医学界新聞

第104回医学書院看護学セミナー開催



 「第104回医学書院看護学セミナー」が,戸田律子氏(JACE日本出産教育協会代表)を講師に迎え,さる11月7日,新潟市の新潟市民プラザにおいて開催された。今回のテーマは,「新時代。求められるマタニティケア」。
 ヨーロッパでは,出産教育において助産婦とは別に,母親になるためのきめ細やかなガイド役を果たす「バース・エデュケイター」という存在があり,イギリスではすでに4000人のバース・エデュケイターが,助産婦と共同作業をしつつ妊産婦をサポートしている。戸田律子氏は,イギリスでその資格を取得し,2年前から少人数制の「バース・エデュケイター養成コース」を開設。今年4月には8人の受講生がコースを修了しているが,ちなみにそのうち3人が助産婦であるという。
 セミナーでは,まず戸田氏がビデオとスライドを交えて,国内外の市民グループの活動(母親サークル)を紹介。続いて,吉村衣代氏(主体的なお産を考える会)と草野明子氏(ぐるーぷ・きりん)が,「助産婦に関するニーズ調査」を発表した後に,再び戸田氏がビデオとスライドを使ってイギリスおよびデンマークの助産婦の取り組みを紹介した。
 戸田氏は,「特に心身の変化の激しい妊娠,出産,母乳育児期は医療との関わりが深い時期だけに,看護者の果たす役割には大きな期待が寄せられている。しかし,わが国においては育児支援事業などのハード面での整備はここ数年急速な進歩が見られるものの,1人ひとりの母性・父性が育まれるためのソフト面での設備については配慮に欠けている点がある」と指摘。そして,1994年にイギリスが採択したマタニティ憲章の,「(1)知りたい情報を得る,(2)自分のカルテを自由に見たり,保管できる,(3)ケアを受ける場所や介助者を選べる,(4)主治医や助産婦などの介助者を指名できる,(5)妊産婦健診の際に少なくとも30分は費やす」という妊産褥婦の項を紹介した。
 さらに,戸田氏らのグループが中心となって,1994年から全国の出産・母乳育児を考える市民と助産婦の有志グループが集まり,11月3日を「いい(11)お産(3)の日」と定めてユニークな活動を行なっていることなどを紹介し,聴衆へ参加を訴えた。
 なお,このセミナーの詳細は,「助産婦雑誌」(医学書院刊)Vol.51.No.3.に掲載される。