理学療法ジャーナル Vol.57 No.9
2023年 09月号

ISSN 0915-0552
定価 1,980円 (本体1,800円+税)

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特集 運動器理学療法をどう捉えるか──統合的戦略で自らの思考の枠を乗り越える
企画:常盤直孝

 運動器理学療法は,運動器の機能障害に対する検査・測定を介し,それらの結果を総合的に解釈して,患者の望む結果に向けた治療,および関連する活動制限や社会的活動への不参加の改善を目的とした一連の過程を示します.関節などの局所や一つの組織の評価・治療や,関節可動域制限や筋力低下といった結果として描出されている事象のみに焦点を絞るのではなく,機能障害を生じた根本的要因に対して理学療法を適切に実施していく必要があります.本特集では,運動器理学療法を実施するうえで評価や治療に重要な考え方を,それぞれの先生の視点で述べていただきます.

運動器理学療法におけるクリニカルリーズニング 白尾泰宏
 運動器疾患の理学療法では,疾患のみに対応しても良好な結果に必ずしも達しない.クライアントを「人」として生物心理社会的モデルで理解することが重要である.これを理学療法に実践するツールとしてクリニカルリーズニングがある.クリニカルリーズニングとは,問診を中心に仮説を立て客観的評価でその検証作業を行い,修正を加えながら理学療法士の思考過程を自身で管理することである.

機能解剖と運動機能障害 山崎 肇
 日々臨床で治療する運動機能障害のさまざまな症状に対する際に,細部にこだわり過ぎて,全体を見落とす傾向がある.結果,局所の評価や治療だけでは改善が得られないことにつながる.その原因追求のための評価や治療計画には,機能解剖学の知識が重要である.本稿では,肩関節の機能解剖を例に,姿勢の影響や他部位の関与など,その考え方の一助を示す.

筋機能が姿勢・運動に与える影響 加藤邦大
 本稿ではまず筋機能評価について,筋長検査と徒手筋力検査(Manual Muscle Testing:MMT)を例に再考する.筋長検査では短縮,延長だけでなく相対的な硬さの違いによる相対的柔軟性も評価すること,MMTでは筋力低下の原因(萎縮,損傷,延長,収縮様式)を鑑別すること,さらに共同筋間におけるインバランスを評価する重要性を説明する.また筋機能が姿勢・運動に与える影響について腰痛症例を提示しながら説明する.

生体力学的要因が運動機能に与える影響 木藤伸宏,他
 運動器理学療法は,活動の基礎となる運動(movement)およびそれを生成する運動系(movement system)の健康を回復することを目標とする.運動機能とは身体の生理系である運動系が有する働きである.運動機能障害は肢節と体節のキネマティクスパターンの変化として表現され,骨と関節キネマティクスの変化は疼痛の直接的要因となる.本稿では運動病理モデルを用いて神経筋骨格系疼痛症候群(運動機能障害症候群)の発症・進行プロセスについて解説した.そして,膝関節疼痛症候群を有するアスリートに対する理学療法について紹介する.

メカニカルストレスと理学療法 金村尚彦,他
 メカニカルストレスが生体へ及ぼす影響として,適切な関節運動は組織損傷に対する自己修復の促進,適度な運動は抗炎症作用の増加,骨腱付着部の病理的変化の防止,神経損傷軸索の再生や神経可塑性を促す.変形性膝関節症者の歩行中の筋シナジー解析では,関節負荷の増大が示唆された.運動器に対する理学療法において,適度なメカニカルストレスは組織の自己修復能力の向上や,組織変性への進行を遅延させる効果が期待できる.

筋膜機能が運動機能に与える影響 田島嘉人
 筋膜という組織を理学療法の対象にするという考え方が出てきて久しいが,まだその研究は始まったばかりである.本稿では筋膜についての定義,解剖,生理,病態について理解し,筋膜が運動機能に与える影響を張力伝達と情報伝達の観点から述べる.また,筋膜をどのように評価しアプローチしていくのか,臨床応用の一部を紹介する.

心理的要因が運動機能に与える影響 相澤純也
 前十字靱帯損傷・再建術後のスポーツ復帰に向けた心理的準備の標準尺度に,Anterior Cruciate Ligament-Return to Sport after Injury scale(ACL-RSI)がある.ACL-RSIのスコアは受傷前レベルでのスポーツ復帰の可否に関連する.心理的準備スコアの改善に向けてACL-RSIスコアを定期的に確認し,身体機能,バイオメカニクスの過大・過小,非対称性を改善し,心理的準備の向上をめざす.

自律神経機構が運動機能に与える影響 堀本祥惟,他
 自律神経機能と運動機能は密な関係性を有しており,最終的には免疫機能を高め,生体恒常性を維持することに有用である.しかし,十分に解明されていない側面が多く,この関係性の知見を広めることで,理学療法の可能性を高めることにつながることが期待される.本稿では運動に対する自律神経のかかわりを踏まえ,痛み・気圧・気温などの間接的因子が運動機能に与える影響と,現在用いられている検査方法について概説する.

感覚情報と運動機能 鈴東伸洋
 適切な運動は,重力下での安定性に保障された選択的な運動によって表現される.身体各部からのさまざまな感覚情報が脳内の感覚野にて統合されたのち,運動野にて新たな運動戦略が生成される.それらの情報が姿勢制御と運動制御として筋骨格系にて表現され運動となり,その繰り返しにより学習される.過去の運動学習経験が新たな運動の阻害因子となる場合もある.運動療法を通して適切な感覚を入力し,よりよい運動パフォーマンスにつなげることがよりよい運動学習になると考える.

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特集 運動器理学療法をどう捉えるか──統合的戦略で自らの思考の枠を乗り越える

エディトリアル 運動器理学療法におけるパラダイムシフト──統合的戦略で自らの思考の枠を乗り越える
常盤直孝

運動器理学療法におけるクリニカルリーズニング
白尾泰宏

機能解剖と運動機能障害
山崎 肇

筋機能が姿勢・運動に与える影響
加藤邦大

生体力学的要因が運動機能に与える影響
木藤伸宏,他

メカニカルストレスと理学療法
金村尚彦,他

筋膜機能が運動機能に与える影響
田島嘉人

心理的要因が運動機能に与える影響
相澤純也

自律神経機構が運動機能に与える影響
堀本祥惟,他

感覚情報と運動機能
鈴東伸洋


■Close-up 重力を意識する──人体機能・構造への影響
ヒトの身体構造と直立二足歩行の重力適応
荻原直道

全身用立位CTを用いた重力下の人体の可視化
横山陽一,他


●とびら
人は物語を生きている
小林浩介

●単純X線写真読影達人への第一歩 6
気胸
中尾周平,他
    
●インシデント,ヒヤリハットから学ぼう 3
歩行に関連した転倒のインシデント──回復期リハビリテーション病棟における理学療法場面を中心に
三浦 創

●難しい症例のみかた 3
脳出血後に自宅退院し抑うつ状態となっていた80歳台男性へのアプローチ
尾川達也

●中間管理職の悩み 3
女性管理者としてのワークライフバランスのとり方に悩んでいます
[回答者]上薗紗映

●臨床実習サブノート 臨床実習で技術のステップアップをめざそう 6
評価⑤ 日常生活活動評価,手段的日常生活活動評価
福原隆志

●報告
吸気負荷法の違いによる横隔膜筋厚の比較
辻 洋文,他

健常高齢者におけるPosner課題反応時間の信頼性の検討
秋山和也,他

●症例報告
Anterior interval部の膝蓋下脂肪体に疼痛を呈した1症例
吉井太希,他

●私のターニングポイント
臨床のすべてがターニングポイント
大脇 毅

●My Current Favorite 18
学会から始まった多施設共同研究
髙良 光

●臨床のコツ 私の裏ワザ
効果的な呼吸理学療法に向けた医療機器活用のコツ
石光雄太

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