医学界新聞

 

ICN(Infection Control Nurse)の活動

第18回日本環境感染学会の話題から




 第18回日本環境感染学会が,木村哲会長(東大附属病院教授)のもと,さる2月14-16日,横浜市のパシフィコ横浜で開催された(本紙2526号に既報)。本号ではワークショップ2「ICNの活動-サーベイランスの波及効果」(司会=日看協研修学校 廣瀬千也子氏)について報告する。

効果得られる感染管理実践のために

 まず沼口史衣氏(日看協 看護教育・研究センター)は,「教育者の立場から-効果的なサーベイランスの実践に向けて」と題して,今年度で3期目を迎えている,日本看護協会による感染管理認定看護師教育課程について紹介。
 年間810時間のカリキュラムのうち,実に110時間がサーベイランス関連にあてられていることを示し,サーベイランスを重視する理由として,(1)感染管理上の問題点を把握できる,(2)感染防止対策を評価し具体的な改善策に結びつく,の2点を挙げた。
 また,自身も感染管理者として活動する経験から,サーベイランスのフィードバックを行なうことによって心臓外科手術部位感染(SSI)の発生率の低下に伴い医療コストも下がり,病院にとっての利益に結びついたとし,経済の観点からも感染管理の重要性を示した。
 続いて藤田昌久氏(日医大附属病院)は,「実践者の立場から-感染防止対策の改善とサーベイランス」と題し,院内の感染管理を指導する立場として,フィードバックすることによってシステムや医療者の意識を評価・変化・改善することを目標に行なった血管内留置カテーテル関連感染サーベイランスについて報告。サーベイランスの結果から,感染率は予想以上に高く,そこから浮かび上がった問題として,(1)血管内留置カテーテル管理と感染防止の必要性が理解されていない,(2)スタッフに正しい管理方法が理解・修得・実践されていない,などの点をあげた。これらを抽出して介入を行なった結果,感染率が低下したと説明し,今後の課題としてはサーベイランスの継続と定期的なフィードバック,教育の継続の他,医師へのフィードバックや,他の病棟へのサーベイランス拡大などもあるとした。
 「看護管理者の立場から-サーベイランスの影響・評価」と題して講演した石田由紀子氏(国立名古屋病院)は,自らの病院で現在行なっているサーベイランスについて紹介するとともに,院内で行なっている感染管理教育についても言及。
 サーベイランスによって明らかになった自施設における感染管理上の問題点を教育のテーマとして採用することで,対象者が高い意識をもって取り組むことができるとした。また,信頼できるサーベイランスを実施するためには専門的な教育を受けた看護師の育成が不可欠であるとし,その上でICNが感染管理に専念できるためのポジションなどについての管理者側の工夫の必要性についても指摘した。
 その後の議論の中では,この日モーニングセミナーを行なったMary A. Brachman氏(Infection Control & Education Specialist)が座長の廣瀬氏に促されて登壇し,サーベイランスと教育の関係について,「実践を変えるためには『自分のデータ』が必要」と,サーベイランスの重要性を強調した。