第2606号 2004年10月25日


「測定」に見る看護技術研究の現況

第3回日本看護技術学会開催


 第3回日本看護技術学会が,菱沼典子会長(聖路加看護大)のもと,さる10月9-10日の両日,東京・品川の東京コンファレンスセンター品川において開催された。

 今回はメインテーマ「実践に使える看護技術研究-何をいかに測るか」にそった5つのキーセッションが企画され,いろいろな測定用具で何を測っているのか,どのような原理に基づいて測っているのかについて,臨床現場の看護師と研究者が熱心な議論を展開した。初日は台風が直撃する悪天候の中での開催となったが,会場には多くの参加者が詰めかけ,会員の意識の高さをうかがわせた。


痛みを測る

 キーセッション「痛みをいかに測るか」(座長=岡山大 深井喜代子氏)では,実践に活用できる痛みの理解のために,さまざまな視点から「痛みの測定法」について議論された。まず座長の深井氏が,看護学教育の中で痛みが扱われることはほとんどないことを指摘し,看護者は生理学的にも痛みについての科学的根拠を知っておくことが大切と提言した。そのうえで痛みの生じる生理学的な仕組みについて概説。さらに,自身がはじめた看護職によるペインクリニックを紹介し,看護が痛みの分野にどう入っていくかという課題に言及した。

測定法のいろいろ

 痛みの測定法として,被験者の主観的現象を評価するVisual Analogue Scale(VAS)という方法がある。VASでは従来,紙面に描かれた長さ10cmの水平または垂直な直線(その一端をゼロ点,他端を限界点とする)上に被験者が垂線を記入する描記評価法が用いられる。新見明子氏はVASを用いた痛み評価研究に,描記評価法とともに,0-100までの数字を口頭で答える方法(数値評価法)を採用して実験を行い,痛みの評価ツールとしてのVASの信頼性は高く,特に数値評価法が有用であることを示した。

 横尾京子氏(広島大)は,痛みを言葉で表現できない新生児,特に早産児を対象に,顔面表情運動による痛みの測定法について発言。左右眼窩上縁・その中点・鼻根部の4点からなる多角形面積の変化率によって,定量的に痛みを測定できると述べ,これを臨床での日常観察や鎮痛法の客観的評価に利用できるとした。

 佐伯由香氏(福岡県立大)は,自律神経反応を視標とした痛みの評価について報告した。氏は,痛みの客観的評価としてスキンコンダクタンスレベルと皮膚血流量を測定し,一方で主観的評価法としてVASを採用して,電気刺激によって生じる痛みを評価する実験を行い,これらの結果に相関が見られたとし,このことから,「速い痛み」に対しては自律神経反応によって評価が可能であると結論した。また,刺激部位を温めると自律神経反応,VASのそれぞれの反応が大きくなり,芳香療法や音楽療法にくらべてcoolingによる緩和効果が大きいとする結果が得られたことから,痛みの種類によって評価方法・緩和方法を検討する必要があることが示唆されたとした。

 田中裕二氏(千葉大)は,痛み刺激によって大脳皮質に誘発される体性感覚誘発電位(somatosensory evoked potential=SEP)とVASを指標として冷罨法,温罨法,圧迫法の疼痛抑制効果を調査。結果,冷罨法による疼痛抑制効果は皮膚温の温度低下割合に比例して大きくなり,SEPとVASの評価に相関が見られたと報告した。一方で温罨法,圧迫法ではこれらの結果に明らかな相関は見られなかったとした。

 岡崎寿美子氏(北里大)は,痛みを表現する言葉からの痛みの評価について発言した。氏は,これらを踏まえながら「刺すような痛み」などのように,その表現法に工夫をしながら患者に聞いていくことによってより詳しく痛みを知ることができると指摘。言葉によって痛みの強度を測ることは可能であるとする一方で,鎮痛薬の効果を調べる時などはそれにあった方法を用いる必要があると述べた。

■セルフケア能力を測る

患者の「できる部分」を伸ばすために

 慢性疾患患者のケアにかかわる際,患者によるセルフケアを検討するにあたり焦点をしぼって対応していくために,患者自身の「セルフケア能力」を高める看護の重要性が指摘されている。キーセッション「セルフケア能力をいかに測るか」(座長=日赤看護大 本庄恵子氏)では,本庄氏が開発したセルフケア能力を測定するための質問紙であるSelf-care Agency Questionnaire(SCAQ)について報告された。

 SCAQは(1)健康管理法の獲得と継続,(2)体調の調整,(3)健康管理への関心,(4)有効な支援の獲得の4つのセルフケア能力の構成概念を29項目の質問によって測定する質問紙。基準点数はなく,構成要素によって点数の高い部分と低い部分とを見てその後の患者へのかかわりを決めていくために利用するというもの。

 本庄氏は,実践者と研究者との連携をより深め,さらに患者の生活に目を向けた援助に寄与していきたいとしている。