第2614号 2004年12月20日


国民の関心も高まるアレルギー学

第54回日本アレルギー学会開催


 第54回日本アレルギー学会が11月4-6日の3日間,秋山一男会長(国立病院機構相模原病院)のもと,横浜市・パフィシコ横浜,他にて開催された。

 近年はアレルギー疾患患者の増加に伴い,国民病としての関心が高まっており,その一方で,アレルギー研究は目覚ましい進歩を遂げつつある。このような背景を踏まえ,今,改めて原点に戻り,アレルギー学を見直そうとの考えから,今回のメインテーマは「アレルギー学の基本に立ち返って――過去の足趾を辿り,将来を見据えて」と設定された。

気管支喘息研究の成果を報告

 国立病院機構相模原病院臨床研究センターでは,1976年の研究部発足以来アレルギー疾患,特に気管支喘息についてアレルギー学的視点から研究を行っている。会長講演「アレルギー疾患克服のための臨床的戦略――気管支喘息の診断,治療,管理の視点から」では,秋山氏が同施設での研究結果を中心に考察した。

 氏はまず,成人発症喘息の疫学からわかることとして,(1)小児発症成人喘息はほとんどがアトピー型である,(2)成人発症喘息は半数以上が非アトピー型喘息であるが高齢発症喘息にもアトピー型喘息が少なからず見られる,(3)成人再発喘息には2型(小児発症喘息優位型,成人発症喘息優位型)があること,を提示。これらから,「喘息としての表現型は同じでも小児発症喘息と成人発症喘息では発症機序などが異なるのではないか」「アトピー素因と気道過敏性素因は,近接するも異なった因子ではないか」と分析した。

 その後は,気道過敏性試験と環境アレルゲンモニタリングの有用性について,データを示しながら概説。特に,環境アレルゲンモニタリングについては「現在やや軽視されている」と指摘して,アレルギー疾患の治療・管理の基本は環境整備であることを強調した。また,簡便な環境中ダニアレルゲン量測定法の中では,テープ法による寝具表面,皮膚表面からの資料採取法が有用であることを紹介した。

 最後に,アレルギー疾患克服のための臨床的戦略においては,的確な診断や多角的な治療と管理法の選択はもとより,「患者-医療者間だけなく,家族や同僚,一般社会との相互理解のうえに立ったパートナーシップが重要である」と強調してまとめの言葉とした。

薬剤アレルギーにどう対応するか

 近年,薬剤の総数は増加の一途をたどっており,薬剤投与に伴う有害事象について報道される機会も多くなっている。このような中,薬剤アレルギーについての知識は,アレルギー専門医はもちろん,あらゆる分野の医師に必要なものと認識されつつある。会場が満員になるほど参加者の大きな関心を集めた教育講演「薬剤アレルギー」では,山口正雄氏(東大)が薬剤アレルギー全般についてのレビューを行った。

 氏はまず,薬物アレルギーの発症に関与するリスクファクターとして,(1)薬物の薬理・化学作用や,投与量,投与頻度,投与期間といった,薬物側の因子,(2)アジュバント,ウイルス感染,併用薬物といった免疫補助因子,(3)HIV感染やシェーグレン症候群,喘息,嚢胞性線維症などの基礎疾患や,薬物アレルギーの既往といった因子,(4)HLA genotype,Acetylator phenotype,アトピー,多種薬物アレルギー症候群,マスト細胞・好塩基球releasabilityといったアレルギーに関連する体質的因子のそれぞれをあげた。

 そのうえで氏は,主なアレルギー性薬物反応として,全身性の反応としてはアナフィラキシーや血管炎,皮膚・粘膜には固定疹や汎発型紅斑,血液・造血器では汎血球減少,溶血性貧血などの症状を提示。これらの症状はほとんどが他の原因でも生じうるが,固定薬疹だけは薬物が唯一の原因であると指摘した。

 また,特にアナフィラキシーについては,鑑別診断として,迷走神経反射,低血糖発作,遺伝性血管性浮腫,不整脈発作,心筋梗塞,肺梗塞をあげ,特に迷走神経反射との鑑別に注意する必要があるとし,起こってしまった場合の救急処置法としては,最初の5分間で(1)気道の確保,(2)血圧の維持,(3)ボスミン皮下注の3つのステップを行うことと紹介した。

 薬剤アレルギーの診断については,大変な作業ではあるが正確な病歴聴取と薬剤アレルギーの可能性を念頭におくことが最も重要とし,(1)薬剤投与後に症状が出現したか,(2)投与中止で症状が改善したか,(3)再投与された場合,同じ症状が出現したか,の3点から,妥当な時間的関連があるかを注意して見るべきと説明。検査については,即時型アレルギー症状に対しては皮内反応やプリックテスト,スクラッチテストといった即時型の検査を,遅延型の症状に対してはパッチテストなどの遅延型の検査を,緊急対応ができる状況下で行うことが大切であると述べた。さらに原則としては,薬物アレルギー症状に対しては,原因薬物中止と,対症療法を行うことを強調した。