医学界新聞

●CD95リガンド発現の抗腫瘍効果

 リンパ腫細胞でのCD95リガンド(CD95L)の強制的な発現が,組織適合性をもつマウスの生体内での腫瘍の増殖および形成を防ぐこと,そして,この拒絶が好中球の選択的な誘引および活性化によって仲介されることを,順天堂大学ほかの清野研一郎たちが報告している。
 この遺伝子導入した腫瘍細胞の移植は,修飾されていない元の腫瘍細胞をその後接種しても,生体内でのその増殖と腫瘍形成に対して長く持続する防御的免疫を誘導する。この防御は,CD8T細胞によって仲介される。この成果は,炎症誘導後の組織の拒絶および破壊に対するCD95Lの保護効果を示すこれまでの諸論文と矛盾するが,CD95Lの発現状況によって拒絶が促進されたり妨害されたりすることを示唆している。この知見は,CD95Lに起炎症性機能(局所的な組織の損傷および全身性免疫を導く)があることだけでなく,抗腫瘍治療におけるCD95Lの有用性も示している。