理学療法ジャーナル Vol.57 No.8
2023年 08月号

ISSN 0915-0552
定価 1,980円 (本体1,800円+税)

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特集 睡眠と理学療法の深い関係

 睡眠は,再び覚醒するのに備えて休息,回復するための重要な役割をもつ.体を横にしただけの休息とは異なり,長時間の睡眠剝奪は適切に働くはずの機能(集中力,記憶力,思考力など)が一時的に障害され,成長や疲労回復を阻害する.つまり,睡眠は理学療法を実施するうえで,実は欠かせないものである.本特集では睡眠に関する基本的知識と睡眠障害,疫学研究,理学療法に関連する取り組みなどをご解説いただいた.理学療法を実施するうえで,どのように活用できるかについて考える機会としたい.

睡眠の科学──睡眠研究の最前線とリハビリテーションへの応用の可能性 岡部雄斗,他
 われわれは人生の約3分の1もの時間を睡眠に費やしている.それにもかかわらず,睡眠の本質的な機能はいまだよくわかっていない.現在,睡眠をもたらす仕組みや睡眠覚醒の制御にかかわる脳部位,脳内物質などが明らかになってきている.本稿では,睡眠のメカニズムや重要性に関する最新の知見について解説した.さらに,そこからリハビリテーションや日常生活への活用の可能性についても述べた.

睡眠の疫学 植田結人,他
 睡眠に関する疫学調査により,短時間睡眠,睡眠時無呼吸症候群が代表的疾患である睡眠の質の低下,交代勤務や社会的ジェットラグなどの睡眠リズムの乱れによる睡眠負債が健康リスクとなることが明らかにされてきた.その一方で,睡眠負債は自覚症状に乏しく主観的評価が困難である.客観的指標を用いた疫学調査により「睡眠」を正確に可視化することが効果的なヘルスプロモーションにつながる.

睡眠障害の治療と薬剤 西條史祥,他
 睡眠障害が日中の機能に与える影響は大きい.そのなかでは特に,不眠症と睡眠時無呼吸症候群の有病率が高く,社会生活への影響も大きい.ほかにむずむず脚症候群や日中に過度な眠気を引き起こす過眠症などがある.不眠症には薬物治療と非薬物治療の組み合わせで,睡眠時無呼吸症候群にはマウスピースや持続陽圧呼吸療法で治療することで,患者のQOLを改善し得る.

睡眠と運動 小島 将,他
 睡眠と身体活動とは相互に影響し合うことが示されているが,入院患者は疾病のみならず環境の要因も相まって,睡眠および身体活動の両者が不良な状態にある頻度が高い.本稿では,睡眠による心身機能への影響と身体活動が睡眠へ与える効果に関して,これまでのエビデンスに基づいて概説する.また,リハビリテーションにおける睡眠状態の影響についても紹介し,今後の取り組みにつながる新たな視点を提供したい.

睡眠と寝具 木暮貴政
 寝具に関する睡眠研究を概観する.寝返りしやすさと寝心地が睡眠に影響を及ぼすことが報告されており,褥瘡予防,腰痛改善,高温・低温環境への適応,睡眠呼吸障害の改善などに寝具が影響することも報告されている.重い掛け寝具やベッドを動作させることの影響も報告されている.寝具の睡眠への効果は使用環境や使用者によって変化することに注意して研究成果を応用するとよい.

睡眠障害と理学療法──寝返りと睡眠の関係 山口正貴
 ヒトはなぜ睡眠中に寝返りをするのか.寝返りのない同一姿勢保持は褥瘡のほか,クリープ変形に伴う疼痛や換気血流比不均衡に伴う換気不良などが生じるリスクが高くなる.疼痛や身体機能低下のある患者では睡眠の質・量の低下を招く.睡眠中の寝返り回数を増やすためには睡眠環境と身体機能の2点からアプローチを行う.本稿では睡眠障害に対する理学療法として,寝相(寝返り)に着目した介入の可能性について述べる.

睡眠障害と理学療法──在宅要介護高齢者と睡眠 武 昂樹,他
 在宅要介護高齢者は睡眠障害を有することで在宅生活に悪影響を及ぼす.今日まで,睡眠に対する理学療法が確立されているとは言えないが,さまざまな研究報告などにより理学療法士が睡眠の改善に寄与できる可能性がある.本稿では,睡眠障害が在宅要介護高齢者に及ぼす影響や睡眠障害に対する理学療法について,筆者の私見を踏まえ論述する.

睡眠障害と理学療法──認知症と高照度光照射 緑川 亨,他
 睡眠障害は認知症の中核症状の進行やその他の行動・心理症状(behavioral and psychological symptoms of dementia:BPSD)の悪化,さらには介護者負担の増加の要因となる.認知症高齢者の生活する空間における光環境は,概日リズムを刻む体内時計の昼夜と地球の自転によって生じる明暗(昼夜)を一致させるために十分とは言いがたい.非薬物療法の一つである高照度光照射はこれらの昼夜を一致させ,認知症高齢者の睡眠障害を軽減する可能性がある.

睡眠不全と理学療法──睡眠不全に対するbasic body awareness therapy 山本大誠
 睡眠不全は心身の発達,感情調節,職業能力,日中の遂行能力の低下など生活の質を低下させる原因となり,公衆衛生上の大きな課題となっている.睡眠不全の背景には,生理機能であるアロスタシス負荷によるストレス応答や睡眠・覚醒リズムの制御機能不全が考えられている.健康的な睡眠を得るためにアロスタシスの適正化に焦点を当てた理学療法として,basic body awareness therapyが期待されている.

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特集 睡眠と理学療法の深い関係

エディトリアル 睡眠と理学療法の深い関係
金谷さとみ

睡眠の科学──睡眠研究の最前線とリハビリテーションへの応用の可能性
岡部雄斗,他

睡眠の疫学
植田結人,他

睡眠障害の治療と薬剤
西條史祥,他

睡眠と運動
小島 将,他

睡眠と寝具
木暮貴政

睡眠障害と理学療法──寝返りと睡眠の関係
山口正貴

睡眠障害と理学療法──在宅要介護高齢者と睡眠
武 昂樹,他

睡眠障害と理学療法──認知症と高照度光照射
緑川 亨,他

睡眠不全と理学療法──睡眠不全に対するbasic body awareness therapy
山本大誠


■Close-up 筋力評価──○○と組み合わせると何がみえる?
体重からみた筋力評価
山本利春

歩行速度からみた筋力評価
片山訓博,他

姿勢からみた筋力評価
鈴木あかり


●とびら
忘れられないE先生の言葉──臨床実習の思い出
奥田憲一

●単純X線写真 読影達人への第一歩 5
心不全・胸水
中尾周平,他

●インシデント,ヒヤリハットから学ぼう 2
インシデント報告──ヒヤリハットでとどめる大切さ
高橋明美

●難しい症例のみかた 2
小児先天性四肢形成不全,欠損症における理学療法──膝関節離断術を施行した先天性両脛骨列欠損児の1例
井上和広

Platypnea orthodeoxia syndromeを呈した重症肺炎患者
宮崎慎二郎

●中間管理職の悩み 2
プレイングマネジャーとして,管理と臨床のかかわり方に悩んでいます
[回答者]永田英貴

●臨床実習サブノート 臨床実習で技術のステップアップをめざそう 5
評価④ 姿勢観察,運動学的分析
高田将規

●原著
成長期新鮮腰椎分離症における体幹硬性装具装着下のストレッチングが骨癒合と柔軟性に与える影響
三宅秀俊,他

●症例報告
母趾MTP関節周辺の瘢痕組織との癒着によりクロスフィンガーを呈した長母趾伸筋腱断裂縫合術後の1症例
小瀬勝也,他

リバース型人工肩関節置換術後におけるリハビリテーション──肩関節挙上時前方詰まり感に対する超音波画像診断装置を用いた評価・治療の一考察
氷見 量,他

●私のターニングポイント
異業種他職種の経験を経て実感する,“療法士”という職の特殊性
奥山航平

●My Current Favorite 17
誘発筋電図──F波を用いて,運動の習熟度を判断できるかもしれない
鈴木俊明

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