第2601号 2004年9月20日


医学生が語る,医学部・医学生について

-弊紙アンケートの回答より


■Q1.「4年制大学の学生に比べ医学生の自殺率が高い」という調査結果について,どう思いますか?

6年生(男)
 一般の4年制大学に比べ,医学部は将来が決まっています。大きい視点で見れば道は1本しかないわけで,大学というよりはむしろ医師養成訓練所。その1本しかない道を踏み外してしまうと元に戻りにくい点や,将来医師になるため医学生には“しっかりしていないと”というプレッシャーがかかっていることが原因なのではないでしょうか。

4年生(男)
 医学部の特殊性として,プライドの高い人が多いように思います。こういったタイプの人は周りの友人に相談できず,心に大きな悩みを抱え日々生活しているのかもしれません。

5年生(男)
 他学部に比べ,厳しいカリキュラムに,頻回のテスト。他者と自分を比較する機会も多く,進む道を途中で変更することが難しいのも大きいと思います。

6年生(男)
 たしかに医学部の学生として,研修病院決めや卒試,国試でストレスを感じることもあります。しかし,4年制大学の学生にも就職活動などストレスを感じることは多いと思います。

3年生(女)
 わかる気がします。医科大学,総合大学ともに医学科のみ校舎が違う場合が多く,辺地に存在する場合も多いので(地方国立大学など),世間から隔離された,閉鎖的な社会の中で悩みを打ち明けにくい環境にあるように感じます。

6年生(女)
 他学部の学生とは異なり,高校3年生という比較的若い年齢で将来を決めてしまうため,後で「自分には合わない」などの不安が出てくる可能性が高いと思います。

3年生(男)
 受験時代に優等生だった人が,医学部入学後に優等生以外のパーソナリティーを獲得できないとうつなどの状態になりやすいように思います。医学部では試験の連続であり,その度に自分の能力が医学部の中では並であると思い知らされるからです。

■Q2.同じ医学部で,うつなど精神的問題を抱えている,あるいは自殺してしまった方はいますか?

6年生(女)
 解剖実習が精神的に負担になり,しばらく大学を休んだ友人がいました。勉強とはいえ,人の体を切るのがつらかったのではないでしょうか。

5年生(女)
 同じポリクリグループのメンバーの1人が統合失調症でした。どう接していいかわからず,最初はわからないまま頑張りすぎて,とてもつらい思いをしました。

 その人はその後入院してしまったためストレスを感じることはなくなったものの,いないことでほっとしている自分に嫌悪感を感じてしまいます。また,うまく対応できなかった自分がちゃんと医師としてやっていけるのか,正直不安な気がしています。

6年生(男)
 2年生の時,仲のよかった同級生が解剖実習がはじまったのをきっかけに学校に来なくなってしまい,結果自ら命を絶ってしまいました。

 当時はうつについての知識がなく,友人として何もできなかったこと,大学の講義で「うつは治る」と習ったにもかかわらず,大学病院にかかっていたその同級生が治らなかったことが,残念でなりません。

3年生(女)
 精神的問題を抱えている友人はいます。身近な友人の中でも3人ほど精神科を受診しています。また,受診しようか相談してくる友達も数人います。

 うつ状態に悩みつつも,医学生でありながら自分が精神的病気と認めるのに抵抗がある人も多く,それ故に苦悩も増しているように思います。

5年生(男)
 身近にそういった学生はいません。むしろ医学部よりも4年制大学の学生に多い印象があります。希望の進路が見つからない,就職難などの理由でうつになり,抗うつ薬を服用している友人がいます。

2年生(女)
 精神的問題を持っている人はいます。その中には,「医学生であること」が大きな理由の人もいます。医師や医療をよく知らずに医学部に入学してしまった場合,悩むことは多いのではないでしょうか。

4年生(男)
 うつのため試験期間中に勉強ができず,留年を続けている学生がいます。また,試験に落ちてしまったことをきっかけに登校しなくなった同級生がおり,なんとか復帰してもらいたいと思っています。

5年生(男)
 うつを抱えている友人がいます。私の大学は単科の医科大学なので1学年の人数も少なく,顔見知りの学生と6年間いっしょに過ごすことになります。したがって,評判が悪いとずっと悩みつづけることになったり,人間関係における逃げ道がないため精神的問題を抱えやすいと思います。

■Q3.医学部に入って失望したこと,落胆したことはありますか?

3年生(女)
 しばらく海外で生活していたせいもあるかもしれませんが,自分が当たり前と思っていた医療におけるマナーやケアが欠けている現場を臨床見学の機会に見て,非常にショックを受けました。

 これは一例ですが,ある科で女性の患者に対して教授回診の際に20人近い医師や研修医などが連なって,その患者のベッドを囲み,患者の陰部を説明し,見ていたことには驚きました。

 医師の態度や話し方も患者に思いやりを示すものではなく,患者は恥ずかしがっており,弱くではありますがその意思表示をしたのですが,それがまったく汲み取られず進められたことにも驚きました。

 このような医療を当然と思っているのだろうかと思い,そのような先生方のもとで学んでいく自分の将来に不安を感じました。もちろんその後,高い志と思いやりを持った先生方にも多く出会うことができましたが,そうでなかったら医師という職業に大きな幻滅の気持ちを抱いていたと思います。

6年生(女)
 人間関係。100人前後の狭い世界であるだけに噂はすぐ広まり,いったん人間関係で挫折してしまうとその後は針のむしろです。また,学内で競争があるので,情報をまわさないなど利己的な人たちが多いです。

6年生(女)
 医学の知識ばかりしかなく,一般常識に欠ける人が多いことにとても驚きました。もっとも驚いたのはポリクリで救急部を回っていた友人が「CPAの患者が来て,心マとかやったけど,生き返らなかったらもっといろんな処置やらせてもらえたのになぁ」と言うのを聞いた時です。いくら知識があっても,人間として非常に問題があると思います。

2年生(男)
 私の大学は1学年60名しかいないので,まわりは知り合いばかりです。話題も噂話が多く,この状況に嫌気がさしたり精神的に苦痛を感じている人もいるのではないでしょうか。

5年生(女)
 臨床と隔絶した基礎,座学中心のカリキュラムに落胆しました。改善されつつはありますが,膨大な知識量をほぼ無秩序に一方的に講義し,学期ごとの試験で詰め込み記憶を行う,の繰り返しは受験勉強とほぼ変わらない「教育」「評価」システムであり,よき「医者」を育てようとする意欲を感じることがほとんどありませんでした。

 入学当初から臨床医を志していましたが,臨床医の姿が見えてこず,何をどう学ぶべきなのか手探りに近い感覚を味わい,苦しかったです。

■Q4.「将来医師になる」ことについて不安を抱いたり,周囲のプレッシャーを感じることはありますか?

1年生(女)
 あります。6年間でどれほどの知識を身につければいいのか不安に思います。周囲は医学部に入れば,自然に医師になれると思っているので,そのことにプレッシャーを感じることがあります。

 また,医師になれたとしても,医療ミスを起こしたりしないか不安です。

6年生(女)
 患者に対する責任が持てるのか。卒業後に研修医とはいえすぐに「医師」として扱われることがうれしくもありますが,反対に知識や技術がままならない状態で,そのように扱われることに不安もあります。

 また,医療訴訟も多く,いつ自分がその当事者になるかと思うと心配です。

6年生(男)
 医療事故によって医師があっけなく医療界から追放される雰囲気が世の中にあるように思います。

 医療事故のリスク回避について,これといった解決策が現状では見えてこないにもかかわらず,医療ミスによって患者を死なせた医師の話題ばかりが報道され,医療不信が叫ばれています。このような,まるで「一度失敗したらゲームオーバー」とでも言わんばかりの医療界へ,何もできない自分が飛び込んでいかなければならないことに,現在は非常に不安を抱いています。

2年生(女)
 周囲からのプレッシャーは特にありませんが,自分がどのような医師になりたいかというのがまだ定まらず,その点では不安はあります。臨床医になりたいのか行政のほうに進みたいのか…。でも,あと5年間もあるのだから,いろいろなものをみて,考えていこうと思っています。

6年生(男)
 もし医師国家試験に合格できなかったら,周囲に顔向けできないというプレッシャーはあります。

5年生(女)
 自分がはたして医師になれるのかということだけでなく,マッチングや国家試験,臨床実習のことなど不安はつきません。

5年生(男)
 マッチングなどで大学医局が王様でいられる時代が終わって,就職先は自分で見つけていかないといけないというのはある意味プレッシャーだと思います。

 また,これだけ連日,訴訟訴訟という話が続くと,自分が果たして将来事故を起こさずにやっていけるのだろうか?と不安に思うこともあります。

3年生(男)
 これからたった4年間学んだだけで,研修医という形ではあるものの,患者さんに対して責任を持って医療を提供することができるのかという漠然とした不安があります。しかしそれは医師というのがそれだけ社会的にやりがいと責任のある仕事ということでもあり,気負わず着実に勉強していこうと思っています。

■Q5.社会人あるいは医学部以外の学生である友人と,考え方や生き方の違いを感じることはありますか?

2年生(男)
 よくあります。特に医学生の場合,将来がとりあえず決まってしまっていて,キャリアの模索というものをする機会がありません。将来に対する見方というものが決定的に異なると思います。

 その理由か,「将来のために」積極的に社会に参加しようとする学生は他学部に比べるとはるかに少なく,スポーツやサークルに打ち込む学生が大多数です。

 私の知り合いの他学部の友人には,積極的に将来の自分のキャリアを模索している学生が多く,自分はこれでいいのだろうかと悩むこともあります。

3年生(男)
 基本的に同じだと思います。考え方や生き方の違いは,私の少ない経験の中では個人差のファクターが大きく,その枠組みでは有意な差はないと感じています。

 ただ,まだ世の中の人は医師に対する「幻想」があるようで,「医者は将来が安定していていいよな」などと言われたり,安定さを重視して医学部志望の高校生が増えているという一部報道や高校の進学担当者の声を聞くにつれ,厳しい時代が到来しつつある医療の分野に「安定志向」を求めるのは間違いではないかと感じています。

5年生(男)
 就職活動がないことが大きな問題なのだな,と思います。

 マッチングの話がでたとき,「就職活動を医学部に入ってまでしなきゃいけないなんて思わなかった」という発言が学生から聞こえて,びっくりしました。マッチング程度,就職活動に比べたら,まったくたいしたことはないのに…。

 売り手市場ということなのでしょうか。就職活動の厳しさは,ここにはありません。

4年生(女)
 あります。医学部以外,といってもまた色々な人たちがいますが,もっと柔軟に生きている人の話を聞いて自分の視野の狭さに気づくことがあります。

 具体的に言うと,調理の専門学校に通っていた友人がやはり自分には向いていない気がする,と言って小さいころから興味があったマッサージ師になると言い出したことです。

 自分の場合は,もし他にやりたいことを今見つけても“医師”という職業より世間的には下がる職業なのでなかなか思い切れないだろうなぁと思います。

5年生(男)
 あります。私は一年生の時に香川医科大学(現香川大学医学部)で行われた医ゼミに参加し,そこで色々な人たちと出会い,こんなにおもしろい世界が大学の外にあるんだ,と思いました。

 病院にいると病院の中であることが世間の常識,と思ってしまうのかもしれませんが,社会において医療者は少数派なのですから,社会のスタンダード,しっかりとした考え方を学ぶのなら医療に関係ない人たちと交流するほうがいいと思います。