医学界新聞

医師国家試験アンケート


 本紙では,第92回医師国家試験に合格した約50人にアンケートをお願いし,どのように医師国家試験に臨んだのか,その対策などいくつか質問に答えてもらった。今回はその解答から主だったものを紹介したい。
 解答によっては1人ひとりに矛盾しているものもある。それらをみて迷ったりすることもあるかもしれないが,この中から自分に合った対策や国試に対しての自分のスタンスなど,何かヒントが見つかるかもしれない。
 紙面の都合上,解答をすべては掲載できなかったことをあらかじめお断わりする。


国試対策はいつから始めたか

利用した教科書・参考書

(書籍名・出版社の横の数は解答人数,その下は回答者のコメント,シリーズ名が同一のものは出版社名を初回のみ記し,後述は省略)

『イヤーノート』(メディックメディア)20人
■内科,外科がよい・要点が1冊によくまとまっていた・過去問題に関する事項はほぼ完全に網羅されていた・まず総論があって次に各論というのがよかった・確かに要約しか載っていないが,それを軸にいろいろな教科書をひっくり返して病態生理の考え方を学ぶのに適していた・少ない時間で成果があがった・同級生のほとんどが持っていたが,実際に使ってみて,これ1冊あれば何とかなると思った・理解した上で調べ物をするのにいい
『Dr.Kのスーパーフレーズ』第2版(メディックメディア)3人
■覚えにくい症候や疾患のグループを楽しく暗記できる
『COMPASS』(MEC出版)2人
■国試だけでなく卒試にも十分役立った
『NIM Lecture』シリーズ(医学書院)
■はっきりと明解に理解するにはこの本が一番よい・生理・臨床までしっかりと書かれてあった
『今日の治療指針』(南江堂)
『今日の治療薬』(医学書院)
『各科に役立つ救急処置・処方マニュアル』(医歯薬出版)
『輸液を学ぶ人のために』(医学書院)
『×2,×3複択と禁忌』(医学評論社)
■禁忌の問題もあったので
『禁忌K.D.』(TECOM)
図書館の無数の成書
■国試のみを対象とした勉強をしたくなかった

●過去問題集
『アプローチ』シリーズ(医学評論社)8人
■『クエスチョンバンク』より解説が詳しい・いろいろなテキストをやってもやっぱり過去問。臨床問題の解説がよい・詳しい
『クエスチョンバンク』(メディックメディア)7人(以下QB)
■短時間で一般問題をこなせる・勉強会で利用した・デザインが気に入った・『アプローチ』に比べて説明がよく,無駄が少ないように思う・一般問題・臨床問題はこれ

●内科
『病態生理できった内科学』シリーズ(医学教育出版社)9人
■病態生理がしっかりわかれば丸暗記するものも減り,その点で役立つ・内科を「理解」するのに大変わかりやすい
『チャート内科』(医学教育出版社)5人
『内科学』(朝倉書店)3人
『新臨床内科学』(医学書院)2人
■ちゃんと書いてある・読みやすい・4年時から使っていて慣れているものが一番よい
『国試内科学』(医学評論社)
『QB内科一般問題』
■過去問の数が多いのに,比較的時間がかからない
『新・肝胆膵画像診断テキスト』(文光堂)
『Goldman図解心電図学』(金芳堂)
■イメージしながら心電図が理解できた
『内科学アトラス』(朝倉書店)
『なぜかと問いかける内科学―岸本忠三教授の講義ノート』(中山書店)
■普通の本とは別の視点での切り込みが新鮮

●外科
『標準外科学』,『標準脳神経外科』(ともに医学書院)

●小児科
『国試マニュアル100%小児科』(医学教育出版社)4人
■直前に知識を詰め込む際,簡潔に書かれていてよかった
『NEWチャート小児科』(医学評論社)2人
『標準小児科学』(医学書院)
『クエスチョンバンク小児科一般問題』

●産婦人科学:
『Newチャート産婦人科』4人
■知識ゼロの状態からでも理解できた
『COMPASS産婦人科』3人
■国試用にまとまっていた
『Patternで考える国試学 産婦人科編』(医学評論社)
■産婦人科の膨大な知識がコンパクトにまとめられているので,知識を体系化し整理するのによかった

●マイナー科目
(眼科,整形外科,皮膚科,耳鼻咽喉科,泌尿器科,放射線科,麻酔科,精神科)
『国試マニュアル100%』8人
■短時間で1科目の大体の全体像とツボをおさえることができると思う
『NEWチャート医師国家試験対策』シリーズ3人
『国試コアマイナーATLAS』(医学評論社)
『100問のススメ』シリーズ(医学教育出版社)
『標準』シリーズ(医学書院)
『麻酔科入門(改訂第6版)』(永井書店)
■呼吸生理がわかりやすい。また「参考」の項は読み物としておもしろい
【整形外科】
『国試マニュアル100%整形外科』
『標準整形外科学』(医学書院)
■読みやすく,よくまとまっている・図・写真が多い
【皮膚科】
『皮膚病アトラス』第4版(文光堂)
『新皮膚科学』(日本医事新報社)
■丸暗記になりそうな皮膚科がそうではなくなった
【眼科】
『標準眼科学』第7版(医学書院)
『国試マニュアル100%眼科』第2版
【公衆衛生】
『NEWチャート公衆衛生』
『サブノート保健医療論・公衆衛生学』(メディックメディア)
『QB保健医療論・公衆衛生学』

効果的だった試験対策

(1)ノート・カードづくり
■内科は難しい部分を書き出して1冊のファイルにして直前に見直した
■問題を解きながら,ポイントや自分のわからないことをカードにつくっておいた。直前にかなり役に立った
■内科,小児科,産婦人科は自分で病態や疾患について暗記用ノートをつくった

(2)病態生理の把握
■過去に出題された病態生理を中心に
■夏休みまでは病態をとらえることに重点
■直前1―2か月までは,しっかり病態を理解するのがよい
■病態生理の把握の徹底

(3)実習(ポリクリ)を国試にいかす
■実習で回っている科ごとに『アプローチ』などの問題集を解いた
■内科についてはポリクリが始まるまでにひと通り一般問題を終えたので,ポリクリで国試的な内容を復習しながら知識に厚みをもつことができた

(4)科目別・マイナー
■卒業試験にあわせて国試の問題を解く
■婦人科のホルモンの役割を表にまとめるととても理解しやすかった
■マイナーは自分だけで勉強するとポイントがわからなくなったり,範囲が広すぎてやる気をなくすので,予備校のマイナー講習をベースに,問題集はその復習,確認に利用

(5)教科書,参考書の使い方
■『チャート』のような簡単な本を通読しておおまかな概念をつかみ,不明な点は成書で確認
■前もって教科書を読んでおくと,問題集を解くとき楽だった
■どの科も6年の夏くらいまでは成書を何度も読み返し,興味のあるところはさら突っ込んで調べるようにした
■国試対策本や過去問を使った暗記は半年あれば十分間に合ったし,過去問もスムーズに解くことができた
■1つの科目ばかりだと他の科目を忘れたりするので,模試や年度別の過去問をもう一度やり直すとまんべんなく勉強できて,いろいろな知識が混ざり効果的であった
■『KOKUTAI(医師国試対策)』(医学教育評論社)の特集
■D問題対策は『KOKUTAI』と模試(TECOM,MEC)で上等
■必修問題は,国試出題基準の必修の基本的事項にそって

(6)グループ学習
グループ学習では,画像,心電図などのある問題を解くほうが心に残る 友人と「この分野は何日間でやる」と決めて,それぞれやるか,その友人と一緒に勉強する。自分1人ではかどらない時,苦手な分野の時にこのようにやるとよかった
苦手な分野は集中してやる。友人に教えてもらう

これから国試を受ける人へ

(1)いつ勉強をはじめるか
■早く始めたほうが楽なんだろうけれど,遅くてもなんとでもなる。直前は精神的につらいので上手に平常心を保とう
■BSTを重視していれば直前3か月でもまず合格できる
■勉強はメリハリをつけてやるのがいいと思う。「今日から国試勉強」という日を決めて,その日からは勉強中心にする
■自分の周りをみると国試対策を早くから始めすぎて途中でだれたり,飽きたりしている人が多かった。ある程度の知識はみんな持っているので,1か月前からでも集中すれば大丈夫だと思う。例えば私の友人は結婚の準備に忙しく,2月の模試でビリのほうだったが,国試までの3週間集中したらちゃんと受かった。落ちた人は早くからあきらめた人が多かった
■早めに取り組んだほうがよい

(2)国試準備について
■国試は毎日の積み重ねが重要だと思う。直前に集中して合格する人もいるが,やはり自信を持って合格するには日々の努力が大切であると思う
■国試に出題されている問題は,臨床医学の土台となるものである。基礎医学の薬理学,病理学を終えた時点でも,十分国試過去問題に取り組める。ぜひ早めに国試過去問題に取り組み,ポリクリ開始時には国試を越えたレベルで実習に取り組まれたい
■難しい問題もあることはあるが,基本的にやさしい問題を確実にしていく勉強がまず大切だと思う
■基本的なことは全体に必要。重箱の隅をつつくような問題は気にしない
■やはり基礎が大切だと思う。わからなくなったら,解剖や生理など基本に(特に内科や外科)戻って,それから臨床問題に取り組むとよい。一見回り道のようだが,そのほうが幅も広がるし,類似問題にも対応できるのでよいのでは
●ポリクリ
■ポリクリなどで見ることが,必須問題の基本的なところに出ていたと思う
■ポリクリでの生きた情報が役立つ
●教科書・参考書
■『イヤーノート』や『チャート』など対策本は不必要だと思う。覚えられないままでも何度か教科書を読み返して骨組みをつくっていくほうが最後は楽になる。暗記物は半年あれば十分
■教科書や参考書など,本はこれと自分で選んだら,徹底的にそれを使いこなす
●模試
■模試を繰り返すとよい(特に10月以降のやつ),模試を多く受ける
●過去問題
■過去問題の数をこなすのも大事だと思うが,本を何回も読んで系統立てて理解していくことが,これからは必要だと思う
■過去問題をテストのように解いてみたり,模試を受けてみたりすることで,自分の苦手,弱点の分野がはっきりしてくる
■国試は小問にこだわるよりも,過去問なるべく早く,しかしこだわりながら何度も解き直すことが重要と感じた
●直前の過ごし方
■最後の1週間は徹底的に前年度の模試をみて,あと直前情報もゲット
■直前のFAXや情報は一見の価値がある
■直前はD問題対策を十分にするべき

(3)科目別,必修問題・禁忌肢など
■とにかく内科が基本
■内科は覚える前にまず基本を理解することが重要
■正常値は直前にでも頭に入れ直しておくべきである
■D問題については,ポリクリの知識が必要である(普通にポリクリをやっていれば大体解ける問題であるが)
■小児科,産婦人科は覚えるべき細かいことがたくさんあるが,ちゃんと覚えていると点数が取れる科目である
■公衆衛生で着実に点を取る。マイナーを馬鹿をしない
■必修対策はしたほうがいい
■必修問題対策やマイナー対策が重要
■禁忌肢をまとめてある問題集を1冊読めば,禁忌肢対策も十分

(4)試験
■今年一番驚いたのは法医学の問題が出ていたこと
■プライマリ・ケアの問題が多い
■第91回から明らかに傾向が変わっている。古い問題はやってもしょうがないと思うので,せいぜい5年分くらいやって,メジャーな疾患をしっかりやっておけば自然と必須対策にもなるのでよいのでは
■本番では今まで聞いたことのない選択肢は選ばない。ひねった考え方をする必要もなく,模試の時のように素直に考えればよいと思う

(5)みんなが知っていることを落とさない
■みんなと同じことを。模試で全国の医学生ができているのにまちがった問題などは絶対復習すべき
■いくら「アプローチを全部解いた」と自慢していても,ちゃんと理論がわかっていない人は成績も伸びず,国試に落ちていた
■とにかく他の人と同じことをやれば落ちることはないと思う。特に一般問題でも6割をきる心配はさほどさぼらない限りないだろう。しかし必修問題は特別な対策が必要なので,早いうちから問題をやっておくと前日によく眠れると思う
■広く浅く勉強すること
■言い方が悪いかもしれないが,普通に医学生をしていれば誰でも全体で6割はとれると思う

(6)その他
■体調を調えることが一番大事だと思う。受験地が遠くて飛行機で行くとなるとそれだけで体調を崩すこともある。また睡眠は十分にとるべき。教室が暖かくて眠りを誘われてしまうこともある。実際にテスト中にうとうとしてしまう人が多かった
■不安になる時はひたすら勉強することだと思う
■難しく考えず,基本を押さえて6年分の知識を想像で発展させてみては。きちんと理詰めで考えれば,理由がちゃんとあるものは覚えなくても考えつくものが多い


最後に,このアンケートに答えていただいた方々に厚く御礼申し上げます。

(週刊医学界新聞編集室)