第2397号 2000年7月24日


患者の利益となるマンモグラフィのために

マンモグラフィガイドライン

日本医学放射線学会,日本放射線技術学会 編集

《書 評》川上壽昭(愛媛大附属病院・放射線部)

 ご承知のように,乳癌検診は昭和62年から老人保健法の中に組み込まれて,かなり大規模に実施されてきた。しかし,その内容は基本的に視触診法によって行なうものであった。
 一方,富永班による調査では,視触診による乳癌検診の有効性に疑問を投げかける結果が報告されている。もちろん結果の評価にはさまざまな見方があろうが,今後乳癌の診断においてマンモグラフィが最も重要な役割を担うことは間違いない。
 今,手にしている『マンモグラフィガイドライン』は,多くの点でユニークな書籍である。それを端的に表しているのは,この本の編集にあたったマンモグラフィガイドライン委員会であろう。内容をご覧いただければおわかりのように,画像の診断に携わる医師や画像の撮影に携わる診療放射線技師ばかりでなく,外科医や病理学者,さらには放射線物理士まで,多くの専門家がそれぞれのアプローチで「患者さんの利益となるマンモグラフィ」のために執筆されている。また単に書籍を発刊するだけでなく,これまで全国で教育講演やシンポジウム,読影教育や講習会が併せて実施されてきた歴史も見逃せない。

放射線診療の場における真のチーム医療具現化

 すでにごくあたりまえのこととなった癌の集学的治療は,関連する多くの医師が各々の専門を越えて臓器別に「集学」するという,当時としては非常にユニークな試みであった。このガイドラインを手にして筆者は,集学的な「治療」が検査や診断も含めた集学的な「医療」になったとの感を強くする。チーム医療という言葉自体は馴染みのあるものになったが,その具体的な中身はいかがであろう。各々の現場で貴重な試みが続けられてはいるものの,未だそれらは普遍的なシステムとしての形を持てないのではないだろうか。このガイドラインは,前身となった乳房撮影ガイドラインの発刊から5年を経て,全面的に書き直されることで放射線診療の場における真のチーム医療を具現化したと言える。この本を一読して今後こうした新たな集学的アプローチがマンモグラフィ以外でも試みられることを願うのは筆者ばかりではないだろう。その意味で,この本は放射線診療全体への「ガイドライン」としてとらえることもできよう。

今後の乳癌検診のスタンダード

 またこの本は直接診療に携わる医療スタッフのみならず,地域において乳癌検診システムを構築しようとする実務者にとっても有用なものである。特に所見用語や記載の方法,精度保証やリスクの問題については,今後このガイドラインがスタンダードとして利用されることになろう。
 先日,アメリカにおけるマンモグラフィの品質保証,精度管理に関する講演を聴く機会に恵まれた。アメリカでは以前から法的なサポートを含めて非常に有効なアクションプログラムがいくつも実施されている。日本におけるマンモグラフィは,今ちょうど新たなスタートラインに立ったところである。しかし,『マンモグラフィガイドライン』という効果的なガイドブックによって,すぐにも「患者さんの利益となるマンモグラフィ」とそのシステムが,明らかな有効性を示すアクションプログラムとして機能することを願って止まない。
A4・頁76 定価(本体2,800円+税) 医学書院