医学界新聞

 

リハビリテーション看護領域におけるチームアプローチを
考える-国際リハ看護研究会第5回公開研修会開催

【報告者】野々村典子(茨城県立医療大教授)


 国際リハビリテーション看護研究会(代表=茨城県立医療大 野々村典子)主催による,第5回公開研修会が,さる5月19日,「リハビリテーション(以下,リハ)看護に活用するチームアプローチの理論とその実際」をメインテーマに,東京・北区の滝野川会館において開催された。
 今研修会では,菊地和則氏(都老研・社会福祉部門)による特別講演「多職種チーム研究の概要とその展望」,およびシンポジウム「リハ看護領域におけるチームアプローチのあり方」(司会=青森県立保健大石鍋圭子氏)が行なわれた。
 出席者は100余名。南は沖縄から北は青森まで,全国の看護研究者,教育者および急性期リハの病院や在宅でのリハ看護実践者など,さまざまな領域からの参加者が一堂に会した。このことからも,現在リハ領域の中で,リハ看護におけるチームアプローチの重要性が注目されていることがうかがえる。

国際リハ看護研究会発足とその活動

 日本におけるリハを取り巻く現況は,急速な高齢化に伴い,介護保険の導入に代表される社会保障システムの見直しが進められるなど,大きな転換期を迎えている。このような社会の変化は,リハ領域における看護の重要性をも増したと考えられる。
 国際リハ看護研究会発足の意図は,わが国のリハ看護の領域をより明確にする1つの方向として,諸外国のリハ看護の実態を把握し,その国民性,文化的相違を踏まえて比較することにより,日本におけるリハ看護の専門性を確立するための教育,組織・制度的検討を行なうことにある。この発足意図に基づき,過去4回,諸外国のリハ看護の現状と課題を検討してきた。
 第1回研修会では,1999年8月に,オーストラリアのキングストンセンターからリハ専門看護師であり,リハ病棟ユニット・マネジャーでもある若き実践・研究者,アンソニー・ブラック氏を招聘(本紙1999年10月25日付,2360号にて報告)。次いで第2回目は,2000年2月に開催し,半田幸代氏(前都リハ病院)を講師に迎え,中国,ウズベキスタンの看護事情について講演いただいた。また,同年6月の第3回目では,米国からリハ専門看護師である橋本・G・ルミ氏(米・ゴールデンウェスト大)を招聘(本紙2000年8月28日付,2401号にて報告)。そして,同年12月に開催した第4回研修会には,米国循環器専門看護師である佐藤芙佐子氏(三重大)を招いての講演を行なった。

他職種との連携を行なうために

 今研修会は,リハ看護におけるチームアプローチの現状と課題を,看護職の立場からの見解だけにとどまらず,さまざまな領域から意見交換をする必要があるとの考えから企画したもの。
 特別講演を行なった菊地氏は,福祉職の立場から「多職種チームの研究がなぜ必要か,これまでの多職種チーム研究の問題点,多職種チーム研究の基礎研究とは」,というチーム研究の現状を中心に解説。多職種チーム研究の展望や,チーム研究の今後の課題について,本領域の第一人者である氏から,卓越した見解が述べられた。
 また,多職種チームの「3つのモデルの概念について一致した見解がまだない」と指摘し,「今後必要になると思われるチームに関する基本的な概念」,特にマルチディシプナリー・モデル,インターディシプナリー・モデル,そしてトランスディシプナリー・モデルの「3つのモデルについて概念」を整理して概説。その上で,「保健・医療・福祉など分野の異なる専門職が協働・連携して,チームとしてサービスを提供していく姿勢を推進すること」。研究レベルにおいては,「多職種チームを効果的に運営し,チームとしてよりよいサービスを提供していくための要因と手法についての研究が必要」とした。
 一方シンポジウムには,吉野壽子氏(市川市リハ病院),深沢啓子氏(横浜市総合リハセンター),富田晶子氏(千住新橋訪問看護ステーション)の3氏が登壇。
 まず吉野氏が回復期リハ病棟の現状を報告。次に深沢氏がリハナースの役割について,また富田氏は,以前勤務していた都リハ病院でのリハナースとしての経験を生かし,訪問看護と病院での看護との違いや在宅看護にスムーズにつなぐためにはどうすればよいのかを語った。なお,3氏ともにそれぞれが具体例を提示し,今後に向けた提言も行ない,参加者も身近な問題だけに,真剣な眼差しで聞き入っていた。

回復期リハ病棟でのチームアプローチが話題に

 出席者全員による総合討論では,リハチーム医療におけるナースの苦悩や,回復期リハ病棟がうまく機能している病院の報告が寄せられた。またその他にも,チームでのカンファレンスの重要性が指摘されるなど,参加者各自が抱えているさまざまな問題が多くの意見とともに提示され,今後のリハ看護のあり方を考えさせられる有意義な研修会となった。
 さらに,研修会終了後のアンケートからは,「多職種チームという,まだまだ発展途上の段階の研究材料が簡潔に述べられてわかりやすかった」「身近な問題であり,具体例をあげて話されたのがよかった」という意見が多くみられた。また,「他施設のリハの流れを知ることができ,自分が現在行なっているリハ看護との比較ができた」,「リハの協働・連携状況が理解でき,参考になった」,という意見の他にも,本研究会に対する積極的意見やアドバイスもあり,今後の活動の参考としたい。
 これらの意見を参考に,今後もリハ看護の専門性の確立について考える研修会を続けていきたいと考えている。なお,次回開催が決定しているので下記する。興味のある方はぜひ参加いただきたい。

●国際リハ看護研究会第6回公開研修会
 「リハ看護とリスクマネジメント(仮)」
◆開催日:12月8日(土)
◆会場:東京都内(未定)
◆連絡先:〒300-0394 茨城県稲敷郡阿見町阿見4669-2 茨城県立医療大学(野々村研究室)内
 国際リハビリテーション看護研究会事務局
 FAX(0298)40-2295
 E-mail:nonomura@ipu.ac.jp