第2581号 2004年4月19日


全国25病院で研修医に密着取材!!

臨床研修の現実とは?

市村公一氏(より良い医療を目指す医学生と医師のML主宰)に聞く


研修病院における「教育」
――全国25病院で研修医に密着取材し,見えてきたものとは?
市村 全国の研修現場を取材して驚いたのは,「教育」が充実した病院は,非常に少ないということでした。
 私が研修を行なった東海大では,多くの科でチームができていて,朝夕は指導医と一緒に回診をし,何度かのチェックが入りますし,教育的なカンファレンスやラウンドも多く,こちらから働きかけなくても,ある程度の教育は受けられる体制が整っていました。
 しかし,取材先の研修病院では,各診療科任せ,研修医の自覚任せの研修が少なくなく,そもそも研修医と指導医が一緒に回診をしながらディスカッションするというような場面は,あまり多くありませんでした。総合診療科のような研修医教育の核となる科があれば,そこでは行なわれていても,他の科にまわるとほとんど「教育」がない。研修医は研修医1人でまわり,指導医は指導医でまわっている。それで何かあれば,PHSで連絡を取って,オーダーを出す。
 これが平均的な研修現場の現実です。
 他方,診ている疾患に関しては,やはり市中病院だけに大学病院よりもずっとバラエティ豊富で,高度専門医療を謳っている病院でも感染性腸炎や市中肺炎などのコモンディジーズを診ながら,特殊疾患も診ている。これは研修医にとって大きな魅力だと思いました。
――病院間の差はどれくらいあるのでしょう?
市村 指導・教育に関していえば,非常にばらつきがありました。有名な病院の中でも,すごくしっかり指導を行なっているところもあれば,ほとんど研修医の自覚任せのところもあります。
 研修医任せの施設では,それだけ個々の研修医が責任を持って勉強をするという面もあり,やる気も実力もある研修医にはよい研修であるともいえます。しかし,安全管理体制が適切かどうかは十分に注意すべきです。また,「教育」がない病院では,病態や鑑別診断を考えるトレーニングが不足しがちにみえます。すでに診断がついている患者であれば,どんどん自分でできるとは思うのですが,まったく診断のついていない患者さんを診た時にどうするのか? その頭のトレーニングという意味では不十分ではないかと思いました。

理想の研修病院はあるか?
――救急外来でのトレーニングを重視する病院が増えています。
市村 救急外来は,フレッシュな,診断のついていない症例を診るという意味で,非常に勉強になる場だと思います。しかし,非常に危険な場でもあるわけです。ところが,特に夜間ですが,当直スタッフの名前だけはあっても現場にいない施設が少なくありません。つまり,研修医が単独で診療をし,判断に迷った時にだけスタッフをコールするという体制です。これは問題ではないでしょうか。
 その場にスタッフがいれば,腹痛なら腹痛,胸痛なら胸痛の救急症例を診ながら,どのようなアプローチをするかという教育があると思いますが,その場にいないと,そのような指導はなされません。また,安全面からも,研修医の判断で「問題がない」と帰してしまえるわけで,見逃しの危険性があると思いました。本来,このような危険な場を教育上の理由で活用するのであれば,それなりのスタッフを置くべきではないかと思いました。
――研修先を決めるにあたって,どのようなところに留意すべきでしょうか?
市村 そのあたりは,本にも書いたので,ぜひお読みいただきたいのですが,ベストという研修病院はないと思います。有名研修病院といえども,その研修の中身は千差万別で,自分に合うかどうかは別問題です。ある程度,将来のこと,後期研修の方向性などを念頭に置きつつ,自分でその病院の様子を見て決めることが大切だと思います。




市村公一氏
 東大卒。銀行勤務を経て,2002年東海大医学部卒,東海大病院研修医。在学中に開設したメーリングリストが話題になる。03年より全国の臨床研修病院を取材,『臨床研修の現在』(医学書院)にまとめる。