第1回臨床解剖研究会開催
第1回臨床解剖研究会および設立総会が,佐藤達夫会長・当番世話人(東医歯大医学部教授・解剖学)のもと,さる7月5日,東京の東京医科歯科大学歯学部特別講堂において開催された。
この研究会は,従来から活動を続けてきた「臨床解剖懇話会」を全国的な規模に発展させ,より深い研究とその応用を図ることをめざして発足したもので,その趣意書には,「人体の構造と機能を解剖学的に研究し,その成果を臨床に応用することによって外科療法の開発と発展,各種診断法の精度向上に寄与することを目的とする」と明記されている。
基礎(解剖)と臨床との連携が,今日ほど求められている時はない
また同趣意書では,「いかなる領域の手術術式も解剖学的見地に基づいて構成されていることは言うまでもなく,最近その術式はますます発展し,より詳細な議論が求められようになった」と前置きし,「特に悪性腫瘍に対する手術療法はより高い根治性を追求するとともに,術後のQOLをも高めるために,諸機能保全を考慮した術式が求められている」と指摘。さらに「悪性腫瘍以外の手術療法においても諸機能保全,機能回復は大きな目的の1つであり,このような術式の臨床応用のためには詳細かつ高精度の術前診断能も要求される」と述べ,「このような時代に,今日ほど臨床と基礎(解剖)との連携が求められている時はない。そこで解剖学的研究の成果を日頃の臨床に応用し,医学,医療の発展に貢献することを本研究会の目的とする」と強調している。設立記念シンポジウム:骨盤の臨床解剖を深めるために
佐藤会長の開会の挨拶に続いて開かれた「設立記念シンポジウム」(座長=佐藤会長)は,研究会設立の主旨を体現して「骨盤の臨床解剖を深めるために」をテーマとした。まず,佐藤健次氏(東医歯大)が「骨盤の動脈」と題し,骨盤外科の基礎資料として,解剖実習体81体123側を用いて検索し,内腸骨動脈の分岐様式に関する基本型を検討。その結果,「内腸骨動脈の分岐の基本型は,内腸骨動脈本幹から上殿動脈が起こり,その後に外側仙骨動脈,次に閉鎖動脈を分岐した後,臍動脈索が起こり,上膀胱動脈が起始する。そして,臍動脈の分岐部から子宮・精管動脈が起こり,その下部で下膀胱動脈,中直腸動脈と順次分岐した後に内陰部動脈となり,下殿動脈は分岐部より下部で起始する」と報告した。次いで渡邊泱氏(京府医大)が「骨盤内静脈うっ滞症候群(IVCS)と骨盤解剖」を,また大木繁男氏(横市大)が「射精機能を温存する直腸癌手術のための解剖-腰内臓神経の走行と下腸管膜動脈の関係」を,高橋孝氏(癌研)が「筋膜:層構成から見た骨盤内の解剖」を発表。一方,一般演題では,(1)骨盤内臓,(2)頭頸部,(3)食道・胃,(4)肝胆膵,(5)腹壁・骨盤壁等と広範多岐にわたったテーマに関する発表があり,さらにランチタイムには,特別講堂の隣室において「稀覯解剖図書展示」を開催。多くの参加者が足を止め,しばしの休息のひと時を満喫していた。
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