第2594号 2004年7月26日


身体で覚える
糖尿病療養援助技術

〔第4回〕

心地よさを提供するプログラム(1)

吉田百合子
富山医薬大附属病院地域医療連携室・看護師


前回よりつづく

心地よさを提供する技術

 連載の第1回で,人間は「心地よさ」を求めて行動を選択するということについて述べました。「心地よさ」とは,心が開放され,身体の緊張が解けるだけでなく,自己管理を含むさまざまなことに関心が出てきて,行動に至るということも意味します。糖尿病においては,糖尿病に興味がわき,好きになり,自己管理に自ら積極的に動くようになる,そのような「心地よさ」を患者が感じることが,1つの目標になります。

 さて,その心地よさを提供するプログラムには,(2)肯定的な文章に直す,(3)良い点を拾う,(4)患者向けQ&A,(5)利益の確認,(6)私メッセージ,の5つがあります(表)。どのプログラムも,そのタイトルから,内容をある程度予測することはできると思います。しかし,私たちに必要なのは,それを頭で理解するだけではなく,1つひとつを技術としてしっかりと確認し,練習を繰り返すことによって習得することです。

表 プログラム

「身体で覚える糖尿病療養援助技術」プログラム。太字は本号で紹介したプログラム。
(1)やりとり学習(ロールプレイ)
(2)肯定的な文章に直す
(3)良い点を拾う
(4)Q&A
(5)利益の確認
(6)私メッセージ
(7)カウンセリング
(8)自己管理行動の確認
(9)ライフスタイルを聞く
(10)食事ナラティヴ
(11)運動ナラティヴ
(12)目標の確認
(13)自己管理を体験学習

 今回と次回の2回に分けて,心地よさを提供する5つのプログラムの概略を紹介します。第3回で紹介したロールプレイングを職場の仲間同士で行うか,個人練習として行うか,何らかの方法でこれらの技術を実際に体験し,各技術のコツを習得することをめざしてください。

(2)肯定的な文章に直す

 糖尿病を肯定的に表現することによって,患者さんに糖尿病を心地良く感じてもらうことがこのプログラムの目的です。

 糖尿病には,正しい自己管理が行われないと良好な血糖コントロールは望めないという,明確なメカニズムがあります。このことを正しく理解してもらうことができれば,自己管理を動機づける情報となるでしょう。ここでは,そうした各種の情報を,患者さんにうまく提供する方法を学びます。

 具体的には,まず糖尿病の自己管理の内容を書き出します。その後,その文章を肯定的な表現に書き直します。例に従って,演習用紙の下線の部分を書き換えてみましょう(図1)。

 学習効果を上げるため,肯定文に直す時に声に出して自分の耳に聞かせながら書くようにします。次に,肯定文のみを5-10回,隣にいる人などを患者に想定して,繰り返し読み上げます。2人でやる場合は交代で,3人の場合は評価役を設定してください。

 その後,声に出して言ってみて,また言われてみてどのように感じたかを,グループ内で発表します。また,感じたことをより明確にするために,文字にします。1人で行う場合も,頭で考えるだけでなく,文字にして,声に出すことを忘れないようにしてください(このあたりの具体的な進め方は第2回のロールプレイの解説を参照してください)。

 隣同士で行った後,グループで,お互いが感じた内容を確認しあうことが大切です。最終的には,グループ内で言葉を交わし合うなかで感じた「心地よさ」を,患者に提供できるようになることが目標です。

(3)良い点を拾う

 日々の生活の中には,誰でも自己管理に良い部分と,そうでない部分があります。その中の良い点に注目して,声かけをすると,声をかけられたことによる「心地よさ」から,そうした自分の生活の「良い点」に意識した生活に行動が変化していくことがあります。自分の生活の「悪い点」ばかりに注意がいくと,どうしても元気がなくなってきますし,自己管理に向かう意欲も沸いてきません。悪いところを注意したくなる気持ちをぐっと押さえて,患者さんに,自分自身の「良い点」に気付いてもらえるような言葉かけを練習しましょう。

 このプログラムでは,まず事前にあげられた生活記録の中から,良い点に○をつけます(図2)。次に,その○について,肯定的な表現で患者役に話しかけるようにします。「奥さんとテニス,いいですね」「この日の血糖値はちょうどいいくらいですね」と話しかけ,その時の状況を話してもらうようにします。

 これによって,患者役は良い点に注目された時の心地よさと,自分が行うことができた良い自己管理行動を,自ら確認することができるようになります。

 個人練習の場合は,ご自分が担当されている患者さんの生活記録から「良い点」に丸をつけ,そのことを伝える練習からはじめてみてください。

【研修案内】
 LCDE(地域糖尿病療養指導士)富山による研修「身体で覚える療養援助技術(富山版)」を下記日程において開催いたします。(日本糖尿病療養指導士認定更新のための研修単位:II群2単位)
日程:8月28日(土)-29日(日)
会場:福岡市 八重洲博多ビル
 (1日目13:00-21:00,2日目9:00-14:30)
講師:吉田百合子(富山医薬大附属病院)
定員:100名
参加費:10,000円
申込締切:8月15日
おことわり
 ・宿泊に関しましては必要に応じて各自ご予約ください。
 ・定員になり次第,参加申込みは締め切らせていただきます。
問合せ・申込み先
 〒930-0194 富山市杉谷2630
 富山医科薬科大学附属病院 地域医療連携室(吉田)
 FAX(076)434-5104
 E-mail:yoshiyu-tym@umin.ac.jp


[著者略歴]
国立山中病院附属看護学校卒業後,国立がんセンター勤務を経て現職。佛教大,富山医薬大学院に社会人入学し,社会学,看護学を学ぶ。「現場の“技”を言葉にして,それをもう一度現場に還元するのが私の仕事」と語り,日々後進の指導に取り組む。