医学界新聞

 

心血管疾患予防への国際的取り組み

「世界ハートの日」プレスセミナーの話題から


 「世界ハートの日」プレスセミナー「メタボリックシンドローム,これからどうする・」(主催:日本心臓財団)が9月11日,銀座フェニックスプラザ(東京都中央区)にて開催された。「世界ハートの日」は世界心臓連合が定めた行事で,毎年9月の最終月曜日に,世界各国で心血管疾患予防を呼びかけるさまざまなイベントが行われる。日本では日本心臓財団と日本循環器学会が加盟しており,9月中に第54回日本心臓病学会での市民公開講座をはじめとしたさまざまなイベントが行われた。

 セミナーでは,はじめに日本心臓財団常任理事の篠山重威氏が,「世界ハートの日――わが国における取り組み」と題して講演。日本では,昨年から「世界ハートの日」に参加しているが,20年以上前から8月10日を「ハートの日」として独自の活動を行っていたことを紹介。「世界ハートの日」の3つの目的として,(1)より多くの人たちに心臓病と脳卒中に対する関心を呼び起こす,(2)心臓に良いライフスタイルを維持することを奨励する,(3)世界の子供たちと大人が健康で長生きができるようにすることを挙げた。

 佐藤祐造氏(愛知学院大)は,「エクササイズ――汗を出しても疲れない」と題して講演。運動の効用として,「食後高血糖の是正や肥満の防止・解消」「インスリン作用の改善」「高血圧の改善」などを挙げたうえで,「食事・運動習慣の積極的改善は経口血糖降下薬よりも糖尿病発症を抑制する効果が大きい」というデータを紹介した。また,激しい運動は血糖値・血圧ともに上昇させるため,糖尿病・メタボリックシンドロームの予防には軽い運動を持続するのが効果的であると説明。具体的には有酸素運動と筋力トレーニングの併用が有効と強調した。

 上島弘嗣氏(滋賀医大)は,「日本食を見直そう――日系米人からの警鐘」と題して講演。「日本が長寿国なのは,心血管疾患での死亡率が最も低い先進国の一つであるため」としたうえで,食生活が欧米化すると心血管疾患は増加すると指摘。「日本人」「ハワイの日系人」「米国人」の3群で体格や食生活などに関して比較を行い,日本人はエネルギーの大半を炭水化物から摂取し,その内訳の多くは穀類であるのに対し,ハワイの日系人や米国人はエネルギーの大半を脂肪に依り,炭水化物の約半分を砂糖から摂取していることなどを示した。これらのことから上島氏は穀物・魚介類・豆類を中心とした日本食はメタボリックシンドロームの予防効果が高いと解説。「日本人のよい食習慣を守り育てていくことが重要」と述べて降壇した。