医学界新聞

 

第7回日本言語聴覚学会開催


 5月20-21日,勝木準学会長(やわたメディカルセンター)のもと,第7回日本言語聴覚学会が石川県立音楽堂,他にて開催された。テーマを「地域における言語聴覚士の役割――コミュニケーション障害のある人の生活支援」とし,同学会初の地方開催であることを強く意識したプログラムが構成された。

拡大する言語聴覚士の役割

 シンポジウム「在宅高齢者への支援」(座長=在宅リハビリテーションセンター成城・半田理恵子氏)では,訪問を心待ちにする利用者・家族に接してきた演者らの経験を紹介し,今後期待される言語聴覚士の役割について議論された。また,本年の医療保険・介護保険同時改正によって拡がる可能性のある活動に関しても言及された。

 訪問リハビリテーションでは,言語聴覚士も保険算定可とされたことを受け,今後は在宅支援チームの一員として,言語聴覚障害のある人の問題を的確に把握し,個別計画を立てていく必要があると論じられた。通所リハビリテーションでは,発症後経過の短い人が多数利用しているという調査結果を踏まえ,機能回復と生活機能改善の両方を支援することが求められる,特に栄養改善・口腔機能向上に言語聴覚士のサービスが期待されていると発表された。また,老健施設では,今後は患者の状況に応じて自宅と施設を往復できるような,きめ細やかな在宅支援に向かっていると述べられた。

求められる認知症への対応

 目黒謙一氏(東北大)の特別講演「認知症の予防,早期診断,早期介入」では,まず高齢社会を迎えた本邦において認知症の問題は国家の基本問題であると断じ,講演が始まった。さらに認知症は,原因疾患により予防や対策が異なる症候群であるとし,アルツハイマー型認知症の場合,一次予防(発症の防止)には科学的エビデンスがないが,二次予防(早期発見・治療),三次予防(機能の維持)が重要。一方,脳血管性認知症では一次予防は可能だが,その後の治療,家族・介護者の関わりにより,生命予後が大きく異なると述べた。

 また,認知症は多職種のスタッフが連携して当たる必要があることや,さらに氏が臨床・研究を行う田尻スキップセンターの例を踏まえ,保健・医療・福祉現場における連携の重要性,すなわち地域医療連合体の必要性を強調した。最後に,今後,言語聴覚士が認知症に積極的に関わっていくこと,特に今学会のテーマである「地域における言語聴覚士の役割」に強く期待したいと述べ,講演を締めくくった。