第2617号 2005年1月17日


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日本腎臓学会西部学術大会
医学生・研修医のためのセミナーに参加して

住田鋼一

金沢医科大学4年


 2004年10月1-2日に岡山市で第34回日本腎臓学会西部学術大会が開催され,明日を担う医学生・研修医のためのセミナーが企画されました。「腎疾患の全身管理」と題されたこのセミナーに参加して,医学生である私が卒前にどのように学習すべきかを腎臓領域だけではなく,医学全般について認識できたように思います。

受講前は不安も

 私はこれまでに腎臓の機能や疾患について習ってはいたのですが,同じような病態を呈する疾患も多く,症状も局所的なものだけではなく全身的なものまで含まれ,非常にわかりづらいという意識を持っていました。腎臓が体の中でも欠くことのできない臓器の一つであることから,なんとか理解できないものかと努力していましたが,なかなか理解できたというレベルまでに達することができませんでした。今回セミナーに参加することを決めてから,どのような講義が聴けるのかと期待しながらも,はたして私に理解できるのだろうか,より混乱するのではという不安もありました。

活発な意見交換が行われた3つのセッション

 セミナーでは「腎炎へのアプローチ」,「意識障害患者」,「すぐ治療するのか追加の検査をするのか」といった3つのセッションを受講しました。セミナーには約70名の研修医,医学生が参加しており,その他指導医クラスの先生方も参加していました。司会,討論者の先生方のはつらつとした雰囲気やちょっとした配慮もあり,初対面の参加者同士で活発な意見交換がなされました。またレクチャーが一方通行ではなく,参加者も自由に質問や発言ができて,私自身も先にあった不安が全く的外れで,楽しく充実した時間を過ごすことができました。

 長崎大学の宮崎正信先生が症例提示・司会をされ,愛知医科大学の今井裕一先生が討論者となられた「腎炎へのアプローチ」では,数多く存在する腎疾患や全身症状を呈する腎障害について,特徴となる臨床症候,腎機能,そして病理により分類し,そこからアプローチしていくことをわかりやすく解説していただき,今まで各論的なことに囚われて混乱していたことがすっきりと整理できました。

 石川県立中央病院の松村正巳先生が症例提示・司会をされ,東海大学の須藤博先生が討論者となられた「意識障害患者」のセッションではkeyとなる身体所見からいくつもの鑑別診断を立て,一元的にアプローチしていく思考過程を示していただいた時は,すごいの一言で非常に楽しかったです。いつもどのように一元的に考えれば診断に至るのだろうかと疑問を持っていたこともあり大変勉強になりました。

 中部労災病院の藤田芳郎先生が症例提示・司会をされ,今井裕一先生が討論者となられた「すぐ治療するのか追加の検査をするのか」のセッションでは,何を考えて検査をオーダーするのか,検査後確率と治療閾値の概念まで言及され,検査,診断,治療の関係について理解を深めることができました。

一歩一歩積み重ねて大きな幹に

 今回のセミナーでは,先生方の教育熱心なハートに触れることができモチベーションが刺激され,また腎臓疾患についての講議ということだけはなく,医師になるために必要なジェネラリズムが盛り込まれており,非常に有意義で楽しい時間が過ごせました。今後このセミナーが各地で開催されることを願わずにはいられません。

 私自身,まだまだ知識不足を実感していますが,今回教えていただいたことを自分のものにできるよう,一歩一歩積み重ね,大きな幹にしていこうと意を新たにしました。


住田鋼一さん
甲陽学院高校卒業後,岡山大学を自主退学し2000年4月金沢医科大学入学。2004年春から同学内で金沢大学,福井大学の学生の強力なサポートを得て学生ACLSを同級生とともにはじめる。また,金沢大学6年生の耒田善彦さん,山田洋太さんたちとともに石川・福井・富山の北陸3県の医学部生を学年分け隔てなく集め,さまざまなテーマで定期的に勉強会をしている。


日本腎臓学会医学生・研修医のためのセミナーとは

今井裕一

日本腎臓学会卒前卒後教育委員会委員長
愛知医大腎臓・膠原病内科教授


 日本腎臓学会では,3年前から卒前卒後教育ワーキンググループが活動を開始しました。全国に医学部・医科大学は80校あるのですが,腎臓部門が講座としてない大学あるいは腎臓専門医が存在しない大学が,いくつかあります。その地域では,どのようにして腎臓専門医を育てるのでしょうか?

高まる腎臓専門医への期待

 皆さんもご存知のように,尿異常を呈する人は,国民の数%に及びます。全国で腎生検を受ける方が1年間に約1万います。そして不幸にして腎不全になり透析療法が必要な方が全国で23万人に達しています。単純に計算して国民600人がいれば,透析患者が1人出現する割合で,これは都会でも田舎でも変わりありません。このように腎臓専門医の需要が全国的に均等であるにもかかわらず,いくつかの地方あるいは地域では,腎臓の教育が十分行われていない状況にあるのです。これは国民にとって大変不幸な状態です。

 この状況を打開するためには,どうしたらよいでしょうか?

 医学生・研修医に腎臓学をもっとよく知ってもらい,腎臓学に関心を抱いていただき,将来的にわれわれの仲間になっていただく方法を実践することしかないのです。そのような理由で,腎臓学会に教育ワーキンググループが作られたのです。一昨年の旭川医大・菊池健次郎先生主催の東部部会,名古屋市立大学・郡健二郎先生主催の西部部会から「医学生・研修医のためのセミナー」をスタートさせました。そして昨年も岡山大学・槇野博史先生主催の西部部会,昭和大学・杉崎徹三先生主催の東部部会でも行いました。

今後はサマー・スクール,集中セミナーも企画

 今後は,サマー・スクールあるいは腎臓専門医のいない大学での集中セミナーも企画中です。より多くの学生・研修医が腎臓病を正しく理解し,日常臨床で実践できるようになることが,先輩としてのわれわれの役目であると考えています。幸い腎臓専門医には教育に熱心な人がたくさんいます。そのような方たちがボランティアとして卒前卒後教育委員会に集まっています。これからも学生さん・研修医のみなさんといっしょに勉強していきたいと思っています。

 別件ですが,日本腎臓学会のHP(http://www.jsn.or.jp/)には,医学生・研修医のコーナーを設けています。その中に,セルフトレーニング問題も多数ありますので,実際にトライしてみてください。ご意見,ご希望がありましたら気軽にメールをください
imaihiro@aichi-med-u.ac.jp)。今後の参考にさせていただきます。