医学界新聞

認定看護師の誕生に向けて

第3回日本糖尿病教育・看護学会開催


 第3回日本糖尿病教育・看護学会が,河口てる子会長(日赤看護大教授)のもと,さる9月26-27日の両日,「教育的アプローチの探究」をメインテーマとして,東京・千代田区のシェーンバッハサボーを主会場に開催された。
 今学会では,初日に会長講演,基調講演,特別講演およびシンポジウム「教育方法の再考-今,改めて教育方法を問う」(座長=千葉大 正木治恵氏,朝日生命糖尿病研究所 百田初栄氏)を企画。2日目には,一般演題発表(53題)を中心に,ミニシンポジウム「認定看護師(糖尿病教育・看護分野)をめぐって」が開かれた。なお,ミニシンポジウムでテーマとなった認定看護師の問題は,引き続き開かれた総会の場でも話題となり,認定看護師の育成へ向けて推進を行なうことが総会の席上で確認された。


「糖尿病療養指導士」の育成に向けて

 学会の開始にあたり,日本糖尿病協会(慈恵医大 池田義雄氏)から祝辞が述べられた。池田氏はその中で,日本における糖尿病の実態調査の解説を行なうとともに,糖尿病の診断基準に関し,空腹時血糖値がWHOに準じ,日本でもこれまでの140mg/dlから126mg/dlへと改正されること,日本糖尿病学会・日本糖尿病協会では,「糖尿病療養指導士」の育成に着手することが合わせて報告された。さらに池田氏は,糖尿病予防に向けたライフスタイルとして「一無二少三多(禁煙,少食・少飲,多動・多休・多接)」の生活法を提言した。
 一方河口氏は,会長講演「実践と理論の相互交流からアプローチの向上をめざして」の中で,「保健信念モデル」「自己効力理論」を紹介。また,「糖尿病の宣告は,患者の恐怖心をあおるアプローチではなく,それとなく知らせるほうが効果的。糖尿病の治療は,“実行可能なこと”だと本人がやる気になる方法を模索することが必要」と述べ,糖尿病教育や糖尿病看護研究へ向け,「失敗を恐れず,医師を恐れずにやっていこう」と参加者へエールを送った。
 また,基調講演「面接による人間理解」を行なった河合隼雄氏(国際日本文化研究センター)は,ユーモアのある口演の最後に,「医学と違った独自性のある研究を課題として,教育・看護を進めていってほしい」と会員を応援するメッセージを贈った。
 さらに,10年前に糖尿病と診断された漫画家の富永一朗氏は,「100歳まで絵を書きたい だから食べないんだ」と題し特別講演。「宣告を受けて以来,それまでの飲酒生活をまったく改め,食餌療法と徒歩を日課とした。現在も続けておりすこぶる健康」と強調。「チンコロ姐ちゃん」に代表される漫画を壇上で描き,参加者にプレゼントするという一幕もあり,参加者を勇気づける講演が続いた。

認定看護師をめぐって

 2日目に行なわれたミニシンポジウム(座長=千葉県立衛生短大 小林貴子氏,済生会向島病院 金木恵子氏)は,看護職を含めた糖尿病の療養指導にかかわる多職種を対象とする“糖尿病療養指導士”の育成準備が進められていること,一方で日本看護協会(以下,日看協)での認定看護師制度があることを背景に,「糖尿病教育・看護分野での認定看護師の導入と可能性」について考える場として設定。
 永野みどり氏(日看協)は,「認定看護師の現状と課題」を報告し,「明年からは認定看護師の育成期間が6か月から,1年コースとなる可能性があることを述べた。また,野崎祥子氏(慶大)はWOC(創傷,オストミー,失禁)認定看護師の立場から,その位置づけや活動状況,今後の課題などを提示した。メイヨークリニック(米)で糖尿病教育・看護を実践し学んできた箱石恵子氏(岩手県立中央病院)は,病棟における糖尿病教育・指導の現状と課題に関し,「実践を通して役割モデルとなること」を実践例の成果から報告。最後に齋藤拾子氏(東海大病院)は,看護管理者の立場から「認定看護師への支援育成のためには,活用する管理者の存在,身分保証も重要だが,過度の期待に押しつぶされることのない支援が必要」と述べた。
 認定看護師制度は,現在「救急」「重症集中ケア」「WOC」のコースがあり,これまでに94人の認定看護師(本年5月末現在)を誕生させているが,10月からは「ホスピス」コースも開講。また,「がん化学療法看護」「がん性疼痛看護」「感染看護」「訪問看護」の分野も特定されている。
 総会における同学会のワーキンググループの報告では,これらの現状と実態が報告されるとともに,今後の学会の意向として,「“糖尿病療養指導士”のベースの上に看護の専門性を生かした認定看護師(糖尿病教育・看護分野)を推進する」との方向を提言。日看協の認定看護師制度委員会へ向け特定の申請をすることが,本総会において承認された。
 なお,認定看護師育成実施に向けたスケジュールは,特定申請が認可されたとして,最短で1999年6月から日看協が募集,2000年3月までに試験を実施,同年4月開講(入学)となり,1年間の養成期間への移行も検討されていることから,誕生は2001年3月以降となる。今後,関連機関との調整が行なわれることとなるが,認定看護師の普及には,学会が独自に育成をするのではなく,日看協の“認定看護師”であることの確認とともに,身分保証を含めた処遇の問題,教育ならびに教育機関の問題などの解決を迫られよう。