第2705号 2006年10月30日


白壁賞,村上記念『胃と腸』賞発表


 さる9月20日,東商ホール(東京都千代田区)で行われた早期胃癌研究会の席上,第12回白壁賞と第31回村上記念『胃と腸』賞の授賞式が行われた。第12回白壁賞は門馬久美子氏・他「中・下咽頭癌の通常内視鏡観察」(胃と腸40:1239-1254, 2005)に,第31回村上記念『胃と腸』賞は和田陽子氏・他「難治性潰瘍性大腸炎におけるサイトメガロウイルス感染症――その診断,治療と経過」(胃と腸40:1371-1382, 2005)に贈られた。

白壁賞は門馬久美子氏らに

 研究会司会の斉藤裕輔氏(市立旭川病院消化器センター)から,まず第12回白壁賞受賞者代表として門馬久美子氏(都立駒込病院内視鏡科)が紹介された。本賞は,故白壁彦夫氏の業績を讃えて,消化管の形態・診断学の進歩と普及に寄与した論文に贈られるもので,『胃と腸』に掲載された論文に加え,応募論文も選考の対象となる。今回は『胃と腸』40巻に掲載された全論文と応募のあった論文が選考対象となった。

 選考小委員会を代表して赤松泰次氏(信州大内視鏡診療部)は,本論文について「上部消化管内視鏡検査で発見された中・下咽頭癌を詳細に検討して,発見のコツを解説し,正常血管網の消失,粘膜の発赤,微細な凹凸などが拾い上げるべき所見として大事だと述べている。中・下咽頭癌の早期発見の道しるべとなるべき論文と評価された」と選考理由を述べた。

 編集委員長の飯田三雄氏(九大病態機能内科)は「中・下咽頭癌は非常に見つけにくい場所にあるのであまり報告がなかったが,本論文は,たくさんの症例を通常内視鏡でのきれいな画像とともに提示したということで高く評価された」と述べ,賞状と盾を贈呈した。医学書院金原優社長からは,賞金50万円が贈呈された。

 受賞者代表として,門馬氏は「早期食道癌の内視鏡治療に携わり18年になるが,早期食道癌は術後長期に経過を見ることのできる病気で,経過中の異時性癌が問題となる。異時性癌として中・下咽頭癌が多くみられるようになったが,中・下咽頭癌は放射線治療が効いても,声の質が変わるなど,患者さんの生活の質を著しく落とす。内視鏡検査時に患者さんが苦しがるので,のどは瞬時に通りたいと思われる臓器だが,実は癌が隠れている。通常観察でも十分見つけられることを知っていただきたいという思いで書いた。私が内視鏡治療を始めたときに師匠であった吉田操先生(現・荏原病院),今内視鏡治療を一緒に行っている駒込病院内科の先生方,協力いただいている外科や病理の先生方に感謝したい」と挨拶した。

村上記念『胃と腸』賞は和田陽子氏らに

 引き続き,第31回村上記念『胃と腸』賞の授賞式が行われた。本賞は,故村上忠重氏の業績を讃え,消化器,特に消化管疾患の病態解明に寄与した論文に贈られるもので,『胃と腸』40巻に掲載された全論文の中から選ばれた。

 司会の斉藤氏から受賞者代表の和田陽子氏(福岡大筑紫病院消化器科)が紹介され,選考小委員会代表の赤松氏は「本論文は,初発ないし再発した中等度以上の活動性潰瘍性大腸炎を対象に,サイトメガロウイルス感染合併症例の臨床像,抗ウイルス剤の治療効果と長期経過について検討し,感染合併例は非感染例に比べステロイド抵抗性の症例が多いこと,抗ウイルス剤を投与して寛解しても再燃時には再感染があることなどを述べている。その学術性と国際性を評価された」と選考理由を述べた。

 飯田氏は「重症な潰瘍性大腸炎にサイトメガロウイルスが関与しているということは以前から知られていたが,どのように病態に関与しているかということを多数例で画像とともに証明したことで,今後のステロイド抵抗性の重症潰瘍性大腸炎の治療方針を決定するうえでおおいに貢献したものと高く評価された」と述べ,賞状と盾を贈呈した。金原社長からは賞金50万円が贈られた。

 受賞者を代表して和田氏は,「今回,名誉ある賞をいただいたことは大変ありがたいことだと思う。5年前に松井敏幸教授(福岡大筑紫病院消化器科)から潰瘍性大腸炎についてテーマを与えられたが,最初,学会に出している時点で信じてもらえなかった面もあった。ようやく認知されるようになったのかなと大変うれしく思っている。サイトメガロウイルスは,難治性潰瘍性大腸炎にいろいろ原因があるうちのひとつだとは思うが,症例を増やして内視鏡像などの特徴を調べてもう一度論文に出していきたい」と述べ,最後に共同執筆者へのお礼で挨拶を締めくくった。