第2627号 2005年3月28日


現場による足病変予防を議論

第3回日本フットケア学会開催


 さる2月10日,第3回日本フットケア学会が,西田壽代会長(駿河台日大病院)のもと,品川区立総合区民会館「きゅりあん」(品川区)において開催された。今回は看護師を中心として約600名の参加者を集め,また演題数も35を数え,この領域に対する関心の高まりを感じさせる学術集会となった。教育講演ではリンパ浮腫マッサージや爪切り,ウオノメ・タコの処置などをビデオで講義する実践的な内容が行われ,また区民公開講座では足病変患者の靴選びのポイントが講義されるなど,盛りだくさんの内容となった。ここでは,シンポジウムのもようを紹介する。


フットケアの有効性 が確認される

 シンポジウム「フットケアを浸透させるには 足病変に挑む専門家達に学ぶ」では6人の演者が登壇し,それぞれの立場からフットケアの有効性や普及への願いを語った。

 川本昌代氏(「リウマチの目・暮らしの手」情報室)は,自身の40年にわたる関節リウマチ患者としての経験をもとに,フットケアと靴選択の重要性について述べた。脱脂綿を固めた中敷を自分で工夫していた頃から,現在の靴型装具や整形靴までを時系列に紹介したうえで,「足は全身の窓。気持ちよく歩ける快感を身体で覚えることで,生活や心が変わる」と,フットケアの効用について述べた。

 横井郁子氏(都立保健科学大)は,事故防止の観点から発言した。厚生科学研究で行われたヒヤリ・ハット事例の研究に参加した横井氏は,その経験から高齢者の転倒と糖尿病の末梢循環障害の関連性に注目。高齢者の転倒原因は,一般に足腰の筋力低下や認知機能の低下があげられているが,横井氏は「調査ではベッドから起きあがって,立ち上がろうとした際の転倒例が多かったが,これらは糖尿病合併症の末梢循環障害のために足先の感覚が失われ,その結果としての転倒であった可能性がある」と述べた。

 藤井夕香氏(三重大病院)は,フットケア外来立ち上げの経験を紹介。藤井氏は2004年7月からフットケア外来を立ち上げたが,約半年を経過して気づいたことは,想像以上にハイリスクの患者が多かったことであるとし,「特に爪のトラブルを抱えた患者さんは多く,あらためてフットケアのニーズの高さを知った」と述べた。

 林久恵氏(名古屋共立病院)は,炭酸泉を用いた足病変予防・治療について述べた。炭酸泉を人工的に製造できるようになった1980年代以降,炭酸泉が持つ末梢循環障害の改善効果は検証されてきている。林氏は過去の研究をレビューしたうえで,温水,炭酸泉,高濃度炭酸泉それぞれの足浴時の血流量の変化についての,自施設でのデータを紹介,高濃度炭酸泉がもっとも血流改善効果が高かったことを示した。

フットケア先進国の現状

 町田英一氏(高田馬場病院)は,整形外科医の立場からフットケアの重要性を説いた。町田氏は自身がかかわった大量の症例をスライドで紹介し,外反母趾,陥入爪・巻き爪など,それぞれについて治療のポイントを解説した。また,「これらの症例の多くは正しい爪切りなど,日常のフットケアで予防できる」とし,欧米に比して遅れている本邦のフットケアの現状を改善したいと述べた。

 吉本錠司氏(和功堂)は,足底板(靴の中敷)の役割について解説した。足裏には大きく分けて縦横2つのアーチがあり,これが崩れることで外反母趾や強剛母趾などの病変が生じる。足底版はこのアーチを下から支えるものだが,吉本氏は外反母趾用,リウマチ用など,用途にあった材料や形状の足底板を用いることで,爪切りや足浴だけでは防ぎにくい足病変を予防することができると述べた。

 西出薫氏(スミス・アンド・ネフュー株式会社・ETナース)は,欧米のフットケアの現状を報告しつつ,今後の本邦でのフットケアの展望について述べた。欧米では足専門医(Podiatrist)制度が確立しており,皮膚科医,形成外科医,創傷専門看護師などとのコラボレートによって,足病変の治療が行われている。本邦では今のところ,足を中心にすえて議論する学会はほとんどなく,フットケア学会が担うべき役割は大きいと述べた。

社会的な課題としての足病変

 ディスカッションでは,欧米のフットケアの現状が話題となった。町田氏によれば,足病変の手術では米国が,靴や足底板,爪のケアではドイツが先進国であるという。また,これらの領域についての,患者からの関心がまだまだ低いことも話題となった。吉本氏によれば,一度足底板をオーダーメイドした人はリピーターになることが多く,逆にいえば,何か問題が起きるまでは,一般的に足に対する意識は低いことを指摘した。

 これらの状況を改善していく方策について,川本氏はユーザーから問題を提示していくことが重要であると述べた。また,これを受けて町田氏も「足切断患者が社会に出られない状況が今でも存在する。インフラと社会の意識を改善するだけで,多くの人が町の中で足病変の現状を目にすることになるのではないか」と述べ,社会への強いアピールを通して,フットケアを医療保険制度に反映していく重要性を強調した。