医学界新聞

 

Vol.17 No.4 for Students & Residents

医学生・研修医版 2002. Apr

始まった共用試験(トライアル)

-今年の新入生から本格実施


 学生が臨床実習を始める前に,最低限度身につけておかなくてはならない知識・技能・態度について評価し,その後の臨床実習の質を高めることを目的とする「共用試験システム」の試験的運用(トライアル)が始まった。2005年の本格実施をめざし,今後3年間にわたり,規模を拡大しながらトライアルが行なわれる。最終的には全国80の医学部すべてが参加する予定だ。
 本号ではトライアルが開始されたのを受け,共用試験の中身や今後の動向などについて,取材した。また,共用試験システムに関する研究専門委員会の委員長を務める佐藤達夫氏にインタビューし,トライアルの実施状況や今後の展望などについて話をうかがった。


今春,一気に実施

 共用試験は,CBT(コンピュータを活用した試験,知識/問題解決能力を評価する)とOSCE(客観的臨床能力試験,主に技能・態度の評価を行なう)の2本立てで実施される。そのうち,CBTについては本年2月から6月1日の間に全国のほとんどの医学部でトライアルが実施され,OSCEについても1-4月に12の医学部で実施されている。
 本来,共用試験は各大学のカリキュラムに合わせて,臨床実習開始前に行なわれる試験であり,各大学が,それぞれの臨床実習開始時期に合わせて,活用できる仕組みをめざしている(今回はトライアルであり,データの処理等をまとめて行なう必要があるために,この時期に集中して行なわれている)。したがって,受験する学年も大学ごとに異なり,3年次の終わりから5年次までの間のどこかで実施される模様だ。今回のトライアルでは,多くの大学が4年次の終わりに実施している。

知識を総合的に試すCBT

 共用試験の内容は,昨年発表された医学教育モデル・コア・カリキュラムに準拠したものとなっている。
 すでにCBTの受験を終えた医学生に感想を求めると,「1-4年次に習った知識を総合的に問われる試験だった」,「ペーパー試験に慣れている人は,メモなどできないので,やりにくいのではないか」,「現時点での到達度を確認できるので,結果が楽しみ」,「基礎医学の知識を忘れてしまっていて答えられない問題があった」,「内容的には妥当と言えるのではないか」などの感想が多く聞かれた。
 なお,今回の試験結果は,多くの大学で進級には考慮しないことにしており,ほとんどの受験者が試験勉強をせずに試験に臨んでいた。しかし,トライアルとはいえ,今後は進級評価の材料とすることを明言している大学もあり,学生もうかうかしていられないケースも出てきそうだ。

OSCEに外部評価者を導入

 一方,OSCEのトライアルは,2校ずつがペアになり評価者を相互派遣をする形〔例えば,千葉大のOSCEには東邦大の教員が評価者(外部評価者)として参加し,東邦大のOSCEには千葉大の教員が評価者として参加する〕で合計12校で実施された。
 課題や評価方法などは,それぞれペアとなった実施校ごとに任された模様で,ここで得られたデータをもとに,来年以降,課題や評価方法の統一化を図る予定だ(共用試験トライアルの詳しい実施状況については,佐藤達夫氏インタビューを参照のこと)。