理学療法ジャーナル Vol.57 No.7
2023年 07月号

ISSN 0915-0552
定価 1,980円 (本体1,800円+税)

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特集 腎臓リハビリテーション

 今日の慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)を有した患者へのかかわりは,安静や運動制限ではなく,むしろ多職種による連携を基盤とした運動療法や生活指導が腎機能改善やQOL向上に有効であるとされている.本特集では,慢性CKDにおける保存期,透析期,移植期といった時期別に展開される腎臓リハビリテーションの最新知見を専門の先生方にご解説いただき,腎臓リハビリテーションにおける理学療法士のかかわりをup to dateする機会としたい.

腎臓リハビリテーションのUp To Date 松永篤彦
 2022(令和4)年度診療報酬改定によって「透析時運動指導等加算」が認められ,腎臓リハビリテーションの重要性と有効性をより明確に示すことが求められている.腎臓リハビリテーションの目的は保存期慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)患者においては腎保護,透析患者においては運動耐容能,身体機能およびADL・QOLの改善を通して生命予後を改善することであり,そのエビデンスは整いつつあるが,虚弱高齢者に対するエビデンスはいまだ不十分である.

保存期慢性腎臓病患者における運動療法 西澤 肇,他
 保存期慢性腎臓病患者の運動療法は腎重症化予防を図ることができる可能性があり,腎臓リハビリテーションとして注目されている.シスタチンCから算出した推算糸球体濾過量を用いた最近の介入研究では,腎機能低下抑制の効果が示されている.また実際の運動介入では,歩数計を用いた在宅での運動指導や有酸素運動とレジスタンス運動を併用した介入の有効性が示されている.

透析場面における監視型運動療法 森山善文
 透析患者の筋力・運動耐容能の低下がかねてより問題視されている.加えて,高齢化の進行がフレイルやサルコペニアの増加をもたらしており,透析患者の身体機能改善に対する取り組みは目下の急務となる.透析中に行う運動療法は安全性や継続性において有効性が高い.本稿では,透析患者の身体的特徴や運動療法の利点を述べ,透析中に行う運動療法の具体的な進め方につき解説する.

腎移植患者における腎臓リハビリテーション 西山裕貴,他
 移植腎の長期生着,および生命予後改善には,生活習慣病や心血管疾患などの合併症の予防と身体機能,身体活動量の維持・改善が重要である.腎移植術後は,早期にリハビリテーションを開始し,退院後も運動療法や身体活動量を高める取り組みを継続していく.また,移植を見据え,透析期から身体機能の維持・改善に努め,周術期,移植後維持期の長期にわたるシームレスな運動療法介入,疾患管理指導を行っていくことが理想である.

腎臓リハビリテーションとチーム医療──透析患者の生活を支える 井本洋史,他
 「透析患者が住み慣れた土地・生活している近くで透析を受けられること」を当院では,「透析医療の地域包括ケアシステム」と呼んでいる.現在,高齢・虚弱化する透析患者において,この当たり前に思えることが難しくなってきている.透析患者が抱える生活上の課題とは何なのか.腎臓リハビリテーションに携わるチームの一員として,われわれ理学療法士ができることを考える.

腎臓リハビリテーションと栄養管理 黒住順子,他
 超高齢化が進み,慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)患者においてもサルコペニア・フレイルが注目されている.CKD患者のサルコペニア発症には多要因が関与し,合併頻度は一般人口よりも高く,CKDステージの進行とともに増加するうえ,合併した場合の生命予後は,合併しない場合より不良である.サルコペニア・フレイルの予防・改善のためには運動療法と栄養管理を合わせて効果的に行うことが重要である.

高齢透析患者における運動器重症化予防のための生活指導と支援 河野健一
 高齢透析患者の運動器重症化予防のためには,透析時運動療法だけでなく個別的な生活指導,支援が重要となる.フレイルの傾向にあるほど運動器重症化予防の観点から運動療法を実施しなければならないものの,その継続が難しいことがわかっている.入院期リハビリテーションの実施時間を十分に確保し可能な限り入院前のADLを再獲得するとともに,訪問リハビリテーションなど非透析時の理学療法が高齢透析患者の生活を守るきわめて重要なリソースであることを共通認識としたい.

思春期・若年成人透析患者におけるQOL向上のための生活指導と支援 三浦健一郎,他
 思春期・若年成人の透析患者のQOLを低下させる要因として,身体機能の低下,成長障害,うつ,不安,自己肯定感の低下などの精神心理的問題,学業成績を含む認知機能の障害,就業の問題などがある.医師,看護師,ソーシャルワーカー,臨床心理士を含む多職種のチームがかかわり,早期に問題点を把握することにより,適切な支援に結びつけることが重要である.

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特集 腎臓リハビリテーション

腎臓リハビリテーションのUp To Date
松永篤彦

保存期慢性腎臓病患者における運動療法
西澤 肇,他

透析場面における監視型運動療法
森山善文

腎移植患者における腎臓リハビリテーション
西山裕貴,他

腎臓リハビリテーションとチーム医療──透析患者の生活を支える
井本洋史,他

腎臓リハビリテーションと栄養管理
黒住順子,他

高齢透析患者における運動器重症化予防のための生活指導と支援
河野健一

思春期・若年成人透析患者におけるQOL向上のための生活指導と支援
三浦健一郎,他


■Close-up 体外衝撃波療法──スポーツ理学療法での最新治療
石灰沈着性腱板炎に対する集束型体外衝撃波療法
坂井周一郎,他

足底腱膜炎に対する体外衝撃波療法
内野真明,他

上腕骨外側上顆炎に対する体外衝撃波療法
大槻哲也,他


●とびら
利他的/利己的なライフワーク
壹岐英正

●単純X線写真 読影達人への第一歩 4
無気肺
及川真人,他

●臨床研究のススメ──エビデンスを創ろう [最終回]
システマティックレビューとメタアナリシス
森山英樹,他

●インシデント,ヒヤリハットから学ぼう [新連載]
インシデントは予防できるか?──インシデントから学ぶこと
谷口千明

●難しい症例のみかた [新連載]
病棟で作製した長下肢装具がうまく使えず,訪問リハビリテーションで歩行再建に挑戦した症例
中谷知生

腰部脊柱管狭窄症に腰椎椎間板ヘルニアを合併し,下肢の神経麻痺を呈した症例の治療経験
葉 清規

●中間管理職の悩み [新連載]
管理職は何をすればよいのでしょうか?
村永信吾

●臨床実習サブノート 臨床実習で技術のステップアップをめざそう 4
評価③ 協調運動機能検査,バランス検査
田中和彦

●報告
主観的伸張感で実施時間を設定した静的ストレッチングの有効性
第2報──セット数の検討
清野浩希,他

●症例報告
変形性股関節症に対する人工股関節全置換術後に発症した外側型弾発股の画像評価と理学療法評価の統合と解釈
丹羽結生,他

●紹介
当院における急性期脳卒中患者に対する歩行練習支援ロボットの実施状況──チェックリストを用いた運用
本間大智,他

●私のターニングポイント
落とし穴がふさがった
鈴木聖子

●My Current Favorite 16
情報を意思決定に活かす
佐々木康介

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