医学界新聞

在宅ケアに携わる専門家が一堂に

日本在宅ケア学会第1回学術集会開催


 昨年2月に「在宅ケアの学術的発展と教育・普及を図り,人々の健康と福祉に貢献すること」を目的に設立された日本在宅ケア学会(理事長=東医歯大教授 島内節氏)の第1回学術集会が,高崎絹子会長(東医歯大教授)のもと,さる1月18日,東京・港区のニューピアホールで開催された。
 記念すべき第1回のメインテーマは「少子高齢社会における在宅ケアのみち 途をひら 拓く」。「在宅ケアの実践と研究活動には,多くの専門職の協力が必要であり,行政と民間,一般市民の参加も不可欠」との学会主旨に基づき,医療職や福祉職,さらには行政,企業など,多領域の専門家が一堂に会し,在宅ケアの実践と理論,将来展望などについて報告,討議がなされた。
 午前中の30題の一般演題に引き続き,午後には会長講演「在宅ケアにおける学術的アプローチの必要性-老人虐待とアドボカシーの課題を通して」(高崎絹子氏)とシンポジウム「在宅ケアにおけるケアマネジメント・ケアプラン-公的介護保険制度の導入に向けて」(司会=日本社会事業大教授 前田大作氏)が行なわれた。

緊急課題である在宅ケア対策

 高崎氏は会長講演で,「ケアマネジメントとケアコーディネートとは同義語」と述べるとともに,在宅ケアおよびケアマネジメントの定義を解説した。また,「T(理論)P(実践)R(研究)を確立することが学会構築の基盤である。少子高齢社会における保健医療福祉サービスを考えていく上では,仲よく傷をなめ合うのでなく,それぞれの領域での実践,研究を基盤に協同して議論を進めていきたい」と,学会の主旨でもある学際的なアプローチの必要性を訴えた。
 さらに,高崎氏が取り組んでいる老人虐待の問題に関しては,171例の老人虐待調査の実態を報告。「ADL障害,痴呆のある者が被害者の7割を占める。予防対策として,総合的な保健福祉対策の確立が重要かつ緊急であり,法・制度の改正と同時にきめ細やかなサービス提供のシステムを構築する必要がある」と述べた。
 一方,「公的介護保険制度」の問題については「2000年実施が難しいとの声を聞くが,設立に向けて動きだすのは今。学会としても何らかの指標を示す必要もあろう」と,現在の課題・問題を提示し,制度が円滑,効率的に運営されるための機関として,(1)企画・運営・専門相談,(2)情報収集・提供,(3)マンパワーの確保・研修,(4)研究・開発のサービス提供のできる専門支援センターの設置を提案した。

ケアマネジメントをめぐって

 シンポジウムでは,石塚輝雄氏(板橋区長)が行政の立場から,加藤ハマ子氏(若林訪問看護ステーション)が訪問看護ステーションにおける実践から,島内節氏は教育・研究の立場から,竹内孝仁氏(日医大)が現場からの報告を,また白澤政和氏(阪市大)が法的立場から登壇し意見を述べた。
 この中で竹内氏は,「在宅,施設で盛んに用いられ,大混乱を起こしているケアマネジメント,ケアプランの意味と位置づけを整理する」との前提で発言。「(1)病院ではケアマネジメントとは言わず,あるのは“看護計画”,(2)同じく老健施設にあるのは“看護・介護計画”,(3)特養ホームは“広義の介護計画”で,これを“処遇計画”と呼んでいる」と述べ,「アセスメントとケアプランの手続きが行なわれればケアマネジメントだというのは誤解である。各施設ではすでに必要なケアサービスが行なわれており,ケアマネジメントは在宅サービスの領域に限定して用いられるべき」と問題を投げかけた。また,「訪問看護やヘルパーの対象者には“生活援助プラン”が,デイサービス,特養入所者には“専門的プラン”が必要であり,看護を内容とするアセスメントとケアプランは“看護ケアプラン”として,ケアマネジメントとは区別しなければならない」と提言。
 竹内氏の発言をめぐっては,その後の総合討論でも話題となり,フロアを含め賛否の意見が噴出した。