第2376号 2000年2月21日


OSCEなんてこわくない

-医学生・研修医のための診察教室  監修:松岡 健(東京医科大学第5内科教授)


第2回 医療面接

新妻 知行(東京医科大学第3内科助教授)


≪基本的マナー≫

 医療面接だけでなく診察でも必ず評価されるのが「患者さんに接する際のマナー」です。まず清潔で整った髪型や服装をしてください。挨拶と名前の確認,自己紹介も評価の対象になります。挨拶は初対面を想定してますので,「はじめまして」が一般的です。名前を呼ぶ時は必ずフルネームで,自己紹介もフルネームのほうがよいでしょう。

≪医療面接のポイント≫

 学生にとっては普段,使い慣れない言葉や言いまわしがありますので,各場面でどのような言葉を用いるべきか,少し練習しておいてください。
 あまり緊張すると,自然な会話の流れにならなくなってしまいます。丁寧な言葉遣いが大切ですが,丁寧すぎるとかえって不自然になります。
 また専門用語を避けてなるべく平易な言葉を使うようにしてください。

■医療面接の流れ

(1)患者さんの入室

(2)着席

(3)本人の確認

(4)自己紹介

(5)インタビューの開始

(6)インタビュー内容の確認

■患者さんの入室・着席
入室しても医師が顔さえ向けてくれなければ,患者さんは話をする気になりません。一方,笑顔で医師が迎えてくれれば。患者さんは安心し,「自分を尊重してくれている」と感じることができます
写真1-1 患者さんを迎え入れる 写真1-2 椅子を勧める
 

■面接時の姿勢
写真2-1 悪い例
体も顔も患者さんのほうを向いておらず,患者さんとの距離も離れ過ぎです。また,乱 れた髪の毛をいじるのも相手に不快感を与えます
写真2-2 適切な姿勢と対人空間
しっかり向き合って面接をすることは,患者さんの信頼を得る第1歩です。また,写真の医師のように清潔感ある髪型や服装を心がけましょう
■主訴を捉える,共感的理解の態度
写真3 「ここが痛むんですね」と,自分の手を腹部にあて,患者さんに確認する医師
(写真撮影協力:東京SP研究会)

■解説

(1)患者さんの入室(写真1-1)。
 待機している患者さんをフルネームで呼び,診察室へ迎え入れます。その際,以下の点に注意しましょう。
●患者さんは「客人」であり,敬意を持って迎え入れる
●必ず,患者さんのほうに視線を向け,患者さんがリラックスできるような,和やかな表情で迎える

・OSCEでは
 各Station(試験用の診察室)の机に課題が置いてありますので患者さんの名前を確認し,さらに課題の内容をよく読んでください。
 患者さんは(標準)模擬患者(Standardized Patient;SP)が務めます。

(2)着席(写真1-2,2)
 面接しやすいように椅子を動かしてください。真正面にならないように,机の角を利用して,聞き手の左側90度の位置に患者さんの椅子をセットします。「どうぞお座りください」と着席を促します。次いで対人空間を適切にとれるような位置に自分が着席します(手を延ばせば届く距離)。視線の合いやすい座り方とします。

・OSCEでは
 通常,机の上にメモをとるための用紙と鉛筆,消しゴムが置いてあります。患者さんの訴えを整理するのに用います。ただし,患者さんのほうを見ずに,メモばかりしていてはいけません(「先輩からのアドバイス」参照)。

(3)本人の確認(写真2)
 名前を再度フルネームで確認してください。眼を見ながら会話を始めるようにします。

(4)自己紹介
 「本日(お話を伺う)担当させていただきます,○川○夫と申します」「よろしくお願いします」などが一般的です。

(5)インタビューの開始
 まず主訴については「今日はどのようなことでいらっしゃいましたか」とたずねます。次に「その症状について,いつから始まってどのようになったか詳しく話してください」とたずねます。このように最初のたずね方は開放型の質問(自由質問)を用います。

・OSCEでは
 通常,内科外来の初診患者さんとして対応します。時間的な制約から病歴を作成するのは難しいので,最後に内容をまとめ,患者さんに確認するためのメモをとっておきます

 次いで「それからどうなりましたか」「それで」と,話を促進させるようにします(中立型の質問)。後半では,「食欲はありますか」「ここに痛みはありますか」等,YesかNoで答えを要求する閉鎖型の質問(直接質問)などを用いて症状を詳しく聞き,診断治療に役立つような情報を収集します。途中で患者さんの感情に反応するような「それは大変でしたね」「とてもつらかったですね」などの共感的理解の態度を示すことも大切です(写真3)。
 現病歴をたずねる時の必須項目は症状の部位,性質,程度,どのような時に(どのように),経過,増悪と寛解因子,随伴症状です。あらかじめ腹痛,頭痛などの一般的な主訴を想定して練習をしておきましょう。
 既往歴は年代順に病名,症状経過,検査や治療(手術の有無)などたずねます。家族歴は遺伝要因,環境要因(心理要因)などの情報となります。
 患者さんの“解釈モデル”もたずねます。つまり自分の症状についてどのように理解し,どういう見通しをしているか,何が最も心配で,どのような原因検査や治療を望んでいるかを明らかにします。また受療行動つまり市販薬の使用の有無(効果も),近医に受診したか否か(検査の有無も)をたずねます。さらに患者背景,環境の変化の有無,性格についても必要と思える時には追加します。また簡単なシステムレビュー(食欲,睡眠,排便,アレルギー,生理など)を最後にたずねます。

(6)インタビュー内容の確認
 たずねた項目についてメモを見ながら順序立てて要約し確認をとります。さらに患者さんが言い忘れたことがないかをたずねて終わりとなります。最後に「お疲れさまでした」などを加えるとさらによいでしょう。

・OSCEでは
 実際のOSCEでは時間的な制限から省略せざるを得ないこともあります。

●先輩からのアドバイス
 「あまり熱心にメモを取っていると,目線を合わせる(アイ・コンタクトの)時間が短くなってしまいます。穏やかな雰囲気になるようになるべく相手の眼を見て会話をしましょう」(写真2)
 「客観評価をするためあらかじめ作成されたシナリオが準備されており,患者さん(SPさんは)は開放型の質問である程度答えてくださいます。直接的な質問で会話を遮らない注意が必要です」

●こんな時どうする?

▼質問が尽き,インタビューをどう展開したらよいかわからなくなった時
・あわてず,今まで聴いてきたことを要約し,間違いがないか確認します。その上で患者さんが言い忘れていることがないかたずねましょう。

▼会話が途切れ,沈黙が続いた時
・気まずい沈黙の時には,上述のように今まで聴いたことを要約してみましょう。ただし,患者さんが何か言いたいことを考えているような時には,その沈黙を受け止めて,「ゆっくり考えていいですよ。何でも話してください」などの言葉をかけ,リラックスした雰囲気を作りましょう。


OSCEでは何が評価されるのか?―――医療面接の場合

 「1点でも多くの点数を取りたい」これが学生の皆さんの本音かもしれません。しかし,OSCEは1点を争うような試験ではありません。OSCEは,患者さんを診療する際に医師が有すべき態度や技能を,あなたが身につけているかどうか,評価するためのものなのです。
 例えば,ある医科大学のOSCEでは,医療面接に次のような評価項目が設けられました。
 まず,面接の進め方については
1)挨拶ー名前を確認し,自己紹介をする
2)患者さんがリラックスできるようにする
3)対人的空間を適切にとる
4)患者さんに視線を向ける
5)話の進め方
 ・患者さんが話しやすい質問法を用いる
 ・話を促進させる
 ・後半では症状などを明らかにする
6)共感的理解の態度を示す
7)良好な医師ー患者関係を築く

などが,評価の対象になっています。
 さらに,面接で得られた情報について
(a)主訴を十分つかんでいるかどうか
 ・いつから
 ・どのような性質の
 ・どの程度・どんな状況で
 ・影響する因子
 ・随伴症状
(b)解釈モデルをたずねたか
(c)受療行動を明らかにしたか
(d)患者さんの背景を明らかにしたか
(e)環境の変化についてたずねたか
(f)システムレビューを行なったか
(g)インタビュー内容の確認を行なったか

などが評価されています。
 また,ほとんどの大学では「SPによる評価」も行なっています。この大学では医療面接全体の評価の25%がSPに配分されていました。

一夜漬けは通用しない

 以上のことからも明らかなように,OSCEでは一夜漬けの学習は通用しません。ペーパーテストとは異なり,覚えればよいというものではないのです。時間をかけてじっくりと訓練していくことが大切です。
 あなたは,患者さんと良好な関係を築き,必要な情報を十分に収集するという,態度と技術をしっかり身につけていますか?
 内科診断学の授業や,臨床実習を通して,日頃から患者さんとの接し方や面接の仕方を積極的に練習しておきましょう。
(「週刊医学界新聞」編集室)


SP(模擬患者)から一言  

こんな医療者(医学生)に出会いたい

佐伯晴子(東京SP研究会)

 OSCEの医療面接では,受験者の面接能力を客観的に評価するために,面接相手として模擬患者(SP)が登場します。身体診察や他の技能部門では,受験者は技能がどれだけできるかを評価者に示すだけでよいのですが,医療面接では事情が少し異なります。SPという意思と感情を持った人間が受験者との面接を行ない,その過程を評価者が,面接能力として評価し,さらにSPは相手としての印象を一定の基準で評価するのです。
 医療面接では,できるだけ公平になるように,SPの演技と応答を標準化しています。ある規則に従って,複数のSPが同じことをするのです。また,印象についても恣意的にならないように,時間をかけて十分な調整をしています。
 さてコミュニケーションは人と人との相互作用ですから,一方的では成立しません。患者さんが医療機関をたずねて,初めて医師に会う,という場面です。患者さんは,医療者の手助けが必要だと感じるような,何らかの症状があります。これを伝えようと思って来ていますので,まず患者さんの話を聴いてください。尋問ではなく「聴く」ことから始めると,患者さんは「受けとめてもらえる」と感じ始めます。症状について詳しく話ができると,医療機関に来た目的の半分は果たせたようなものです。
 ただ,せっかく話した内容が正確に伝わっているとは思えない時や,患者として関心が持たれていないように感じる時には,たとえ多くの項目の質問があっても,信頼感は生まれにくくなります。
 目の前の患者さんを受け入れて,関心を持つ。そして受け入れること,関心を持っていることを相手にわかるように示すことが大切です。その方法は,具体的には態度と,言葉を使った確認が中心になります。相手への敬意,思いやりや,熱意,真剣さなどが態度に現れてきます。挨拶や自己紹介も元来はこれらの表現なのですから,形に心を添えてください。患者さんの話には,必ず意味があり確認を重ねると浮き出てくるでしょう。
 また,目の前の患者さんを「疾患」「症例」として見てしまうと,専門用語や素人にはわかりにくい表現が出やすくなるように感じます。相手に自分の話を伝えるには,相手と同じ言語を使う必要があります。そうして言葉が通じる喜びは,話し手と聞き手の心の距離をぐっと縮めます。頭の中では医学の専門語で理解し推論しても,患者さんに話をする時には,患者さんの言葉に置き換えること。いわば通訳の能力も求められているのです。
 最後になりましたが,SPが求めている医療者は,「ふつうに話のできる人」なのです。換言すれば,初対面としてごく当たり前の敬意が払われ一方的ではない話ができる人という意味です。そんなことなのか,と拍子抜けしてしまわれるかも知れませんが,いかに現実にはそうでない医療者が多く存在しているか,という証明でもあります。過去に一般的であった医療のあり方が,大きく変わってきています。医療面接の教育を通じて,患者さんとの関係を重視するという傾向は,なぜそれが必要か,という本質を理解し納得してこそ新しい,よりよい医療の実現に結びつくでしょう。
 患者としては,まず「医療という職業につく社会人(大人)としての適切な態度とマナー」は最低限有しているものと期待しています。そして,学年や経験に応じた正しい専門知識と確かな技術や技能を身につけていること。この両面が備わった医療者に,「人」として迎えられた時,来てよかったと思うのです。