第2495号 2002年7月22日

Vol.17 No.7 for Students & Residents

医学生・研修医版 2002. Jul


研修医採用戦線異常なし?

―――人気研修病院に採用の実態を聞く―――

 臨床研修必修化を2年後に控えたいま,既に卒業を目前にしている医学生たちからも,「質の高い研修を受けたい」,「十分な指導を受けられる施設を選びたい」という声をよく聞くようになった。かつては,多くの医学生がそのまま自分の所属する大学の附属病院で研修医となっていたが,学外の臨床研修病院での研修を考える学生は増加の傾向にある。さらに,2年後の臨床研修必修化では,研修医と研修施設の組み合わせを決定する全国規模の「マッチング」も導入されることが検討されており,大学附属病院はその大学の卒業生の半数しか研修医として採用できない仕組みも案として浮上している。全国規模で研修医が混ざり合うようになれば,質の高い教育を行なっている研修施設には,さらに人気が集まるものとみられている。ではそのような人気研修病院はどのように研修医を採用しているのだろうか。
 本紙では,研修医教育に定評があり,全国から研修医採用試験に応募者が集まる聖路加国際病院,国立国際医療センターを訪ね,最新の研修医採用事情についてうかがった。
(「週刊医学界新聞」編集室)


聖路加国際病院
  
国立国際医療センター


■聖路加国際病院に聞く

石川陵一氏(聖路加国際病院副院長,医学教育委員長,脳神経外科部長)
岡田 定氏(聖路加国際病院,医学教育委員,内科医長)

―――卒後臨床研修必修化が間近に迫りましたが,最近,聖路加の研修医に応募してくる医学生の意識や数に変化はありますか?
石川 今も昔もそう変わってはいないと思います。どの時代も,大学の外に出てしっかりとした医師としての研修を積みたいと考える学生は必ずいますから。
岡田 私も,最近になって急に学生の意識が高くなったという印象はありませんが,応募者の中には,「しっかりした臨床ができる医者になりたい」,「まずジェネラルをしっかり身につけたい」という希望を持っている人が多いです。
石川 当院では内科系スーパーローテート,外科系スーパーローテート,小児科,婦人科の4つのコースで採用していますが,研修医は科の特性に応じて定められたローテーションを行ないます。内科・外科はどのコースでも確実に回ります。面接の時に志望動機なども聞きますが,「しっかりしたローテーションができるから」ということを挙げる人も多いです。

内科系で特に厳しい応募倍率

石川 学生の研修医募集への応募倍率はほとんど変わっていません。今年度の場合には,応募者数が書類に不備があった者などすべて外し,実質70名で,うち20名を採用しましたので,倍率は3.5倍です。2001年度は75名中20名,2000年度は82名中20名の採用です。特に内科系は応募者が多く,今年は42名中8名,昨年は46名中8名,一昨年は49名中8名の採用です。
―――70-80名の応募者というのは,意外に少ないという印象ですが?
石川 採用に当たって夏期エクスターン(病院実習)の評価を加味するという当院のシステムの影響もあるのかもしれません。当院のエクスターンには毎年300名を超す応募があります。今年は全国の69の大学から378名の応募があり,そのうち239名を受け入れています(既に締切済み)。特に人気のある内科のエクスターンなどでは,ある程度の基礎的な知識があるかどうか,医師としての適性などをみます。評価をする中心はシニア・レジデントで,「この人が研修医採用試験に応募してきたら採ってもよいですか」と聞きます。これは面接の際に非常に参考になる資料となります。

エクスターンという重要な機会

―――聖路加で研修医として採用されるためには,まず,エクスターンに参加しないといけないのでしょうか?
石川 そうとは限りません。ただ,われわれが学生を知り,学生も病院のことを知る非常に重要な機会だということです。実際にエクスターンを受けずに採用された研修医もいます。
岡田 エクスターンに参加していないから採らないということはありません。ただ,そこでよい評価を得ていることが有利になることは間違いありません。
―――エクスターンの選抜は,何を基準にされるのですか?
岡田 書類選考です。主に,志望動機がきちっと書かれているかということと,推薦状の中身です。しっかり書かれている推薦状があったり,当院のスタッフがその人物をよく知っており,推薦しているような場合は比較的有利と言えます。
石川 内科系エクスターンは応募者数が非常に多く,受け入れるのが困難な場合も少なくありませんが,第2,3希望まで書いてあり,「どうしても」という場合には第1希望は内科系だったけれども,外科系でエクスターンができるようにするなどの融通は利かせています。学生は少なくとも病院を見ることはできるわけで,メリットはあると思います。また,外科系でエクスターンをしても内科系の研修医として採用された例もあります。

採用試験の内容

―――採用試験はどのように行なうのですか?。
石川 まる1日かけて行ないます。午前中が筆記試験で,内科系50問,外科系50問が出題されます。午後はSPI(主に「性格検査」と「能力検査」からなる試験。就職試験などでよく用いられる)と各コース別の面接です。筆記試験の内容は難しいものではありませんが,平均点の7割以下の得点の人は,どんな理由があっても不採用となります。
岡田 内科系はさらに厳しく,その日に面接可能な20数名を選ぶための筆記試験となります。半分近くの方が午前中の段階で不採用になってしまいます。
石川 学生によっては,内科系では選に漏れたけれども,第2志望で別のコースの面接を受けるという人も出てきます。
―――「国際病院」とうたわれていますが,語学力などは重視しますか?
石川 語学で差がつくことはないと思います。語学は流暢である必要はなく素養があればいい。医学部を卒業できるのであれば,まず問題ないと考えています。なお,筆記試験の問題は,単純記憶型から問題解決型に変わってきており,一部に英語の設問が出題される可能性が高いです。
―――選考にあたって,特に重視されることはあるのですか?
石川 特に何かをということではなく,筆記試験,面接,SPI,推薦状,あるいは,エクスターン時の評価などを総合的に判断します。
 受験生に参考になればと思い申しますが,履歴書に不備がある人が結構いるのです。中には冗談のような履歴書を書いてくる学生もいます。Tシャツ姿の写真が貼ってあったり,印鑑の欄に拇印が押してあったり……,こういう学生を採用するには勇気がいります(笑)。
岡田 まあ,それだけで落とされる可能性がありますね(笑)。

研修修了後の進路,待遇

―――学生さんにとって気になるいくつかのことを教えてください。研修修了後の進路はいかがですか?
石川 過去3年間のデータですが,2年修了後,当院の後期研修へ進んだのが28名です。大学病院等,他院に行ったのが26名,海外留学が2名です。
岡田 内科系だけは,3年間で1つのプログラムとして考えているので,3年間は必ずいてもらいますが,3年修了後にほとんどが外へ出ることになります。後期研修に残りたいと考える人も多いのですが,実際にはポストが限られています。また,一方で,内科の中で専門を決めて他へ行きたいと思う人も少なくありません。
―――学閥は?
岡田 まったくありません。日本ではめずらしい病院だと思います。
―――卒後の待遇は?
石川 年俸で,1年目が330万円,2年目が360万円です。これに1年目後半からは当直料が加わります。アルバイトは禁止です。全寮制で快適な部屋を用意しています。

いろいろな人に来てほしい

―――最後にどのような研修医にきてほしいのか,メッセージをお願いします。
石川 個人的には,理想の研修医像というのは持っていません。医療現場には多様性が必要です。いろいろな人がいるべきだと思います。ですから,とらえどころがないようですが,モチベーションが高く,一生懸命やる人であれば,歓迎です。
岡田 「いい臨床医になりたい」という考えをしっかり持っているということが大切だと思います。特別な勉強をしていただく必要はないと思います。
―――本日はありがとうございました。


■国立国際医療センターに聞く

正田良介氏(国立国際医療センター,教育部長,第1総合外来医長)

新カリキュラムの導入で応募者増


―――国立国際医療センターでは,2年前より新しい研修カリキュラムをスタートさせたと聞いています。ここ数年,研修医の応募の動向に変化はありますか?
正田 新しいカリキュラムをスタートさせてから,応募者約100人に対して40名採用しています。それまでは,60-70名が受験して30名を採用するという状況だったので,研修カリキュラムを刷新したことによって,応募者が増えたと言えます。
―――新しいカリキュラムの特徴とは?
正田 例えば,耳鼻科の医師になりたいという人は耳鼻科以外に何を学ぶべきか,あるいは将来耳鼻科にならない医師は,耳鼻科をどの程度学んでおくべきか,ということを耳鼻科の先生に出してもらったわけです。このような作業を各科で行ない,総合的に患者さんを診られる医師をつくるにはどういうカリキュラムが必要かというところから議論を行ないました。
 その結果,研修医たちの志向により,現在の内科系医師養成コース,ジェネラリスト養成コース,外科系医師養成コースの3つのコースができあがったわけです。内科・外科・小児科・産婦人科・麻酔科・救急など,全コースに共通のコア・ローテーションと各コースの特性を踏まえたローテーションの組み合わせで組み立てられています。
―――ジェネラリストコースとは?
正田 将来,総合診療や一般内科,救急をやりたいと思っている人たち向けのコースです。このコースは私たちの予想を超えて人気が出ました。現在,内科系コースとジェネラリストコースは,応募倍率が2.5倍くらいあり,外科系は1.5倍くらいです。

ぜひ,夏期実習の活用を

―――最近,応募してくる学生さんたちの意識に変化はみられますか?
正田 かつては,「国際協力をやりたい」という研修医が多く集まっていた時期がありました。実際には,研修医の段階では直接国際協力にタッチすることは,ほぼないと思いますが,3年目以降のレジデントになると少しずつ参加できるような道があるのです。しかし,最近は新しいカリキュラムを明示するようになったこともあり,そういう人ばかりではなく,広くさまざまな志向を持つ人が集まるようになってきました。
 特に,多数の6年生が夏休みに当院で病院実習を行なうようになり,この病院はどういうところかを見ていくようになりました。これはとてもよいことだと思います。私たちは可能な限り,すべての学生を夏期実習で受け入れるようにしています。現在,ひと夏に120-130人来ていて,春も合わせるともう少し多くなります。
 いわゆる「受験」のように,「あそこは有名だから受けてみましょう」というのではなく,「こういうことができそうだから」ということで来てもらったほうがよいですし,当センターでの研修の弱点も知ってもらった上で,なお「研修を受けたい」と思ってもらえれば幸せです。
―――実習に来た優秀な学生に目をつけておくということはあるのですか?
正田 現在はそのようなことはまったくしていません。実習に来ていなかった人が不利になってはいけませんから。ただ,将来的には,ある期間実習をした上で……という枠を作れればと考えています。臨床研修とは,机上の学習ではなく,患者さんを診てどうするかを学ぶことです。そこで,自分が将来こうなりたいというロールモデルを見つけることはとても大切です。ですから,学生の方たちには「こういう先生がいるから来たい」と思ってほしいし,ぜひ,興味のある病院には実習に行き,実際に見てみることを勧めます。

多数の面接官による評価

―――採用試験について教えてください。
正田 それぞれのコースごとに面接形式の試験を行なっています。メインとなるのは医学知識などを確認する面接試験です。各コース10名以上の面接官が学生と1対1でつぎつぎと面接試験を行ないます。実際にそこで評価しているのは,知識だけではなく,思考の過程や対応の仕方を含めたものです。各大学の国家試験対策の進み具合によって,学生の知識の量は異なりますから,知識だけで判断することはしません。そして,多数で面接するのは,できるだけ正しい評価に近づけたいためです。もう1つは幹部面接で,ここでは志望動機などが確認されます。あまりに動機があいまいだったりするとストップがかかることもありますが,一緒に働きたい人物をみるための「安全弁」と考えています。面接とは別に,英文和訳試験を行ないます。これは辞書の使用が可能ですので,英語力をみるのみならず,ものをまとめる力をみており,メインの面接結果に加えて判定の参考にさせてもらっています。

全国から集まる研修医,コネはなし

―――採用の基準は?
正田 各コース10人以上いる面接官のつけた点数を平均して,コース別に点数の上のものから順番に採るのが基本です。コネはありません。公平に採るべきだと考えていますので。
―――医学部在学中の活動などが評価されるということはあるのですか?
正田 数年前から病院独自の履歴書を作成し,志望動機や学生時代に何をしていたかのアピールを書いてもらう書式にしています。面接官はそれを見ていますから,履歴書の内容が面接官の心に訴えれば,点数が水増しされるかもしれません。ただ,価値観の異なる多数の面接官で評価するわけですから,一概には言えません。
―――採用後の待遇を教えてください。
正田 国立病院ですから,定められた金額があります。月額で額面約20万円程度です。全研修医のためにが寮が用意されています。身分は非常勤職員ということになります。アルバイトは原則禁止です。
―――学閥のようなものはあるのですか?
正田 研修医については一切ありません。北は旭川医大から南は琉球大まで,私立も国立も公立出身者もいる。出身者の多い大学で3人とかそいう世界です。
―――研修修了者の進路は?
正田 最近,大学へ戻ってもっと研究をしたいと考える人が増えてきたように思います。半分を切るくらいの人がレジデントとして残り,半分が大学へ戻り,市中病院へ行く人が少しという感じだと思います。

最低限必要なのは「やる気」

―――最後に,どのような研修医を望まれるのか,メッセージをお願いします。
正田 研修医が均一的になるのはよくないことだと思っています。さまざまな個性・特徴を持った人が必要です。ただ,最低限必要なのは「やる気」ということだと思います。2年間の研修では,知識を集積するのではなく,ある一定のルールの中で,いらない知識を捨てたり,必要なものを深めて,患者さんを診る時に使えるように整理し直さなければなりません。だから,患者さんのことについて,好奇心を持って調べること,患者さんを診るために必要なことであれば,何でも受け入れてがんばっていけるような強い気持ちを持っていることが大切だと思います。
―――ありがとうございました。