近年,結婚したカップルの10組に1組は妊娠が困難とも言われており,ART(Assisted Reproductive Technology)に代表される不妊治療を望む患者は多い。しかしその一方で,十分なインフォームド・コンセントやサポート体制が整っていないとの指摘もされており,1998年に日本不妊カウンセリング学会によって同講座が開催された。受講者は認定試験に合格した後,不妊治療を行う医療施設で患者のサポートを行う。
15回目となる今回も500名を超える参加者が集まり,関心の高さをうかがわせた。
不妊治療の普及とともにARTを行う医療施設の数は増加しているが,患者が医療施設を選ぶ際の指標となる治療成績については統一された基準がなく,妊娠率や分娩率など,各施設において公表するデータが異なっている。こうした背景から荒木重雄氏(国際医療技術研究所)は「ARTの成績の正しい読み方とその根拠」と題し,何をもってARTの成功とするべきかについて講演を行った。
氏は最初に,「妊娠したとしても流産に陥ればそれは成功とは言えず,多胎妊娠で子どもに重篤な障害が発生した場合も成功とは言えないかもしれない」と指摘。不妊のカップルが求めているのは健康なわが子を得ることであり,ARTにおいては,少なくとも生産分娩率が一応の成功の指標となることを述べた。
しかしこの生産分娩率も,母集団をどう定義するかという問題があり,母数を採卵,あるいは胚移植にするかで,生産分娩率は大きく異なる。数値によって個々の施設が評価されることもあり,現状では統計上最もよく見える数値が使われる傾向にある。
氏は「不妊治療においては患者の経済的・身体的負担も考慮する必要がある」としたうえで,卵巣刺激が開始された周期の中で何周期が生産分娩に至ったかという,刺激開始周期あたりの生産分娩率を公表することが,患者や医療者にとって最も有益な情報になるのではないか,と提言した。
氏は3胎の場合,妊娠38週以上での胎児死亡率は1.3%(単体の場合約0.06%),脳性麻痺の発生頻度も単胎では0.15%であるのに対し,3胎では8%,4胎では43%にものぼることを指摘。ARTに際しては,あらかじめ双胎や3胎のリスクに関して適切なカウンセリングを行う必要があることを強調し,また,何らかの法的規制やガイドラインによって移植胚数の制限など,多胎妊娠を回避する方針を定めるべきとの考えを示した。
氏は,診療時の注意点として,淋菌感染の20-30%においてクラミジア感染を合併していることから,診療の際は淋菌とクラミジア両方の検査を行う必要性があると指摘。感染女性の多くは明確な症状がない場合も多いため,感染リスクが高い受信者には積極的に検査を行うべきとした。
また,最近では性器だけでなく咽頭からも検出される傾向が高くなっており,これらを見逃さないよう注意を促した。
現在,医療先進国の中で性感染症やHIVの感染者が増加しているのは日本のみであり,国際的な批判の対象にもなっている。
氏は特に性感染症の患者が10-20代の層において増加していることからも,予防教育の重要性を強調。「HIVを含めた性感染症の管理には,スクリーニングの拡大と予防教育の強化が重要である」と述べて講演をしめくくった。