第2610号 2004年11月22日


C型慢性肝炎の病態とその治療・看護

第30回日本看護研究学会ランチョンセミナーより

<講 演>熊田博光氏 (虎の門病院副院長)
<司 会>寺崎明美氏 (長崎大学医学部保健学科教授)
<質問者>木村敬子氏 (東京大学医学部附属病院看護部)
 菱田真季氏 (NTT東日本関東病院看護部)


 第30回日本看護研究学会会期中の7月29日,会場のさいたま市の大宮ソニックシティにおいて,昨年に続きランチョンセミナー「C型慢性肝炎の病態とその治療・看護」が実施された。肝炎患者数の増加,また看護師の職業感染防止の観点からも,このテーマへの関心は高く,約300名の聴衆が熱心に耳を傾けた。

 セミナーはまず,熊田博光氏(虎の門病院副院長)よりC型慢性肝炎および肝癌をテーマに特別講演が行われた。続く座談会は,寺崎明美氏(長崎大学)を司会に,2名の看護師から日常の看護業務で抱えている問題点の提示があり,熊田氏から回答をいただく形式で進められた。

 本号ではこの模様をレポートする。なお,本ランチョンセミナーは第30回日本看護研究学会,中外製薬(株),医学書院の共催で行われた。

■第1部「C型慢性肝炎から肝癌まで-病態と治療-」

熊田 1983年に亡くなられた日本医師会の武見太郎元会長が「肝臓病は20世紀の国民病である」といわれました。その言葉は現実のものとなり,21世紀を迎えた現在,がんの部位別死亡率において,肝癌は男性で第3位,女性でも第5位にまで増加しており,このペースで2010年まで増加し続けるとの予測がなされています。

 厚生労働省は平成14年度から,総額600億円の対策予算を講じ,40歳以上のすべての成人にB型,C型肝炎の検査を実施しています。一方,新しい治療法も発見されており,これらの新しい治療法をいかに上手に使って肝癌を減少させていくか,が大きな課題となっています。

 肝癌は肝硬変が原因となります。その肝硬変の原因ですが,90%は肝炎ウイルスによるものです。一般的にアルコールが原因と思われがちですが,日本では極めて少ないのが現状です。慢性肝炎の患者数は150万人程度と推定されており,そのうちC型肝炎が7割,B型肝炎が2割,などとなっています。本日は,患者数の最も多いC型肝炎から肝癌までの基本的病態と治療についてお話しいたします。

C型肝炎の現状と問題点

 推定150万人の肝炎患者のうち,治療中の患者数は50万人に留まっており,100万人のキャリアが潜在しているといわれています。昨年1年間で,新たにC型肝炎と診断された患者数は約4万人で,多くは40歳健診で発見された方々です。また発見時には既に肝硬変,肝細胞癌に進行している症例も多くみられます。それから日本では肝炎患者の高齢化が進んでいるということも大きな問題です。早期発見,早期治療が求められています。

C型肝炎ウイルスマーカー 陽性・陰性の意味

 最近,検診などで発見された患者さんが「C型肝炎だといわれてしまった」と,とても驚いて来院されることが多くなっています。検診などではHCV抗体検査を行いますが,この検査が陽性でも,それがC型肝炎を発症しているということではありません。この検査では,感染している方も,過去に感染していたが治癒した方も陽性反応となります。現在C型肝炎に感染しているかどうかは,HCV-RNA検査で確認できます。このHCV-RNA検査で陽性反応の方が現在,肝炎に感染している患者さんです。HCV-RNAが陰性の方は,既に肝炎ウイルスは死滅して体内には残存していないのですが,このあたりの情報が正しく理解されていない状況があるようです。

現在,C型肝炎ウイルスの遺伝子型は28種類

 その昔,C型肝炎は「黄色い血」と言われました。戦後,輸血をしてしばらくするとウイルスに感染したことによると思われる黄疸が出たためです。長い間,原因不明でしたが,これはウイルスの数が少なかったために検出することができなかったのです。1988年にC型肝炎が発見されましたが,この時に発見されたのはウイルスそのものではなく,C型肝炎の遺伝子,アミノ酸の配列でした。約5000の遺伝子がザーッと並んでいるのが見つかったのです。

 虎の門病院に来られた患者さんのC型肝炎ウイルスの遺伝子型をすべて解析したところ,その配列にある一定の傾向を見出すことができました。図1のいちばん上にあるのはアメリカの患者のウイルスの遺伝子配列で,その下はすべて日本の患者さんのものです。配列が日本とアメリカで明らかに異なることが読み取れます。

 現在,C型肝炎ウイルスの遺伝子型は世界で28種類が発見されています。地域によってサンプル数にばらつきがありますが,1bは世界中で発見されているタイプです。他には,1aのほとんどはアメリカ,2a,2bは日本に多く,3a,3bはタイ,それ以外に3cになるとインド,d,eはネパールに多くみられます。そして,5,6になりますと,イラン,イラクでみられます。また日本国内での検出頻度ですが,虎の門病院のデータ(表1)では,1bが全体の68.4%,2aが19.2%,2bが8.0%で,この3種類がほとんどとなっており国内の平均データともほぼ合致しています。

表1 C型肝炎ウイルス遺伝子型の検出頻度
1082例(98.4%)
遺伝子型 サンプル数(%)
1a
1b
2a
2b
3a
3b
1a + 1b
1a + 2a
1b + 2b
1b + 3b
2a + 2b
3 (0.3)
753 (68.4)
211 (19.2)
88 (8.0)
1 (0.1)
6 (0.5)
1 (0.1)
12 (1.1)
4 (0.4)
1 (0.1)
2 (0.2)
18 (1.6)
合計
1100 (100.0)

 かつて,言語学者の金田一京助先生が,日本民族は2つの民族で成り立っているということを証明されていますが,C型肝炎のウイルスも先祖代々,脈々と日本の中で生き延びてきました。モンゴルから中国を通って,朝鮮半島を渡ってきた北方型の民族に多いのが1bタイプです。またベトナムあたりから,台湾,沖縄と上がってきた南方型の民族にみられるのが2a,2bタイプです。かつて日本人が短命だった頃はこのような肝炎ウイルスの遺伝子型の解析は日本の医療とあまり関係がありませんでした。肝癌にかかる前に人々は亡くなっていたからです。ところが,医学の進歩に伴い世界一の長寿国となった現在,肝癌で亡くなる方が多くなりました。戦後,「黄色い血」といわれた輸血,予防接種などの医療行為によって,肝炎ウイルスの感染が広がり,いままさにピークを迎えようとしているのです。

C型慢性肝炎からの進展

 次に自然経過ですが,ウイルスに感染しますと最初は急性肝炎を起こします。このうち3割の方は自然に治癒します。しかし7割の方は治癒せず,慢性化してしまいます。肝炎ウイルスの持続感染が継続し,20-30年を経て肝硬変に進展,さらに肝癌を発症していきます。

 C型肝炎の方が,どの程度の頻度で肝癌を発症するか,1963-77年にかけて虎の門病院に入院していた患者さん464人を対象に調査を行いました。その後30年経過していますが,352例は経過の追跡を継続しています。このうち慢性肝炎のまま生存されている方が50.6%,残りの23.9%が肝硬変,肝癌が14.5%,そして他の疾患で亡くなった方が11.1%という結果でした。この調査により,慢性肝炎で肝硬変・肝癌を発症しない方は半数に止まるということがわかってきました。これは大きな問題です。

 この352例のAST,ALT数値と病理学的進行度の関係を調査しますと(表2),ALTが常に50IU/L以下の患者さんには悪化例はお一人もいません。一方,正常上限の4倍以上の方,つまり200IU/Lを超えるような症例では,28人全例が悪化してしまいました。つまり,10年前に軽度の慢性肝炎だった方は中等度に,中等度だった方は高度に,と進行しております。

表2 自然経過例(10年以上)におけるトランスアミナーゼの平均値と病理学的進行度との関係
  病理学的進行度
平均トランス
アミナーゼ(ALT)〈IU/L〉
改 善 不 変 悪 化
≦50
(正常値)
2/11
(18%)
9/11
(82%)
0/11
(0%)
50< ≦100
(正常上限の2倍以下)
0/20
(0%)
8/20
(40%)
12/20
(60%)
100< ≦200
(正常上限の4倍以下)
0/26
(0%)
3/26
(12%)
23/26
(89%)
200≦
(正常上限の4倍以上)
0/28
(0%)
0/28
(0%)
28/28
(100%)
  *P=0.005







┃*



 C型慢性肝炎でインターフェロン(以下,IFN)未施行の患者さんが,15年経過した場合にどの程度の割合で肝癌を発症するかをみてみますと(図2),軽度の慢性肝炎の方で15年経過すると12%程度の方が肝癌を発症します。しかし,一度肝硬変に進行してしまった方は,15年経過すると68%の方が肝癌を発症します。このことから,肝炎が肝硬変に進行してしまうと,まず癌を発症するものと考えるべきです。

主な治療薬

 現在の主な治療薬ですが,抗ウイルス剤であるIFN,リバビリン,それからウイルスは排除しないが肝炎を鎮静化させるグリチルリチン製剤,ウルソオキシコール酸,この4種類がメインの製剤となっています。

 1992年の2月28日に,日本で初めてIFNがC型肝炎の治療に使われました。12年が経過した現在,IFN治療を行っていない方の3割程度が肝癌を発症していますが,行った方の発症率は17%に留まっています。IFN治療を行った患者の肝癌の発症率は,肝炎ウイルスに対するIFN治療が奏効しなかった方も含めますと,未施行例の半分程度に抑制されています(図3)。このデータが発表されて,IFN治療は仮に完全にウイルスが排除されなくても行うべきだという流れができました。

 実際に,IFN治療を行った患者さんをみてみますと,ウイルスが完全に排除された症例からの肝癌の発症はほとんどありません。一方,IFN治療を行ったもののウイルスが排除されなかった方は,最初の5年間の経過は良好ですが,その後,元に戻ってしまうということがわかっています。ですから,IFNは1回で効果が出ないことで諦めるのではなく,治らなかった方は継続して再治療する必要があると言われています。

IFN単独療法-長期予後の検証

 虎の門病院では,IFN治療後10年間における肝癌の発症率について長期予後調査を行いました。1992年の保険適用前にも治験として454例のIFN療法を行っていましたので,フォローアップは,最長16年になっています。454例中,420人の患者さんを現在もフォローしています(表3)。

表3 肝癌の発症率についての長期予後調査対象
1987-92年までにIFNを開始した454症例
性別 男性:女性 322例:132例
年齢(中央値) 15-70歳(49歳)
肝組織像 F1:260例,
F2:160例,
F3:34例
ウイルス量(中央値) <0.2-57.0Meq/ml(2.6Meq/ml)
IFN開始後11年以上follow up率
              420/454例(92.6%)
観察期間(平均観察期間) 11.0-16.3年(12.2年)
死亡例を除く

 まず,1回のIFN治療での著効例群が152人(Group A),1度IFN治療を行ったが,副作用の出現等を理由に中断,継続治療を行わなかった群が130人(Group B),172人は,1度行って効果がみられなかったが,繰り返しIFN治療を行った群(Group C)です。この3群で比較してみますと,Group Aでは,15年経過しても発癌はほとんどみられません。ところが,Group Bでは10年で26%,15年で50%の方が肝癌を発症しています。一方,IFN治療を継続したGroup Cでは9%の発症率となっており,有意差を認めました(図4)。

 生存率についてもGroup Aでは,もちろん予後は良好です。Group Cでも15年経過後も90%以上の方が生存しています。ところが,1回で諦めたGroup Bでは,15年経過すると生存率が75%まで減少しています。このデータから肝炎が治癒しなくても,IFN複数回治療を行うことで発癌抑制効果があるという結論が導き出されました。

実際の治療状況

 一方で「治るに越したことはない,治せるものは治したい」という考え方も当然存在します。日本では先ほど申し上げたように,北方型の1bと,南方型の2a,2bというウイルスがあります。当院でIFN単独療法を6か月間行った方のウイルス量別著効率をみますと,2a・高ウイルス量では40.5%が治癒しています。一方,日本人に多いウイルスタイプの1b・高ウイルス患者への治療効果は3.9%と低率に留まっていました。同じIFNで治療を行っても,ウイルスタイプ間で効果に有意差が出現してしまいました(表4)。

表4 C型慢性肝炎に対するIFN単独療法の遺伝子型別およびウイルス量別著効率
  遺伝子型
ウイルス量 1b 2a 2b
100kcopy/ml以上 54/1374(3.9%) 152/375(40.5%) 80/198(40.4%)
100kcopy/ml未満 261/493(52.9%) 227/310(73.2%) 77/147(52.3%)
(IFN総治療数2897)

 そこで,1b・高ウイルス量症例に効果がみられる治療法ということで,IFNと併用するリバビリン製剤が,2001年12月7日に発売されました。また,主に2型(特に2a)に対し,週1回の投与回数で効果がみられることから,患者さんのQOLを大きく向上させた製剤,ペグインターフェロンα-2a(以下,ペグIFNα-2a)が2003年の12月12日に発売になりました。さらに今後は欧米では標準的な治療法となっているペグインターフェロン(以下,ペグIFN)とリバビリンの併用療法が承認の予定で,高い治療効果が期待されています。

虎の門病院におけるペグIFNの使用経験

 週1回の皮下注射で治療効果がみられるペグIFNα-2aは,比較的,副作用が少ないこともあり,急速に使用患者が増加しています。この製剤について(1)通常の180μgを週1回,1年間投与した群,(2)半分量の90μgを週1回,1年間投与した群,(3)IFNα-2a9MIUを2週間毎日投与した後に半年間週3回投与した群,以上3群の比較研究が行われました。

 虎の門病院では,現在のところペグIFNα-2aを43例に使用しており,若い方から高齢者にまで幅広く使用しております。

 各タイプのウイルス量別の累計で効果を比較しますと(図5),1b・高ウイルス量に関しては,この治療効果は良好ではないと言わざるを得ません。しかし2a,2bに関しては,高ウイルス量の症例であっても,ペグIFNα-2aを1年間投与すると76%の方でウイルスが消失しました。

 さらに,将来的には48週間のペグIFNとリバビリンの併用療法となります。これは週1回のペグIFNとリバビリンとの併用です。患者さんの負担は圧倒的に少なくなるわけですから,同様の効果が得られるならば,欧米同様,この療法がスタンダードになっていくものと思われます。

高齢化が進む肝炎患者

 一方,リバビリンには貧血という副作用がありまして,これに老人が耐え得るだろうかという問題もあります。1977-99年までに,虎の門病院の肝臓専門外来におけるC型肝炎の患者数は8780名ですが,そのうち65歳以上の高齢者が1/4を占めています。現在,C型肝炎の患者は50代,60代がピークになっており今後ますます高齢の患者が増加することが想定されます。

 初診時60歳以上の患者さんの粗肝細胞癌の発生率を調査したところ(図6),慢性肝炎のF1,つまり軽度の患者さんでも約5人に1人が慢性肝炎から肝癌を発症します。そして,中等度以上の方になりますと10年,15年で38%もの方が肝癌を発症します。60歳スタートで15年というと75歳であります。日本の平均寿命は80歳を超えていますので,こうした患者さんは平均寿命まで生きられないということになってしまいます。

 60歳以上で慢性肝炎の中等度まで進行していると,性別に有意差はなく約4割の方が癌を発症しています。女性の場合,60歳で軽度の慢性肝炎の方ですと男性ほど癌の発症の可能性は高くありませんが,ある程度進行すると,やはり女性にも癌が出現します。現在,肝癌の男性患者は60歳代が多いのですが,女性では70歳代が多くなっています。

IFN長期少量療法

 このような患者さんに対しては,発癌を防止するという予防的観点での治療も重要になってきます。それがIFNの長期少量療法です。

 もともとIFNというのは制癌剤で,途中で肝炎に効果があるということが発見されました。このIFNを肝癌予防のために1994年から使用しています。肝炎の段階から使用していると制癌効果があることが認められています。

 そこでIFNで治癒されなかった40歳以上,慢性肝炎の中等度から高度(F2,F3)で進行している患者さんを対象に,肝発癌抑制をめざした2年以上のIFN継続投与の効果を調査しました(図7)。保険適用の6か月間,IFNを投与したもののウイルスが陽性のままであった患者さんをそれぞれの意思に基づき,投与中止群(84例)と,2年以上の継続投与群(53例)の2群に分けて比較したところ,継続投与群は5年,10年経過しても,3%程度の癌の発症率でしたが,中止群では,10年後には約25%の患者に発癌がみられました。

 このデータが,3年前に発表された後,厚労省はIFN投与期間の制限を撤廃しました。これによりIFNの長期少量投与が一般的な治療法となりました。そして,週1回投与で治療効果が得られるペグIFNα-2aの発売により,この治療法はさらに導入しやすくなっています。

IFNを使用した治療の目的

 現在,肝臓専門医は,C型慢性肝炎の治療において2つの目的を掲げています。1つは治癒目的の治療です。これには当然,大量のIFNを使用しますし,さらにリバビリンの併用や,ペグIFNの長期投与など,さまざまな用法があります。この治療法の維持のためには,安全性も確保しなければなりません。実は,IFNを使ってウイルスが消失し,肝炎が治癒するということは大変に大きな意味を持っています。糖尿病の薬を使用しても,今のところ糖尿病が治癒するわけではありませんし,高血圧薬でも,長期間服用し続けても治癒するわけではないのですから。

 もう1つは肝細胞癌予防目的の治療です。肝癌の予防のために,糖尿病のインスリンのように,IFNを長期に投与します。IFN治療においては,慢性肝炎から肝硬変への進展を防ぐことが理想ですが,肝癌の発症を予防することも重要です。現在,治験が実際に行われて,肝硬変に対してIFNを使用すると肝癌が減少するというデータが得られています。さらには,既に肝癌を発症してしまった患者さんに対しても,根治療法を行った後,再発予防の手段としてIFNの使用が考えられると思われます。

 このようにIFN治療は慢性肝炎,肝硬変,発癌後の各段階の患者さんの発癌抑制に寄与するのです。

IFN投与後に予想される副作用

 次に副作用についてですが,IFNによる副作用は250程度の症状があります。まず怖いのは間質性肺炎です。IFNをある種の漢方薬と併用しますと,突然,呼吸困難が起こり死に至ることがあります。次にはうつ病,自殺企図,不眠・不安です。また,糖尿病が悪化する患者さんや,自己免疫現象といいまして甲状腺機能が悪化する方,SLEの悪化,潰瘍性大腸炎になる方がいます。また,IFNの投与により肝機能が悪化する方もいらっしゃいます。

 この多種多様な副作用を患者さんに説明しなければならないのですが,十分すぎる説明を受けて治療を受容できなくなる方と,理解して受容される方に分かれます。医師は,患者さんのパーソナリティーに応じて,その対応を考えなければいけないと感じています。

IFN投与中の留意点

 また看護師の皆さんに留意していただきたい主なポイントですが(表5),まずは発熱とインフルエンザ様の悪寒などの症状です。IFNを投与すると風邪を引いたような状態になると言われますが,風邪の場合はウイルスに対抗するために体内からIFNが放出され,発熱します。IFN自体が発熱の原因ではありません。同じ理由で,IFN投与時に発熱がみられるのですが,これには解熱剤の投与で対応します。

表5 IFN治療中の留意点
主な副作用 症状と発現時期 対応と経過





発熱
インフルエンザ
様症状
(通常,発熱は投与6時間以内にみられ,その後4-8時間以内に解熱)
発熱 悪寒 頭痛 倦怠感 食欲不振
・発熱に対しては解熱剤の投与。
血球減少 白血球および血小板の減少
(一般に投与開始から1週間以内)
・投与中止,または3日以上の間歇投与で,比較的速やかに改善。
脱毛 (投与開始2か月後頃から)
※インターフェロンα製剤に多い。
薄毛・脱毛症状
・一般的に投与終了後1-3か月で回復。


精神神経症状 抑うつ症状 ・速やかに中止する。
蛋白尿 (一般に投与開始から1週間以内)
※インターフェロンβ製剤に多い。
・投与中止で速やかに消失。

 それから,白血球や血小板が減少します。特に,投与開始1週間以内は気をつける必要がありますから,導入初期は入院で行うのが望ましいのです。また,減少が著しい場合は,投与を中止します。

 その他,IFNの種類によっては,脱毛がみられる場合もあります。特に,α製剤に多くみられます。それからβ製剤に多いのは,蛋白尿です。主なものは以上ですが,他の副作用にも注意が必要です。

今後の肝疾患治療がめざす方向

 平成15年度から厚労省の肝炎等克服緊急対策研究事業(肝炎分野)において「C型肝炎およびB型肝炎ウイルスの感染者に対する治療の標準化に関する臨床的研究」の研究組織を立ち上げました。全国の先生にご協力いただきながら,C型肝炎の早期発見,早期治療に努めております。最終的には2010年までに肝癌を下降傾向に転換する,という目標を掲げております。この実現のためには,肝臓は沈黙の臓器ですから,定期健診が欠かせません。

 現在,虎の門病院にはC型が9000人,B型が4000人,トータル1万3000人程度の肝炎の患者さんがいらっしゃいます。このデータを中央で一元管理しております。また,免疫系,遺伝子の研究などを研究室で手がけております。

 IFN療法はひとつ間違うと大きな事故につながりますから,安全性に対する十分な考慮が求められています。そういった意味で,医師・看護師・臨床検査技師・薬剤師,あらゆる職種のチームワークが求められる疾患,治療法ではないかと思います。ご清聴ありがとうございました。

■第2部「専門医に聞く日常看護の注意点・問題点」

司会(寺崎) では,東大病院の木村さんからお願いいたします。

医療職に求められる正しい情報提供

木村 現在,病棟には,IFN導入初期の患者さんが多く入院されています。導入初期の主な副作用である発熱は,比較的軽症の患者さんが多く,病棟勤務の看護師としてはあまり深く関わることができないケースも多いのですが,一方,患者さんから退院後の日常生活に関する質問をされることがしばしばありまして,勉強をしたいと感じていました。また,肝炎イコール肝癌と捉えてしまう患者さんが大変多くいらっしゃいます。これは,ご本人だけの問題ではなく,社会全体がそう捉えてしまっている現状がありますので,今後,私たち看護師も含めた医療職,医療機関に正しい情報提供が求められていると思います。

 それでは質問に移りますが,まず食生活についてです。どのようなことに注意する必要がありますか。一人暮らしの方からは「家で作らずにお弁当を買って帰ることが多いけれども,問題はないか」というようなことも聞かれます。それから最近かなり宣伝されている「癌に効く」「肝臓に効く」などというサプリメントを飲んでもよいのか,という質問をよく受けますがいかがでしょうか。

熊田 退院後の生活についてですが,慢性肝炎の患者さんには,バランスがとれた普通の生活なら何をしても構わないと指導しています。治療法がなかった時代にはとにかく安静と言われていましたが,現在では脂肪肝をつくらないよう,食事はもちろんのことバランスの取れた生活を送ることが重要です。

 それから,健康食品についてですが,これは健康食品という名であって薬ではないのですね。効果が証明されていないのが健康食品です。副作用が確定されていないことも念頭に置かなくてはなりません。サプリメントに関しては,ある程度アメリカでの証明はされていますが,日本では証明されていません。数年前には「痩せ薬」による劇症肝炎で何人も亡くなりました。私自身は勧めはしませんが,薬によっては大変な肝障害を引き起こすこともあるということを説明して,患者さんが納得の上で飲まれるのは仕方がないと思います。

退院後に出現した副作用への対応は?

木村 次に,退院後にIFNによる副作用が出現してしまった際の対応についてお聞きしたいと思います。患者さんによっては我慢してしまう方もいらっしゃって,どの程度の自覚症状で受診をしたらよいかという説明に迷いがありますので,教えていただきたいと思います。

熊田 虎の門病院では,まずIFNをその患者さんに投与するか,しないかという判断をします。主治医,次に病棟責任者,外来,看護師がどう思うか,そして最終責任者である私が判断をします。この5人のうち1人でも反対した場合は,IFNの投与は行いません。「当面は導入を見送って,経過をみましょう」というかたちをとります。またIFNによる副作用で取り返しがつかなくなることもありますので,退院時には必ずご家族を交えて,説明をします。その後に看護師が,退院後の指導をして退院されていきます。

 IFN投与後に起こる,さまざまな自覚症状が軽減されたのがペグIFNα-2aです。ペグIFNα-2aは特に投与初期の副作用が少ないため,患者さんに喜ばれていますし,使用頻度が伸びている理由だと思います。投与中期・後期に出現する副作用で,最も注意しなくてはならないのは,うつです。うつになると,患者さんが閉じこもってしまいます。特に一人暮らしの方に,IFNを投与する場合は,ご家族に事前に説明をする必要があります。

 また,患者さんには「些細なことでもよいので,何でも教えてください」とお話ししておいたほうが安全だと思います。虎の門病院では,退院後に副作用が起こってしまった際,原則的に外来医に電話をするよう指導しています。夜間の場合は,退院した病棟の看護師に電話をかけていただきます。そして看護師から,医師の自宅に電話をしてもらうという流れになっています。こういった態勢でフォローすることで,大きな問題が起きずに患者さんが過ごされていると思います。

ペグIFNα-2aの投与期間が開いてしまった時

木村 ペグIFNα-2aについてですが,週1回の投与で済むため患者さんの負担が軽減されていますが,例えば通院を忘れることや,身体上の問題で投与期間が少し開いてしまうということが考えられます。そのあたりの対応を教えてください。

熊田 ペグIFNα-2aは持続性のIFNです。従来のIFNは,だいたい48時間で効果が消失しますので週3回の投与が必要になりますが,ペグIFNα-2aは1週間経過しても,まだIFNの効果が持続しています。ですから,1週間に1回の通院をつい忘れても焦る必要はありません。ペグIFNα-2aでは,好中球や血小板の減少がみられる場合もありますので,むしろ2週間に1回投与が適切という症例もあるのです。これまでのIFNは定期的な継続投与の必要性がありましたが,それがないという点で,非常に利点があります。逆に,副作用が出現してしまった際,IFNが抜けないという部分もあります。そのあたりも考慮しながら患者さんごとに判断していくということになります。

患者さん用のパンフレットに必要な情報は

寺崎 では,次にNTT東日本関東病院の菱田さん,よろしくお願いします。

菱田 私の病院では,C型肝炎の病態からIFNの治療,副作用について記載したパンフレットを作成して患者さんにお渡ししています。ただ,副作用について書きすぎてしまったのか,パンフレットは要らないと断る患者さんが多いのです。病棟では導入初期の2週間しか患者さんと顔を合わせる機会がないので,その後のフォローがうまくいくよう,患者さんに知っておいていただきたいこともたくさんあるのですが,先生は,最低限どの程度の説明が必要とお考えですか。

熊田 先ほどもお話ししましたが,患者さんごとにパーソナリティーが異なりますから,その部分を考慮する必要がありますね。主な副作用を記したものと,あらゆる副作用を詳述したもの,2種類のパンフレットを作成するのはいかがでしょうか。現在はインフォームドコンセントが重視されていますから,細かく知りたい患者さんには詳しいご説明をする必要があります。

糖尿病を併発した場合,IFNの再開は可能か

菱田 IFNの副作用で糖尿病を併発してしまった患者さんがいらっしゃいます。現在,糖尿病が悪化したためインスリン投与を行っており,IFNは一時中断になっていますが,再度,治療を受けたいという希望をお持ちです。虎の門病院では,このような患者さんに対して,どのような対応をしていらっしゃるのかを教えてください。

熊田 私も1例だけですが,重篤な糖尿病を併発した患者さんを経験したことがあります。1型糖尿病の患者さんとそれ以外の方では治療手段が異なります。1型の患者さんが悪化した場合には,インスリン投与も継続しながら治療していきます。しかし,糖尿病をお持ちでなかった方が突然発症したという場合は,やはりIFNを中止して,2回目のIFNに関しては「原則的に行わない」というかたちをとっています。ただ,「原則的に行わない」とは申しましても,治癒目的のIFNの投与は行わないということで,少量長期投与は行っております。

寺崎 熊田先生,C型肝炎の病態,最新の治療の現状について大変わかりやすいお話をありがとうございました。看護におけるこれからのC型肝炎を考えてみますと,治療法の進歩に伴い,高齢化が進んでいくという現実があります。できるだけ副作用の少ない,患者さんにやさしい治療法の選択が重要になってくるだろうと思いますので,インフォームドコンセントにおけるナースの役割も大変重要になってくるのではないでしょうか。

 また,ペグIFNα-2aの導入により,医師の診療時の週1回の与薬は,外来で行うことが基本となり,副作用の早期発見などにおいて外来看護の重要性が増しています。患者さんごとのセルフケアの適応に関しては,個別的な服薬に関するアドヒアランスやセルフ・エフィカシーを高めるような外来における援助も必要になってくると思います。本日はご清聴ありがとうございました。




熊田博光氏
1972年岐阜大学医学部卒業。同年虎の門病院病理科,77年同病院消化器科,86年同病院同科医長,89年同病院同科部長を経て,2004年より現職。日本肝臓学会理事,日本消化器病学会財団評議員。厚労省「C型肝炎およびB型肝炎ウイルスの感染者に対する治療の標準化に関する臨床的研究班」班長。専門はウイルス性肝炎・肝癌。主著に『ここまできた慢性肝炎の治療』(ソフトバンク),『肝臓病-健康な肝臓をとり戻す』(法研)など。