医学界新聞

金原一郎記念医学医療振興財団

第12回基礎医学研究助成金贈呈式開催


 このほど,金原一郎記念医学医療振興財団(理事長=理化学研フロンティア研究システム長,前日本学術会議会長 伊藤正男氏)が実施している助成事業である,第12回基礎医学医療研究助成金の対象者が決定。さる9月26日に東京の医学書院本社において贈呈式が開催された(なお,助成対象者の氏名ならびに研究内容は本号13面に掲載)。
 同財団は基礎医学の振興を目的に,毎年(1)基礎医学医療研究助成金,(2)研究交流助成金,(3)留学生受入れ助成金,(4)研究出版助成金の4つの助成事業を行なっている。今回の基礎医学医療研究助成金では,応募者総数282名の中から35名が助成対象として選出され,総額1520万円が助成された。
 贈呈式では,最初に財団を代表し,金原優常任理事(医学書院社長)が挨拶。「これを1つの励みとしてさらによい研究をしてほしい」と祝辞を述べた。また,選考委員長を務めた野々村禎昭氏(帝京大教授)は選考経過を報告。「今年度は応募者のレベルが高く,数年来の大激戦となった。その中から選ばれた方々には胸を張って自慢していただきたい。またわれわれも非常に期待している」と激励の言葉を贈った。
 当日は助成対象者のうち鈴木秀典氏(日本医大),山本晃氏(東医歯大)の2名が出席。代表として挨拶に立った鈴木秀典氏は「これまで続けてきたことや,これから取り組もうと思っていることが,サイエンスの世界の大先輩や,サイエンスを支える人々に評価していただいたことは,われわれ若い研究者にとっては何よりの喜び。与えられた研究の機会を大切にし,それぞれの分野の発展に寄与し,ひいては社会に還元できるよう努力していきたい」と感謝の意を表した。


第12回基礎医学医療研究助成金交付対象者および研究内容

(1)伊藤和幸(大阪成人病センター):腫瘍細胞の浸潤における低分子量G蛋白質Rhoを介するアクトミオシン系の活性化の制御
(2)上田陽一(産業医大):ウロコルチンの視床下部―下垂体系における生理的役割の解明
(3)牛木辰男(新潟大):原子間力顕微鏡による生きた細胞の立体画像化
(4)大谷清(東医歯大):哺乳動物細胞のDNA複製制御機序の解析
(5)大野博司(千葉大高次研):チロシン輸送シグナルを認識するAPμ鎖ファミリーの機能―遺伝子欠損マウスによる解析
(6)岡本尚(名市大):転写因子NF-kBに関する分子論的研究
(7)奥村明之進(阪大):胸腫瘍における自己免疫疾患発症機序解明のための分子生物学的研究
(8)北間敏弘(山梨医大):覚醒ネコ小脳機能モジュールによる3次元空間眼球運動の最適制御平面
(9)久下理(国立感染症研):動物細胞におけるホスファチジルセリンの生合成調節機構に関する研究
(10)櫛泰典(東医歯大):ヒト各組織におけるシアル酸修飾とその発現解析
(11)小坂克子(九大):嗅覚情報機能的単位である嗅球糸球体についての定量的,定性的解析
(12)渋谷彰(岡山大):キラーリンパ球に新たに見出された接着分子DNAM-1のシグナル伝達機構の解析
(13)白澤浩(千葉大):RDAによるHPV陰性子宮頚癌発がん関連遺伝子の同定
(14)菅谷公男(琉球大):除脳ネコの反応性排尿時の脊髄へ投射する橋披蓋ニューロンの発射特性
(15)菅原照夫(北大癌研):ステロイドホルモン産生におけるStAR蛋白の役割の解明
(16)鈴木隆(静岡大):インフルエンザウイルスの宿主間伝播と糖鎖受容体認識の多様性について
(17)鈴木秀典(日本医大):運動ニューロン疾患筋におけるグリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)ファミリー発現異常の解析
(18)田中潤也(愛媛大):マイクログリアの産生する神経細胞のアポトーシス抑制物質の同定
(19)田村功一(横市大):遺伝子欠損マウスを用いたレニン・アンジオテンシン系遺伝子発現調節についての検討
(20)錦見俊雄(国立循環器病センター):アドレノメデュリンの循環器疾患における病態生理的意義の解明と治療への応用
(21)原明義(旭川医大):フリーラジカルによる心筋障害の機序とその防御に関する研究
(22)針谷康夫(群大):脳アミロイド形成機序の研究―家族性アルツハイマー病の新遺伝子プレセニリンからのアプローチ
(23)土方貴雄(群大):膜ドメインと細胞骨格との構造相関―骨格筋形質膜ジストロフィンドメインの細胞骨格への分子関連構築
(24)范江霖(筑波大):動脈硬化研究のためのアポ蛋白(a)過剰発現トランスジェニックウサギ・モデルの開発
(25)藤井雅寛(東医歯大):HTLV-1関連炎症性疾患発症の分子機構
(26)本間好(福島医大):発生工学を用いたホスホリパーゼC機能の解析
(27)松浦稔典(熊本大):アンジェルマン症候群の発症機序の解明
(28)宮石智(岡山大):異状死体におけるHBV,HCV,及びHIVへの感染率
(29)村垣泰光(和歌山医大):ネイルパテラ症候群原因遺伝子のクローニング
(30)村田宮彦(京大):神経移植を用いた中枢神経損傷の治療モデル
(31)矢部千尋(京府医大):糖尿病合併症の危険因子であるアルドース還元酵素の発現と遺伝子多型性の解析
(32)中山伸弥(阪市大):蛋白質翻訳阻害因子NAT1の生体内機能および癌化への関与の解明
(33)山本晃(東医歯大):インターロイキン12によるシグナル伝達経路と遺伝子制御
(34)吉開泰信(名大):IL-15の生体防御機構における役割
(35)渡辺雅彦(北大):神経細胞移動とグルタミン酸トランスポーター