医学界新聞

1・9・9・8
新春随想

看護婦養成一本化に向けて

見藤隆子(日本看護協会長)


 昨年は,介護保険法や医療保険制度改革など国にとって重要ないくつかのことが論議され決められた。これらの動きの中で,医療・看護の質の向上が国民からも求められており緊急の課題になるであろう。その意味からも看護職者にとっての最大の関心事は,看護基礎教育の一本化であり准看護婦養成停止問題と言わなければならない。

准医師がいたとしたら

 日本医師会の方々も,准看護婦の基礎資格が中学卒であるのを時代にそぐわないと考えてはおられるようである。そこで,高校卒業後2年間の教育で准看護婦を養成すると言われる。しかし,日本の法律(保健婦助産婦看護婦法)では,准看護婦は看護婦の指示の下に働くことになっている。同じ基礎教育の上に専門教育1年の違いで,片や指示する人,片や指示される人と資格を区別するのは,いかにもおかしい。
 日本医師会の方々は,ILOが看護婦の3層構造(専門的看護婦,補助的看護婦,看護補助者)を認め,准看護婦を認めていると言われる。しかし,ここに大きな事実誤認がある。ILOが行なっている補助的看護婦は,あくまでも看護婦の監督の下に働く人であって,医師と補助的看護婦とで働くということは,想定されていない。
 保助看法上では,准看護婦は,医師,歯科医師,看護婦の指示の下に働くとなっているために,看護婦がいなくとも医師の指示があれば,働けることになっている。つまり,看護婦の指示でも働くことになっているが,看護婦の指示はなくともよい。このことが,准看護婦に看護婦と同じ仕事をさせる原因になっている。
 医療職種の中で2分の1の教育時間で同じ業務を許している国が他にあるだろうか。しかしこのことを,国民はまったくと言ってよいほど知らない。国民は,自分の受けているケアは,看護婦からなのか准看護婦からなのかを知らされていない。
 2分の1の教育の准医師というものがいたら,知る権利,情報公開,インフォームドコンセントの時代であるから,当然国民は,資格の提示を求めるであろう。
 しかし,いまさら准看護婦であることを明示せよと言う気はない。

教育の現状に合わせた解決を

 つまり日本では,すでに看護婦は3層構造で働いていないのである。資格は3層(看護婦,准看護婦,看護補助者)でも,働いている現実は2層(看護婦,看護補助者)である。働いている現実からすると,同じ仕事をしている准看護婦を差別するのは理に合わない。高校卒業者が95%を占める日本では,准看護婦教育制度そのものが現実を無視したものなのである。
 アメリカの准看護婦に相当するLPNは,行なってはならない看護業務が法によってハッキリと決められている。たいした医療を行なっていない医療機関は,LPNだけで済むかもしれないが,そのような医療機関は,患者を集めることができないであろう。
 厚生省の「准看護婦問題調査検討会」の資料からしても,准看護婦になりたくてなったというよりも看護婦になりたかったと言う人が圧倒的である。
 ここで述べた限りのことからしても,准看護婦教育を続ける理由を見出すことはできない。
 本年こそは,この問題の解決へ向けて大きく前進できる年でありたいと願っている。