医学界新聞

●保健婦助産婦看護婦学校養成所指定規則の一部が改正


 さる3月24日,文部省および厚生省は各都道府県知事(および教育委員会)あてに「保健婦助産婦看護婦学校養成所指定規則(昭和26年制定)の一部を改正する省令の公布について」を通達,4月1日からの施行を公布した。今回の改正は,特に准看護婦養成所において行なわれている,特定の医療機関への勤務を入学条件とするなどの実態に歯止めをかけるものとして注目される。また,勤務しないことを理由に不利益な取り扱いをしないことなどが盛り込まれた。以下に,その改正内容を記す。


1 改正の趣旨
 今回の改正は,高齢化の進展,医療の高度化・専門化,少子化等の看護を取り巻く環境の急速かつ大幅な変化に伴い,看護婦等の教育課程も高度化している状況の中で,特に准看護婦養成所において,医療機関への勤務が強制されることにより,就学と勤務の両立の困難から,看護の知識や技術の体得が十分に行なわれていないという現状が指摘されている。このため,保健婦学校養成所,助産婦学校養成所,看護婦学校養成所および准看護婦学校養成所において,十分な養成が実施される環境の整備が担保されるよう,その指定基準を改正するものである。
2 改正の要点
 「特定の医療機関に勤務または勤務していることを入学または入所の条件とするなど学生もしくは生徒またはこれになろうとする者が特定の医療機関に勤務しない,または勤務していないことを理由に不利益な取扱いをしないこと」を保健婦・助産婦,看護婦学校養成所および准看護婦学校養成所の指定基準とするものである。
3 実施にあたり留意すべき事項
(1)特定の医療機関
 特定の医療機関とは,特定の1か所の医療機関である場合だけでなく,特定の医療機関のグループに属する医療機関,その他特定の複数の医療機関から選択できる場合等も含まれるものである。
(2)不利益な取扱い
 特定の医療機関に勤務しない,またはしていないことを理由に不利益な取扱いをしていると考えられる例としては,以下のものがあげられるので,指導に当たっての参考とされたい。
ア)入学または入所の条件としている例
●特定の医療機関で勤務する者または勤務している者であることを,学則等により,入学の条件としていること
●特定の医療機関で勤務する者または勤務している者であることを,募集要項等により,受験資格としていること
●特定の医療機関の関係者を保証人とした身元保証書の提出を義務づけること
●入学に際し,特定の医療機関に勤務する旨の契約書等の提出を義務づけること
●入学に際し,特定の医療機関に勤務することを貸与条件とするなどにより特定の医療機関での勤務が強制されるような奨学金の受給を義務づけること
●すべての入学者に関して条件を付していないが,推薦入学者等特定の者のみに上記のことを義務づけること
イ)その他の不利益な取扱いの例
●アのことを,在学するための条件または卒業するための条件とすること
●特定の医療機関に勤務しない者または勤務していない者に対して,学寮等の利用を認めないこと
●特定の医療機関に勤務しない者または勤務していない者に対して,証明書類等を発行しないこと
●特定の医療機関に勤務しない者または勤務していない者に対して,実習を受けさせない,実習等で特別の金銭的負担を課すなどの取扱いをすること
●特定の医療機関に勤務しない者または勤務していない者に対して,他の者に比べて余分な時間の実習の履修の義務を課すこと
●特定の医療機関に勤務しない者に対し,保証金など特別の金銭的負担を課すこと
●受験料,授業料等で差を設けることにより,特定の医療機関への勤務を希望しない学生または生徒に対して,勤務を義務づけようとすること
●出願手続,選考方法等で差を設けることにより,特定の医療機関への勤務を希望しない学生または生徒に対して,勤務を義務づけようとすること
(3)その他
ア)医療機関に勤務している者については,その勤務を実習とみなすことによって,保健婦助産婦看護婦学校養成所指定規則に定められた臨地実習等の一部を免除することは,そもそも,認められないものであるので,留意されたい。
イ)今回の改正に伴い,学校または養成所の学則の変更等が必要となる場合については,遅滞なく改正するよう指導されたい。

文部省・厚生省令第1号
 保健婦助産婦看護婦法(昭和23年法律第203号)第28条の規定に基づき,保健婦助産婦看護婦学校養成所指定規則の一部を改正する省令を次のように定める。平成9年3月24日

文部大臣 小杉隆・厚生大臣 小泉純一郎


保健婦助産婦看護婦学校養成所指定規則の一部を改正する省令
 保健婦助産婦看護婦学校養成所指定規則(昭和26年文部省・厚生省令第1号)の一部を次のように改正する。
第5条,第6条及び第7条第1項に次の1号を加える。
 12)特定の医療機関に勤務する又は勤務していることを入学又は入所の条件とするなど学生若しくは生徒又はこれになろうとする者が特定の医療機関に勤務しない又は勤務していないことを理由に不利益な取扱いをしないこと。
第7条第1項に次の1号を加える。
 13)特定の医療機関に勤務する又は勤務していることを入学又は入所の条件とするなど学生若しくは生徒又はこれになろうとする者が特定の医療機関に勤務しない又は勤務していないことを理由に不利益な取扱いをしないこと。
第8条第1号中「入学」の下に「又は入所」を加え,同条に次の1号を加える。
 13)特定の医療機関に勤務する又は勤務していることを入学又は入所の条件とするなど生徒又はこれになろうとする者が特定の医療機関に勤務しない又は勤務していないことを理由に不利益な取扱いをしないこと。
附則
この省令は,平成9年4月1日から施行する。