第2604号 2004年10月11日


短期集中連載 【全5回】

DPC入門
Diagnosis Procedure Combination

第2回   DPCの構造

松田晋哉 (産業医科大学教授・公衆衛生学)


2603号よりつづく

 今回はDPCの構造について説明したいと思います。

疾病および関連保健問題の国際統計分類International Classification of Diseases and Related Health Problems(ICD)

 診断群分類を理解するためには疾病および関連保健問題の国際統計分類International Classification of Diseases and Related Health Problems(以下ICD)について知っておく必要があります。ICDは世界保健機関(WHO)が,世界保健機関憲章に基づき作成した傷病に関する分類です。世界の異なる国における傷病の状況を比較することを目的とした標準的分類で,現在は1990年の第43回世界保健総会で採択された第10回修正版(ICD-10)が使用されています。わが国では,ICD-10に準拠した「疾病,傷害及び死因分類」が作成されており,統計法に基づく統計調査に使用されるほか,医学的分類として医療機関における診療録の管理,さらにはDPCにおける分類作成上の病名相当部分として用いられています。

 図1はその例を示したものです。これは胃底部悪性新生物に相当するものです。最初のアルファベットの「C」が悪性新生物であること,続く2桁の数字「16」が疾患の部位が胃であること,そして小数点に続く数字「1」が詳細な発生部位が胃底部であることを示しています。

 ここで注意すべきことはICD-10は病名を分類するための体系であり,病名用語集ではないということです。臨床現場において日常的に使用する病名を集めて,それを電子カルテ・電子レセプト等に使用するために作成されているものに,標準病名マスタがあります。これは代表的な慣用病名約2万について,独自の管理コードと対応するICD-10,レセプトを電子提出する際に用いる傷病名コード(通称レセ電算コード)などが付けられています。

DPCの構造

 図2に示したようにDPCの構成は,14桁コードになっています。何か,非常に見づらい形になっていますが,実はこの14桁の数字は,そのすべてに意味があります。最初の6桁は病名に相当します。はじめの2桁が主要診断群MDCで,表に示したとおり,例えば,これが「01」であれば神経,「02」であれば目,「03」であれば耳鼻科,「10」であれば内分泌代謝系ということになります。それから,次の4桁がICD-10に対応するいわゆる病名です。このように上6桁で病名があらわされるのですが,私たちはこれを「基本DPC」と呼んでいます。ここで1つ重要なことがあります。それはDPCが導入されたことで,従来以上に正確な病名をつけることが,医療制度における支払いのうえでも重要となったことです。

 主要診断群(MDC)の分類
主要診断群(MDC)MDC日本語表記
1神経系疾患
2眼科系疾患
3耳鼻咽喉科系疾患
4呼吸器疾患
5循環器系疾患
6消化器系疾患,肝臓・胆道・膵臓疾患
7筋骨格系疾患
8皮膚・皮下組織の疾患
9乳房の疾患
10内分泌・栄養・代謝に関する疾患
11腎・尿路系疾患および男性生殖器系疾患
12女性生殖器系疾患および産褥期疾患・異常妊娠分娩
13血液・造血器・免疫臓器の疾患
14新生児疾患,先天性奇形
15小児疾患
16外傷・熱傷・中毒,異物,その他の疾患

 その次に,これは日本独自のものですが,「入院種別」というコードを設けており,「検査入院」「教育入院」「その他」という形で区別されます。例えば,糖尿病患者の場合を考えれば,入院形態の違いが医療資源の必要度に影響を及ぼすことが理解できるかと思います。

 その次の「年齢・体重・JCS条件」ですが,これは基本的には同じ病気であっても,年齢によって医療資源の投入量に違いがある場合に,それを分けるコードです。例えば,喘息や鼠径ヘルニアなどがそのようなものに相当します。

 その次に「手術等サブ分類」を入れています。これは外科系の先生方との議論の中で,手術の違いは,病態の違いを反映しているというご意見をいただいたことに基づいて,基本DPCごとに手術の種類によって分類するものです。アメリカのDRGと比較すると,この部分がかなり細かくなっているのがDPCの特徴です。

 その次に「手術・処置等I」「手術・処置等II」とありますが,ここには補助手術や化学療法,放射線療法等の有無が記載されます。ただし,単純になし・ありということではなく,医療資源の必要度を反映させて「0」「1」「2」という形になっています。

 その次に「副傷病名」があります。併存症や続発症の有無によって手間のかかり具合が違いますので,そこも含めて評価します。

 それから最後に,以上のものでは吸収できないが,医療資源の投入量に関係するような条件のためのコードを作っています。例えば白血病であれば,初回であるのか,再発であるのかというようなことです。

 DPCのコーディングの基本は,傷病名はICD-10でコーディング,手術に関しては診療報酬上のコードで定義するということです。繰り返しになりますが,包括評価という支払いの中で,ICD-10が使われるようになったということが,従来との大きな違いです。

 ここで分類に関して使用する病名について留意事項があります。それはDPCの分類では医療資源を最も投入した傷病名を使用するということです。具体的にこれを説明しましょう。例えば,糖尿病で内科の外来にかかっていた患者さんが肺炎で入院したようなケースを考えます。この事例では医療資源を最も投入したのが肺炎の治療ですので,診断群分類上は肺炎で整理し,糖尿病は入院時の併存症という形になります。

 以上をまとめますと,診断群分類の決定方法は,まず医療資源を最も投入した傷病名を決定し,ついで医療資源を最も投入した傷病に対応するICD-10が分類されている診断群分類を検索します。さらに,診断群分類を決定するために必要な診療行為等の情報をいれて,診断群分類を決定するという流れになります。

DPCの分類数

 以上のような分類の考え方をもとに,DPC研究班と臨床専門家の先生方との議論により分類素案が作成されました。さらに,この素案に調査対象施設から収集したデータをあてはめて分析した結果として作成されたものが,実際の支払いの基礎として用いられる分類となります。ここで,臨床的な視点から14桁のコードすべてに数字が入っているものをα版,それを支払いの視点から集約したものをβ版と区別しています。実際に厚生労働省から定義告示されているものの基礎はβ版になります。このβ版作成にあたっては,全国での症例発生数,分類ごとの在院日数および出来高ベースでのコストのばらつきなどが検討され,その均質性を確保するという視点から検討が行われました。具体的には全国で20症例以上存在し,さらに在院日数およびコストのばらつきの程度が変動係数(標準偏差を平均で割ったもの)で1.0未満という基準が採用されました。

 このようにして開発された最初のDPC(平成15年度β版)は,上の6桁で575傷病,フルの14桁で2552分類ということになりました。平成16年度β版では,15年度に調査対象施設から収集したデータおよび関係者からの意見をもとに,分類の見直しが行われ,基本DPCで591,フルの14桁で3106分類という体系になっています。

 ここで簡単にDPC研究班と厚生労働省との役割分担について説明します。研究班が担当してきたのは各年度ともα版の作成までで,β版作成および点数設定は厚生労働省の役割です。また,DPC研究班は平成16年3月31日をもってその任務を終え,現在その役割は中医協に組織されたDPC評価分科会に引き継がれています。

次号につづく


松田晋哉氏
1985年産業医大卒。91-92年フランス政府給費留学生(フランス保健省公衆衛生監督医見習い医官),92年フランス国立公衆衛生学校卒。93年医学博士(京大)。99年3月より現職。専門領域は公衆衛生学(保健医療システム,産業保健)。