医学界新聞

 

「東京ER・墨東」スタート

都立墨東病院に24時間体制の救急救命診療部門


「いつでも・誰でも・さまざま症状」に対応

 東京都は,昨年(2001年)11月28日,けが・病気の程度によらず24時間救急患者を受けつける救急救命施設「東京ER」を,墨田区の都立墨東病院に開設した。
 これは,新たに整備された初期・2次救急を担う総合的な救急診療科と,既存の救命救急センターとを併設したもので,救急外来診療,入院,緊急手術など,トータルな救急医療サービスを提供し,「いつでも誰でも さまざまな症状」を持つ患者に対応する総合救急診療部門である。
 救急診察科では新たに,内科,小児科,外科系の6つの診察室と,2次救急専用病床(10床)を整備し,比較的軽症の救急患者を受け入れる。その他に救急X線撮影室,経過観察室,面談室などが設けられた。
 救急診療科設立により今後は,ER専任の内科,外科,小児科の5-6名の医師を中心に,夜間当直体制を組んで診療を行なう。北村政次副院長は,「以前は病棟の当直医が夜間の救急診療を兼ねるなど,十分な対応ができないこともあった。この東京ERでは,救急に専属的な当直体制を作ったことが新しい点」と強調した。
 また,救急診療科医長の桃井優氏は,スタッフ整備などの課題をあげながら,「東京ERはまだ十分な体制ではなく,整備には少なくとも5年は必要。しかし,これをきっかけによりよい救急医療のための体制を作りたい」と抱負を語った。

医療改革の一環

 「東京ER」は,アメリカの人気テレビドラマ「ER」にヒントを得たもの。当日行なわれた開設式典で,発案者である石原都知事が,「これまでは,救急患者にとって万全の体制とは言えなかった。この施設を通して,都民が安心して受けられる医療を提供したい」と挨拶した。
 また園嵜秀吉院長は,「このような救急患者の受け入れ窓口ができたことから,今後は出口となる地域での連携医療を重視すべき。救急医療は単独施設だけでは成り立たない。地域で協力しあい『顔の見える医療連携』をめざしたい」と抱負を述べた。
 現在,都は「365日24時間の安心」,「患者中心の医療」を医療の将来像に掲げた「東京発医療改革」を推進しているが,この「東京ER」は,「東京発医療改革」の核である「都立病院改革」の一環。
 今後「東京ER」は,府中・広尾の都立2病院でも展開される。