第2611号 2004年11月29日


第1回日本質的心理学会開催


 さる9月11日,第1回日本質的心理学会が,京都大学(京都市)において開催された。当初予定の数倍の500名を超える参加者が来場,同学会への期待の高さが感じられた。

研究手法とフィードバックの「語法」を議論

 日本質的心理学会は,基本的に心理学研究者が中心の学会といえるが,医療・看護領域は質的心理研究のフィールドとしてはポピュラーであり,医師・看護師ら医療職・医学研究者の参加も少なくなかった。シンポジウム2「質的研究はいかに『科学的』たりえるか?-医療・看護領域の研究に学ぶ」では,医師の斉藤清二氏(富山大保健管理センター),看護職の西村ユミ氏(静岡県立大)らが登壇し,自らのフィールドでの質的研究の成果と,方法論に関する提言を行った。

 斉藤氏は数百年にわたる科学史を概観し,医学研究がこれまできわめて限定的な自然科学の方法論をもとに発展してきたことを指摘した。また,西村氏は臨床研究における方法論の選択について,「まず方法論ありき」ではなく,追求したい現象があってはじめて,適切な方法論を模索することができるのではないかと述べた。

 同シンポジウムはその後,2人の指定討論者の発議を受けてのディスカッションとなった。1人目の指定討論者である川野健治氏(国立精神・神経センター精神保健研究所)は,研究方法を精緻化していくことと,使いやすい理論を作るということは次元が違う問題であると述べ,むしろ現場にフィードバックしていく際にどのような書き方を選択するかが質的研究における大きな課題ではないかと述べた。

 また,2人目の西條剛央氏(国立精神・神経センター精神保健研究所)は,質的研究では,さまざまな理論が同時に並び立つ「多元性」が確保されることが重要であり,そのためには,それらの理論が成立している条件を開示していくことが必要ではないかと提起した。今後の学術集会開催予定等はホームページ参照のこと。

日本質的心理学会ホームページ
 URL:http://quality.kinjo-u.ac.jp/

<第1回質的心理学会プログラム>

大会シンポジウム「質的研究の方法論-KJ法とグラウンデッド・セオリー」
 能智正博(東京女子大),水野節夫(法政大),戈木クレイグヒル滋子(都立保健科学大)川喜田二郎(川喜田研究所・東京工大名誉教授),やまだようこ(京大大学院)
シンポジウム1「他者との出会い 教育のフィールド-出会いを記録する」
 秋田喜代美(東大大学院),鯨岡峻(京大大学院),佐藤公治(北大大学院),箕浦康子(お茶の水女子大開発途上国女子教育協力センター)
シンポジウム2「質的研究はいかに『科学的』たりえるか?-医療・看護領域の研究に学ぶ」
 松嶋秀明(滋賀県立大)・西條剛央(国立精神・神経センター),荒川歩(立命館大),斉藤清二(富山大保健管理センター),西村ユミ(静岡県立大),香川秀太(筑波大),川野健治(国立精神・神経センター精神保健研究所)
対談「倫理的実践としてのフィールド研究」
 樫田美雄(徳島大)×杉万俊夫(京大大学院)
 ワークショップ「福祉と医療における質的研究の生成プロセス-若手研究者が語るデータ・プレゼンテーションの工夫」ほか