第2262号 1997年10月27日


「看護診断」をグループワークで

第2回NDC(看護診断研究会)セミナーが開催される


  

 日本赤十字看護大学内に事務局をおき,同大学を中心に活動しているNDC〔Nursing Diagnosis Conference:看護診断研究会,黒田裕子代表(日赤看護大),川島みどり副代表(健和会臨床看護学研究所長)〕の第2回セミナーが,さる8月9日,「現場に生きる看護診断:看護診断に伴う諸問題を看護記録から読み取ってみよう!」をテーマに,日本赤十字看護大学で開催された。

日本語によるラベル化が今後の課題

 同セミナーでは,午前中に川島みどり氏と黒田裕子氏(日赤看護大教授,NDC副代表)の教育講演「看護診断で陥りやすい傾向と対策」が行なわれた。
 まず黒田氏は,「妥当な看護診断を導き出すにあたって,看護者のアセスメント・プロセスは妥当であろうか」との視点で講演。「看護職は患者を丸ごと診る集団であり,人をどうとらえ,どう理解していくかに挑戦している領域」と述べ,アナムネ聴取も「看護の視点になっているか,患者の人権は保障されているか,看護理論が必要だと思い込んでいないか」などの視点の必要性を強調した。また,「患者理解のためのアセスメント能力が看護職は弱い。考えるための思考ができなければ看護診断はできない」と示唆。さらに「北米とは文化の違いがある。看護診断名の日本語によるラベル化は,今後日本側が考えていかなければならない課題」と述べた。
 続いて川島氏が,「看護者の思考の傾向とそれに影響する要因」を中心に講演。看護診断がうまくいかない理由として,時間がないための勉強不足,情報不足,適切な看護診断名がないことなどをあげた。さらに思考の傾向として,(1)患者の生活が見えてこない,(2)看護者の価値観の押しつけ,(3)思考過程における情報の意味づけ不十分,(4)情報の見落としあるいは軽視をあげた。川島氏は(1)について,「看護者自身の生活感覚,生活体験の貧困」を指摘,「看護職は患者を診る時に,さまざまな人間がいることを知っていなければならない。豊かな感性を育むには,豊かな生活が必要であり,欠如すれば的確な看護診断にはつながらない」と述べた。また(4)に関連しては,病棟カンファレンスが有効に機能していない,指導者がいない,記録フォーマットに問題があることを指摘。これらの対策として,独りよがりからの脱皮,情報をどう読み取るか,ありのままの状況をありのままに受け入れる,判断は集団ですることなどをあげた。

事例からグループで診断を

 午後には,事前に資料として配付した事例(大腸の悪性リンパ腫の疑いで11月2日に内科に入院した68歳の男性。生検の結果腫瘍が認められ,すぐに手術が必要だが,心臓疾患がありリスクが高く,同年11月29日に外科に転科)の入院当初のアナムネ用紙,翌年1月9日までの看護記録などを基に,参加者が8グループに分かれ,グループワークを行なった。
 ここでは事例患者の,(1)11月7日および1月9日時点での全体像について,看護者と同様の情報のみを基に話し合う,(2)看護者のあげた診断(関連因子,診断目標,診断名,看護介入の方向性)をどう考えるか,(3)グループとしては,診断をどう考えるか,(4)診断過程を展開するうえでの臨床での問題点は何か,日頃の自分たちの現実を加味し,臨床での問題を話し合うことを目的として実施された。検討の結果グループから提示された看護診断名には,「無効な個人コーピング」「自己尊重の状況的低下」「意思決定上の葛藤」「安楽の変調」などをあげる一方で,「適当な診断名が見あたらない」とするグループも複数あった。
 川島氏と黒田氏は,提示した事例の中にはキーワードとして(1)絶望感,(2)無力感,(3)自己尊重の障害,(4)意思決定上の葛藤,(5)不安があったことを述べるとともに,「グループで検討したことが重要。結果として結論(診断名)が出なければないでもよいのではないか。看護診断は患者の看護ケアを導き出すものであり,1つの看護診断名に振り回されるよりも,全体の枠の中でとらえることが重要」と解説。最後のまとめにあたり,「レッテルを張るよりも,討議をすることが重要であり,現場でもよりよいケアのためのディスカッション重ねていってほしい」と述べ,セミナーを終えた。