできます。あなたが血算を診断する条件はそろっているのです。
 検査技師も医師も業務量が多くなり,お互いのコミュニケーションは希薄になりがちです。しかし,検査技師も医師も「患者さんの健康のために幸せのために」という同じ目的で仕事をしています。「患者さんのために」という気持ちが本物ならコミュニケーションの障壁は乗り越えられるはずです。
 日本で臨床に従事している臨床検査技師は5.5万人,医師は21.5万人いるそうです[平成27年(2015)医療施設(動態)調査・病院報告の概況]。検査技師と医師が一体化すれば,それぞれの施設の臨床能力は間違いなく高められます。本書がそのきっかけになることを願うばかりです。
 最後に,いつも大変お世話になっている聖路加国際病院の臨床検査技師と内科医師の皆様,医学書院の安藤 恵様,平田里枝子様にこの場を借りて感謝申し上げます。

 2017年 春
 聖路加国際病院 人間ドック科部長・血液内科 岡田 定

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血算の基準値
「血算」新パニック値
 1.通常のパニック値
 2.重大疾患を示唆するパニック値

第1章 貧血
 症例1 [70歳女性]高度大球性貧血
  〔ワンポイントレッスン〕ビタミンB12欠乏性貧血
  〔ワンポイントレッスン〕大球性貧血
 症例2 [66歳男性]小球性貧血
  〔ワンポイントレッスン〕鉄欠乏性貧血
  〔ワンポイントレッスン〕小球性貧血の鑑別
 症例3 [80歳男性]正球性貧血
  〔ワンポイントレッスン〕胃切除後貧血
  〔ワンポイントレッスン〕造血幹細胞から赤血球まで
 症例4 [64歳男性]大球性貧血,網赤血球増加
  〔ワンポイントレッスン〕AIHA
  〔ワンポイントレッスン〕網赤血球
 症例5 [35歳女性]急激な貧血
  〔ワンポイントレッスン〕HSとパルボウイルス感染症
  〔ワンポイントレッスン〕網赤血球による貧血の鑑別
 症例6 [27歳女性]高度小球性赤血球
  〔ワンポイントレッスン〕サラセミア
  〔ワンポイントレッスン〕貧血の発生機序と赤血球サイズ
 症例7 [74歳女性]正球性貧血,蛋白尿
  〔ワンポイントレッスン〕多発性骨髄腫
 症例8 [56歳男性]大球性貧血,涙滴赤血球
  〔ワンポイントレッスン〕骨髄線維症の診断
  〔ワンポイントレッスン〕赤血球の形態異常と関連疾患

第2章 赤血球増加症
 症例1 [42歳男性]赤血球単独増加症
  〔ワンポイントレッスン〕ストレス性赤血球増加症
 症例2 [73歳男性]進行性赤血球単独増加症
  〔ワンポイントレッスン〕二次性赤血球増加症
 症例3 [70歳男性]汎血球増加症
  〔ワンポイントレッスン〕真性赤血球増加症(PV)

第3章 血小板減少症
 症例1 [87歳女性]血小板単独減少症
  〔ワンポイントレッスン〕特発性血小板減少性紫斑病(ITP)
 症例2 [83歳男性]血小板減少,正球性貧血,破砕赤血球
  〔ワンポイントレッスン〕血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)
 症例3 [52歳女性]血小板減少,巨大血小板
  〔ワンポイントレッスン〕先天性血小板減少症はITPと誤診されやすい

第4章 血小板増加症
 症例1 [47歳男性]白血球・赤血球正常,高度血小板増加
  〔ワンポイントレッスン〕本態性血小板血症(ET,2008WHO分類)
 症例2 [46歳男性]白血球増加,血小板著増
  〔ワンポイントレッスン〕ETとCML
 症例3 [63歳男性]白血球増加,血小板増加
  〔ワンポイントレッスン〕真性赤血球増加症(PV)の診断基準(2016年WHO分類)
  〔ワンポイントレッスン〕検査値の経時的変化

第5章 白血球減少症
 症例1 [30歳男性]白血球減少と異型リンパ球
  〔ワンポイントレッスン〕急性HIV感染症
  〔ワンポイントレッスン〕異型リンパ球
 症例2 [69歳女性]高度白血球減少
  〔ワンポイントレッスン〕恐ろしい血算
  〔ワンポイントレッスン〕発熱をきたす5大内科緊急疾患
  〔ワンポイントレッスン〕好中球減少性発熱(FN)
 症例3 [32歳女性]白血球減少,貧血
  〔ワンポイントレッスン〕鉄欠乏性貧血の白血球と血小板
  〔ワンポイントレッスン〕好中球のさまざまなプール

第6章 白血球増加症
 症例1 [37歳男性]白血球高度増加,貧血,血小板減少
  〔ワンポイントレッスン〕急性白血病の初発症状
  〔ワンポイントレッスン〕急性白血病の血算
 症例2 [73歳男性]慢性の白血球増加,好塩基球増加,骨髄球・後骨髄球出現
  〔ワンポイントレッスン〕血算のパニック値(聖路加国際病院2016年3月改訂)
  〔ワンポイントレッスン〕慢性骨髄性白血病(CML)の血液検査所見
  〔ワンポイントレッスン〕CMLの病期
 症例3 [57歳男性]慢性の白血球増加,白血球分画正常
  〔ワンポイントレッスン〕人間ドック受診者の白血球増加症
 症例4 [58歳男性]慢性の白血球増加,リンパ球増加
  〔ワンポイントレッスン〕慢性リンパ性白血病(CLL)
 症例5 [61歳男性]白血球増加,白赤芽球症
  〔ワンポイントレッスン〕白赤芽球症(leukoerythroblastosis)

第7章 白血球分画異常
 症例1 [32歳女性]好酸球増加
  〔ワンポイントレッスン〕好酸球増加症の分類と原因疾患
  〔ワンポイントレッスン〕好酸球増加症へのアプローチ
 症例2 [64歳男性]異型リンパ球,リンパ球増加
  〔ワンポイントレッスン〕異型リンパ球と異常リンパ球(リンパ性腫瘍細胞)
 症例3 [34歳女性]好塩基球増加
  〔ワンポイントレッスン〕白血球分画
 症例4 [98歳男性]正球性貧血,単球増加
  〔ワンポイントレッスン〕慢性骨髄単球性白血病

第8章 汎血球減少症
 症例1 [71歳男性]汎血球減少症,血球形態異常
  〔ワンポイントレッスン〕骨髄異形成症候群(MDS)の血算
  〔ワンポイントレッスン〕MDSの血球形態異常
 症例2 [69歳男性]汎血球減少症,低γグロブリン血症
  〔ワンポイントレッスン〕多発性骨髄腫のTTTとZTT
 症例3 [38歳男性]汎血球減少症,DIC
  〔ワンポイントレッスン〕急性前骨髄球性白血病(APL)
 症例4 [72歳女性]汎血球減少症,高度好中球減少
  〔ワンポイントレッスン〕再生不良性貧血,MDS,急性白血病の比較
 症例5 [44歳女性]汎血球減少症,著明な貧血
  〔ワンポイントレッスン〕発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)の検査所見
 症例6 [35歳女性]白血球減少,血小板減少,不明細胞
  〔ワンポイントレッスン〕血球貪食症候群(HPSまたはHLH)

column
 01 時系列の検査値に注目しよう
 02 骨髄異形成症候群(MDS)と誤診しやすい貧血
 03 入院すると貧血気味になる
 04 健やかに生きるために
 05 不可解な貧血の改善
 06 偽性血小板減少症
 07 特発性血小板減少性紫斑病(ITP)ではない
 08 高カリウム血症
 09 潜在性鉄欠乏症
 10 偽性低酸素血症
 11 白赤芽球症の原因
 12 最期まで自宅で過ごしたい
 13 「アウエル小体のある芽球がいます」
 14 偽性汎血球減少症

参考文献
索引

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血液検査技師,日当直を担当する臨床検査技師は必見! 側に置いておきたい一冊
書評者: 常名 政弘 (東大病院検査部副臨床検査技師長)
 血液学に関する書籍は数多く目にしますが,その中で血液検査データの診かたに関する書籍は数えるほどしか見かけません。また研修会,講演会などで血液検査データの診かたに関する講演は近頃多く行われているテーマではありますが,その内容が書籍になったのは本書が初めてではないかと思われます。名古屋にて岡田定先生(聖路加国際病院)のご講演を聴講した機会がありましたが,まさに講演会の内容がまとまった書籍です。

 本書を拝読した感想を示します。
・全てのテーマについて症例形式で書かれており,臨床症状,検査データの解釈のポイント,どう考えるか,追加すべき検査や既往歴の振り返り,最終診断,と症例を考える流れができていて理解しやすい。
・文章だけではなく,イラストや表が多く,さらにきれいな細胞画像やCT画像なども含まれており,文章の表現がやさしくわかりやすく,新人技師であっても読みやすい。
・検査技師から医師へのアプローチ方法がわかりやすく書かれている。また著者が臨床医であり,臨床側が検査データのどの部分を求めているのかがわかりやすく書かれている。検査技師からの一方的な報告ではなく,医師が見逃しやすい点についても書かれているため,ポイントをついた報告をするためのこつがわかる。
・血算のデータだけではなく,生化学検査や凝固検査のデータについても記載されており,臨床検査技師として検査データをどのように総合的に判断していくかについても勉強できる。
・コラムがたくさんあって読み応えがあり,内容もバラエティに富んでいて面白い。特に日常検査で遭遇し得る「偽性○○」に関するテーマが複数あり,臨床検査技師が臨床側にデータを送信する前に気が付きたいデータや生化学検査や血液ガスなど血算以外のデータの見抜き方まで記載されている。さらに,患者さんとのやりとりなど,医師ならではの話も交えてあり,医療従事者としても読んでおきたい内容が多い。

 最後に,「コラム04」(p.46)にも書かれてますが,「健やかに生きるために」どうすべきかの4つのポイント,(1)食事に気を付けること,(2)日中は努めて体をよく動かすこと,(3)夜は十分に睡眠をとること,(4)ストレスを溜めないこと,と患者さんに指導されているそうです。

 文章の表現も含め岡田先生の優しいお人柄がうかがわれる一冊と思います。
検査技師が出合って良かったと思える一冊
書評者: 池本 敏行 (阪医大附属病院中央検査部技師長)
 本書の書評を書くにあたり,評者は『臨床検査技師のための血算の診かた』というタイトルに興味を抱きました。なぜかというと,臨床検査技師(以下,検査技師とします)であれば,誰もが口にすることをためらってしまう,“診断”の“診”という文字が使われていたからです。まず,タイトルに惹かれて読み進めました。読み終えた今,期待以上の本であったと感じています。

 この本は,著者が医師向けに書かれた『誰も教えてくれなかった血算の読み方・考え方』(医学書院,2011年)の姉妹本ですが,血算データを病態診断につなげていくというスタイルは同じです。症例数は医師向けの本よりは少ない35症例ですが,血液検査に携わる検査技師が遭遇するだろう血液疾患はほぼ網羅されています。血算データから病態診断までがQ&A方式で導かれており,血液検査に携わる検査技師の指導書として,また自己学習書としてぴったりな本です。検査技師は1日に数百という検体を扱うので,血算の時系列を全て確認することは困難ですが,この本では「血算を時系列で診る」という医師の視点を学ぶことができます。評者が検査技師になった頃は紙カルテだったので,患者さんの状態や投薬情報などを得ることは大変なことで,同じ検査室で測定している他の検査結果さえすぐに知ることが難しい時代でした。今は電子化されているので,検査技師でも,患者情報も血算の時系列も簡単に見ることができます。そういう意味からも,この本は時代にマッチしています。

 “診断”を付けられるのは医師だけなので,検査技師は血算やその他の検査から病名を推測できても病名をはっきりと口にすることはしません。しかしこの本では,検査結果から考えられる病名を積極的に医師へ伝えることの大切さやその病名を推測するに至った根拠,医師への伝え方までもが書かれています。そして医師や検査技師が重要な所見を見落とすとどうなるかも説明されています。全体を通して,検査技師が患者のために積極的に診療に関わることの必要性を説き,チーム医療に積極的に参加するよう背中を押して下さっています。これは長年,著者が血液内科医として検査技師と接してこられ,検査技師の気質や技師が何をできるかをよく理解されているからに他なりません。

 また,この本は検査技師にとって大変ありがたい内容となっています。血液検査に携わる検査技師は患者との接点が少なく,血算データの向うにいる患者さんの姿が見え難いものです。この本には診断後の治療経過や著者の臨床経験がコラムに書かれており,コラムを読むと著者と患者さんとやりとりが目に浮かび,いつの間にか診療の現場にいるような気になります。

 書評を書くまでの間に,若手の検査技師が何度か血液検査結果の質問に来ましたが,この本に習って答えてみました。とても読みやすく血液検査に携わる検査技師が出合って良かったと思える一冊です。
初学者からベテラン技師まで血算を読むスキルが上がる一冊
書評者: 徳竹 孝好 (長野赤十字病院輸血部課長補佐/骨髄検査技師)
 本書の特徴は,(1)豊富な症例の提示,(2)血算データのわかりやすい解説,(3)異常がみられた場合の検査技師の役割,(4)医師が異常を見逃す可能性があること,(5)医師も検査技師も異常を見逃してしまった場合,など,血算データをどう読むかで患者の診断と治療がいかに正しい方向に進められるかを解説している本である。各症例に医師と検査技師の見逃しやすさについて,それぞれ星マーク3つで示されている点も面白い。

 私が岡田先生に初めてお会いしたのは平成25年の冬である。面識もない私の手紙一つで,長野県技師会の「信州血液検査セミナー」の講師として,湯田中温泉まで駆けつけてくださったことに役員一同感激したことを思い出す。さらに,当時先生が出版された『誰も教えてくれなかった血算の読み方・考え方』1)の内容の一部を,症例を提示しながら熱心に講演いただいたことが昨日のことのように思い浮かぶ。またクームス試験(抗グロブリン試験)を考案したCoombs先生は「クームズ」と読むことを教えられ参加者は皆驚いた(本書にも「クームズ試験」と記載されている)。

 『誰も教えてくれなかった血算の読み方・考え方』は,臨床医向けに書かれた本ではあるものの,われわれ臨床検査技師にとっても血算を通して疾患や病態を把握するには十分な参考書だった。しかし今回,姉妹品として『臨床検査技師のための血算の診かた』を出版された。先生の検査技師への思いが感じられる。前書もそうであるが,本書もその構成がユニークでとてもわかりやすい。前書は「血算データの提示」「一発診断」「確定検査」「最終診断」という構成であったが,本書は「血算データの提示」「どのような疾患や病態を疑うか」「検査技師としてどう行動するか」「最終診断」「医師はこのように見逃す」「医師も検査技師も見逃してしまったら」という構成であり,まさに日常検査技師が行う仕事を,質の高い検査データとして報告できるように導いてくれる手順書となっている。

 症例提示の他に,「Column」として先生の臨床医としての経験談が随所に散りばめられている点も興味が湧く。また採血量が多くシリンジで一気に採血して採血管に分注する際,混和不足で血球が沈んでしまうとヘマトクリットが偽高値あるいは偽低値になる現象や,日常の検査でのピットホールも記載されていてとても参考になる。

 ただ一点おこがましくも要望するならば,検査データに単位が表記されていればさらにわかりやすいと思われる。検査技師は単位と有効桁数に人並みならぬこだわりを持っている人が多い。赤血球数が400×104/μLと表記するか4.00×109/Lと表記するかで単位も変わってくる。

 終わりに,血算は病気の診断・予後予測,治療方針決定と治療効果の判定全てに関わる有用な検査である。本書を利用することで,血算を読むスキルが上がることは間違いない。初学者からベテラン技師まで幅広い経験の臨床検査技師に本書の一読をお薦めしたい。

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