第2693号 2006年7月31日


診療報酬改定はリハをどう変えるか

第43回日本リハビリテーション医学会開催


 さる6月1-3日,東京プリンスホテルパークタワー(港区)において,宮野佐年会長(慈恵医大)のもと,第43回日本リハビリテーション医学会が開催された。「リハビリテーション医学の進歩と実践」をメインテーマとした今回は,760の一般演題,8つのシンポジウムを中心にリハビリテーション(以下,リハ)医学の現状と展望が議論された。また,今回は診療報酬改定直後ということもあり,パネルディスカッション「リハ医療と診療報酬制度」が企画され,理学療法士,作業療法士,言語聴覚士など,リハにかかわる多職種によって,今回の改定と,今後のリハ医療における診療報酬上の課題が話し合われた。


診療報酬改定はリハをどう変えるか

 パネルディスカッション「リハビリテーション医療と診療報酬制度」(座長=東大・江藤文夫氏,藤田保衛大・才藤栄一氏)では,はじめに江藤氏が平成18年度診療報酬改定の概要と,特にリハにかかわる改定ポイントを指摘。

 史上最大,3.16%のマイナス改定となった平成18年度診療報酬改定だが,リハ医療関連でも大きな見直しがあった。厚労省保険局医療課の試算では,リハについての診療報酬は「総額で変化なし」とされているが,異なる見通しを持つ論者も少なくないほか,その内訳には大きな変更が見られた。

 特に,疾患別の医療連携を促すべくリハ施設基準を疾患別に再編したことや,発症早期の1日あたりの単位数の上限が緩和されたこと(4単位から6単位へ。厚労省が認めた患者については6単位から9単位へ),疾患ごとに算定日数制限を設けたこと,回復期リハの算定日程上限を短縮したことなどは,急性期リハを重視し,回復期・維持期のリハ医療費を削減しようとする狙いが見える。

真の「医療の効率化」とは

 パネルディスカッションではこうした問題意識のもと,演者がそれぞれの立場から意見を交わした。

 はじめに二木立氏(日本福祉大)が,「専門職の皆さんとは違い,責任のない立場からの発言」と断ったうえで,医療経済学の視点から今回の診療報酬改定について持論を展開した。

 二木氏は「医療効率」と「医療費抑制」がまったくの別物であることを強調。「効率」とは,効果÷費用を最大化することであり,「もっとも効率のよい医療」を実現することは,総医療費の増大を意味することもありうると述べた。また,その「費用」についても,一般に対象とされている「公的医療費」だけではなく,私的な医療費負担や,金銭表示されない資源・費用も含めた社会的次元で資源・費用を把握することが大切だとした。

 こうした視点に立つと,患者負担増加・保険給付範囲縮小といった施策は,公的費用から私的費用への「コストシフティング」に過ぎず,医療効率は少しも向上していない,ということになる。二木氏は,今回の改定について「むしろ,低所得者層の医療受診が抑制され,医療の公平性が失われることによって,医療効率が低下する可能性が高い」と述べた。

 また,二木氏は,介護保険改定についても触れ,介護予防・生活習慣病対策といった予防医療の充実は,短期的に医療費削減をもたらしたとしても,平均余命の延長により,累積医療費は逆に増大する可能性があると指摘。これらの施策はあくまでQOL向上のために行うべきものであり,医療費抑制を見込むのは危険であると述べた。

平成18年度改定のポイント

 石川誠氏(初台リハ病院)はリハ医の立場から発言。石川氏はまず,平成18年度改定の要点を,急性期病院における在院日数短縮,急性期病院における1.4対1看護,救急医療の評価,発症早期のリハサービス提供量増加,回復期リハ病棟の在院日数短縮,地域連携クリティカルパスの推進,在宅療養支援診療所の普及,療養病棟の再編の8点に整理。その狙いは急性期,回復期,在宅それぞれの医療機能分化と連携の推進,それによる在院日数短縮と病床数削減とにあるとした。

 石川氏は,これらの妥当性を認めつつも,医療機能分化を進めるうえでは解決すべき課題があると指摘。急性期での集中的なリハを実現するには,リハスタッフの充実が必要だが,増大する人件費をどこがまかなうのか,若手スタッフの教育をどのように充実させるかなど,喫緊の課題が少なくないと述べた。また,そうした早期リハの効果を費用対効果で分析・立証していくことなくしては,医療の効率化実現は難しいと述べた。

疾患別リハの限界?

 一方,理学療法士の立場から発言した日下隆一氏(佛教大)は,診療報酬改定の歴史的変遷を踏まえたうえで,特に今回の「リハ施設基準の疾患別再編」について危惧を表明した。

 まず日下氏は,過去の国民医療費と診療報酬の推移を概観し,国民医療費は必ずしも急激な上昇を見せているわけではなく,医療費の高騰を強調する厚労省の予測は根拠が少ないと指摘。理学療法科の診療報酬についても,これまで引き上げられてきたことは,理学療法全体の重要性が認知されてきたことの証だとしつつも,必ずしも実態を反映した診療報酬体系とはなっていなかったと述べた。

 そのうえで日下氏は,「リハは,疾患の枠組みを超えたところで取り組むべき課題があまりにも多い領域」と述べ,今回の改定における疾患別の再編が,リハの今後のあり方を難しくするのではないかと危惧を述べた。

求められる教育システム整備

 作業療法士の立場で発言した中村春基氏(西播磨総合リハセンター),言語聴覚士の立場で発言した長谷川賢一氏(聖隷クリストファー大)の両氏に共通していたのは,専門職教育の問題。施設基準の改定によって,両職種とも,今後ポストは増加傾向になると考えられるものの,継続教育を含めた教育システムの整備には課題も多い。

 また,長谷川氏は,今回の診療報酬改定で,「集団訓練」の算定が廃止になったことに注目。集団訓練の効果はウェルニッケ失語症例などでの臨床データも多く,現場無視の「算術的」動機でなされた決定ではないか,と今後の改善を訴えた。