第2605号 2004年10月18日


英語で発信! 臨床症例提示 -今こそ世界の潮流に乗ろう-

Oral Case Presentation

[第8回] Realize thousands and millions of details.

齋藤中哉(ハワイ大学医学部医学教育部客員教諭)


第2601号より続く)

遠慮は無用

 英語圏において,私たち日本人は「遠慮の塊」です。異国の地での生存には,遠慮を克服したMindsetが多少なりとも必要であり,母語でない英語Communicationにおいては,次の3点が枢要です。

1)聞き取れなければ,聞き返します。理解できないという表情でExcuse me? あるいは,機会を逃さず素早くSay that again?

2)速すぎるならば,ゆっくり話すように促します。Could you speak slowly?

3)どうしても理解できなければ,筆談に持ち込みます。Can you spell the word?

率直さの効用

 しかし,お願いばかりでは,まるで無能者です。ひょっとして,あなたの聴解力が問題なのではなく,相手の発話に問題がある可能性はありませんか。もしそうだとしたら,必要なことは「すみません」の自己卑下ではなく,一刻も早くその事実を相手に伝達してあげることです。

1)You speak too fast and nobody follows you. I would suggest you could just slow down a little bit.

2)I don't understand your presentation fully because you often slur. Would you mind speaking more clearly?

 「遠慮」ではなく「率直さ」を,自信を持って積極的に選択していくことは,私たち日本人が不得手とする基本姿勢ですが,最初の一歩さえ踏み出せれば,コミュニケーションの道は,次々と開けていくでしょう。

■Contents Index[Labs]

First-line labs

 “Labs”とはlaboratory findings and imaging studyです。症例理解に必要であれば,どんな検査結果を含めても構いません。百千万の細部に気づく時,努力する勇気さえ失うかもしれません。しかし,labsで一歩差をつけるための秘訣は,血管造影,内視鏡,核医学検査などの高度な検査に翻弄されることなく,基本4検(血液,尿,レントゲン,心電図)を常にfirst-lineに据え,それらの英語表現に熟達することです。

検査結果に関する5原則

1)血液・尿などの検体検査結果は,完全文で述べるのではなく,項目と結果を次々に羅列していきます(text boxのstandard set of first-line investigations参照)。

2)自明な単位は,省略します。ただし,単位系が2つ以上ある検査項目については,単位を添えます。討論の場で,説明しても構いません。

3)正常値に言及する必要はありません。数値の直後に,low, normal, high, elevated, prolongedなどの形容詞を一語補います(例文2)。

4)画像情報は,言語的な描写に限界があるので,要点のみを簡潔に述べ,必要があれば,討論の場で,実物を供覧します。

5)検査結果を完全文で述べる際には,動詞reveal(例文4)とshow(例文5)が最も用いられます。

検査項目の順序

 Text boxの【Standard set of first-line investigations】を,音読してください。検査項目の順序は,CBC→coagulation studies→serum chemistries→urinalysis→ABG→chest film→ECGです。絶対的な順序ではありませんが,最も用いられている順序なので,考えなくてもすらすらと口をついて出てくるようにしてください。

 CBCはcomplete blood count(血算),ABGはarterial-blood gas(血ガス)です。PT,aPTTなどの検査はcoagulation studiesとして一括されます。INRはinternational normalized ratioの略です。Serum chemistriesに続いてUAと述べると,uric acidを連想させますので,口頭ではurinalysisをUAと略してはいけません。

 胸部レントゲンでは,肺野と心陰影の所見に気をとられがちですが,縦隔,大動脈,肺門部血管,リンパ節,脊椎,肋骨などの解剖学的構造への言及が必要な場合もあります(例文7)。

 心電図では,最初に調律と心拍数を述べた後,P,PQ,QRS,ST,Tの波形分析を続け,最後に,全誘導のパターンから導かれる所見を付け加えます(例文8)。

■Delivery Index[Posture & Gesture]

 話者の静的ないし動的な視覚像は,聴者の集中力に大きな影響を与えています。見苦しい,あるいは,不快な印象は,話の内容に対する関心まで削いでしまう可能性があります。

姿勢

 まっすぐに立ち,背筋をきちんと伸ばします。両脚は,肩幅程度に開き,両足に均等に重心を分散させ,しっかりと立ちます。両腕は,体側面で自然に垂れてもよいですが,体幹部の前面または後面で組んだほうが安定感を与えます。ただし,股間で両手を組むと,「無花果の葉」徴候と呼ばれ,防御的な姿勢と見なされる可能性があります。

身ぶり手ぶり

 身につけないといけないgestureは存在しません。自然に湧き上がってくるものでない限り,使わないほうが無難です。英語力に見合わない無理なgestureは,はすっぱな印象を与えるので,止めましょう。表に,避けたほうがよい四肢の位置や姿勢を掲げました。無意識に表出していることも多いので,仲間や指導医に点検してもらい,feedbackを受けましょう。

表1 四肢と姿勢に関する御法度
腕組みをする。
ズボン/白衣のポケットに手を入れる。
腰の脇に両手を構える。
頭を掻く。
髪を触る。
物をもてあそぶ。
貧乏ゆすりをする。
片脚に重心をかけて,姿勢を崩す。
左右交互に頻回に重心を移動する。
壁や演台に寄り掛かる。

♪間奏曲

 揺るぎない「自分になる」ための訓練法があります。まず,全身を映す鏡の前に立ち,ご自身の容姿に注意を集中します。次に,テキストを見ながらでもよいので,鏡の中の自分に,心を込めて精一杯,語りかけます。その自分をよく観察し,話し方に工夫を加えていきます。納得のいく自分になるまで,毎日続けます。いわゆる“dress rehearsal”です。百千万の細部に気づき,自在に操れるようになれば,1つひとつが個性として輝きはじめます。

■Text Box[Labsの提示に役立つテンプレート]

Standard set of first-line investigations
Labs are: CBC; white-cell 7800 with a normal differential count, hemoglobin 13.5, hematocrit 43, platelet, 228,000. PPT 30 seconds, normal and PT-INR 1.0. Serum chemistries; sodium 136, potassium 5.5, chloride 105, bicarbonate 24, BUN 25, creatinine 1.8, glucose 123, total protein 6.9, albumin 3.5. Total bilirubin, AST, ALT, alkaline phosphatase, and lactate dehydrogenase were normal. Cholesterol was 292. Urinalysis revealed 2+ protein, three to five nondysmorphic red cells per high-power field, and occasional hyaline casts. ABG with the patient breathing room air revealed pH 7.35, partial pressures; carbon dioxide 24 and oxygen 68. A chest radiograph showed cardiomegaly and mildly increased pulmonary vasculature. An electrocardiogram revealed sinus tachycardia at a rate of 108 with diffuse T-wave inversions and low voltage.

例文
1.MCV,網状赤血球,白血球分画に言及する場合
The patient's hematocrit 31, hemoglobin 10.7 with a mean corpuscular volume 85 and reticulocyte count 5.6%. White cell 22,400 with 88%segmented neutrophils, 3%band forms, 3%lymphocytes, 2%monocytes, and 4%eosinophils. Platelet 216,000.

2.正常からの逸脱を指摘する場合
His initial creatine kinase level 247, slightly elevated, with an MB fraction of 5.8, again slightly high; troponin was 0.0.

3.繰り返された検査に変動がない場合
Serial cardiac enzyme measurements remained normal.
Repeated tests of potassium level were normal.

4.尿定性を詳しく述べる
Urinalysis revealed specific gravity 1.030, pH 6.0, 4+ protein, no glucose, and 2+ blood. 2 to 5 white cells and 10 to 20 red cells per high-power field, few bacteria, two hyaline casts, and 4 to 5 granular cast. No eosinophils or red-cell casts.

5.尿定量を詳しく述べる
Urinalysis showed a protein level of 2,500mg/dl and a glucose level of 500 mg/dl. The creatinine clearance was 58 ml/min. Urinary protein excretion was 30 g per 24 hours.

6.ABG測定時の酸素投与条件
・100%酸素:while the patient was breathing 100%oxygen.
・フェイスマスク:with the patient breathing at 8 l/min. of oxygen by a face mask.
・鼻カニューラ:with the patient breathing at 3 l/min. of oxygen through a nasal cannula.

7.胸部レントゲン所見を詳しく述べる
The chest film obtained on admission showed a massive, right-sided pleural effusion, which appeared to be freely mobile in the lateral decubitus view. Cardiac and mediastinal silhouettes were normal. No fullness of the pulmonary hilar vessels, prominence of the ascending aorta, or lymphadenopathy. The left hemidiaphragm was elevated. Degenerative changes of the thoracic spine and calcification of carotid arteries were noted.

8.心電図所見を詳しく述べる
An ECG revealed a sinus rhythm at 68 bpm with normal intervals; 1mm of ST depression in leads V1 through V4, poor R-wave progression, and borderline voltage indicative of left ventricular hypertrophy. (bpm=beats per minute)

9.検査結果を一括して正常と述べる
Values for electrolytes, creatinine, BUN were normal, as were the results of coagulation studies, cardiac-enzyme measurements, and liver-function tests.

●「新」しい声を是非「聞」かせてください。
E-mail: nakaya@deardoctor.ac


【筆者略歴】
京大工学部修士課程終了。阪大医学部卒。東京医大八王子医療センター腎臓内科助手を経て現職。全米で唯一ハワイ大学医学部だけが持つFaculty Development Program「医学教育フェロー」を修了した最初の日本人として,同大学のカリキュラム開発(次世代Triple Jump & Clinical Reasoning)に従事。日本国内の医学部からも客員教授/教育顧問として招聘を受け活躍中。