第2520号 2003年1月27日


新たな専門性の確立をめざして

第1回日本アディクション看護学会が開催される




 第1回アディクション看護学会が,安田美弥子会長(都立保健科学大)のもと,昨(2002)年12月14-15日の両日,東京・荒川区の東京都立保健科学大学において,「21世紀 アディクション社会と看護」をメインテーマに開催された。
 初の開催となった本学会では,会長講演「アディクション看護とは」を皮切りに,シンポジウム「アディクションとの接点と看護の変革」(司会=井之頭病院 天賀谷隆氏),記念講演「アディクションと現代の心の問題」(家族機能研究所 齋藤学氏)が企画された。その他にも3題のワークショップが企画されるなど,近年,社会的にも大きな注目を浴びている「アルコール依存」,「児童虐待」,「ドメスティックバイオレンス(DV)」などといったアディクション(嗜癖)問題に対して看護職者がどう対応していくか,活発な議論が展開された。

従来の看護では担いきれない分野

 会長講演に立った安田氏は,現代社会にアディクション問題が急増した理由として,(1)経済的・時間的・空間的ゆとりによって生まれる心の隙間,(2)少子化による親の過剰な期待,(3)情報化の進展による理想と現実の混同,の3点を示した。また,依存症者(アディクトン)の特徴として,(1)依存的であると同時に支配的,(2)人間不信,(3)感情のコントロールができない,(4)精神障害とともに行動障害でもある,(5)家族全体が病んでいる,の5点をあげ,これらのために従来の看護技術では対応が難しい部分があるとした。特に家族の問題については,「身近にいる家族自身が非常識で,尻拭いをしてしまい,患者がアディクションから立ち直れない場合もある」と指摘する一方,アディクション問題では患者も含めて家族全体が治療対象であるにもかかわらず,家族に対しての治療は進んでいないとの現状を示した。
 まとめとして氏は,アディクション看護に対する評価の視点や指標の開発を行ない,従来の精神科看護を越えた専門性の確立への期待を述べた。

さまざまな視点からの議論

 シンポジウムには,救急医療から緋田雅美氏(日医大多摩永山病院),専門病棟から榊明彦氏(成増厚生病院),教育の立場から小倉邦子氏(自衛隊中央病院高等看護学院),地域での対応を担う立場から池田小夜子氏(石神井保健相談所)がそれぞれ登壇した。
 緋田氏は,自殺企図による薬物中毒で救命救急センターに搬入される例は年々増加傾向にあると報告。自殺企図を繰り返す患者を考えると,救急の場におけるアディクション看護の役割は今後ますます重要になるとした。
 また,榊氏は,アディクション問題には家族の問題がかなり重く関わっていることが多く,医療者側も家族の問題に巻き込まれる場合があると指摘し,チームで対応に当たることで解決していく必要性があると述べた。
 小倉氏は,看護教育の場においては未だアディクション看護という言葉はほとんど定着していない現状を報告。また,看護学生の抱えている心の問題についても認識を深め,教育にあたる必要があると述べた。
 池田氏は児童虐待の問題に触れ,現状では虐待を行なっている当事者の治療よりも子どもの保護のみに重点が置かれる傾向があると指摘。「母性神話」を強調する母親学級のありかたの見直しなどで,虐待防止に努めることが重要であるとした。
 続いて行なわれたディスカッションでは,コメンテーターとして妹尾栄一氏(都精神研)も参加。具体的な患者への対応や,アディクション問題を抱えた患者の入院,社会の対応などについて,盛んに意見が交わされた。