理学療法ジャーナル Vol.57 No.6
2023年 06月号

ISSN 0915-0552
定価 1,980円 (本体1,800円+税)

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特集 脳卒中の予後予測と目標設定
企画:野添匡史

 理学療法の目標設定は,各疾患の症状や病態,そして患者背景を加味した予後予測に基づいて行われる.しかし,個々の症例によって症状や病態が大きく異なる脳卒中の場合,適切な予後予測に基づいた目標設定は難しく,特に経験の浅い初学者や学生が難渋する場面が多い.
 本特集では,脳卒中者における症状や病態ごとの予後予測とそれに基づく目標設定について,理学療法士が臨床現場で行える手法とその背景にあるエビデンスを中心にみていく.

脳卒中後運動障害の予後予測と目標設定 久保田雅史,他
 脳卒中後の運動障害は運動麻痺,共同収縮,同時収縮,痙縮,不使用の学習といった量的・質的変化を含み,その機能回復には回復ステージ理論がかかわる.脳卒中後の予後予測には,臨床評価から予測ツールを活用する方法,脳画像に基づく方法,機械学習による方法などが挙げられる.これらの予後予測を用いて的確な目標設定をすることで,理学療法内容や計画立案などに反映させていくことが重要である.

脳卒中後起居動作の予後予測と目標設定 石渡正浩
 起居動作は,ADLに必要な基本的な動作である.脳卒中の後遺症として,体幹機能の低下がバランス,歩行,ADLに影響を及ぼす.理学療法において,体幹コントロールは機能的タスクを実行するために重要であり,安定した起居動作の獲得に重要な条件と考える.本稿では,起居動作,ADLにおいて,標準化された体幹の臨床評価ツールについて理解を深めるとともに体幹評価を用いた予後予測について述べる.

脳卒中後歩行障害の予後予測と目標設定 関口雄介
 脳卒中歩行障害の回復には,損傷側の皮質脊髄路や皮質-網様体脊髄路,高次運動野を含めた神経ネットワークが関与する.また,歩行の各パフォーマンスの回復過程には個別性があるものの,1年以内に急激な回復が生じている.一方,脳卒中片麻痺患者の転倒率は時間の経過とともに増大する.また,歩行の自立度における予後予測の簡便な評価としてTime to Walking Independently After Stroke(TWIST)が挙げられ,転倒を予測する評価指標は複数挙げられる.これらの予後予測の結果は目標を設定する際に参考となり得る.

脳卒中後pusher現象の予後予測と目標設定 深田和浩,他
 Pusher現象は大脳半球損傷後に出現する前額面上の姿勢定位障害であり,理学療法の診療上,治療に難渋する.Pusher現象のある症例は,pusher現象のない症例と比較してADLの回復が遷延することが報告されている.またpusher現象の重症度によっても予後が異なるため,pusher現象のある症例に適した予後予測や目標設定が必要である.本稿では脳卒中後のpusher現象の予後予測と目標設定について概説する.

高齢脳卒中患者の予後予測と目標設定 阿部貴文,他
 近年,脳卒中の予後予測因子としてサルコペニアや低栄養に関する報告が増加し,注目されている.サルコペニアや低栄養は入院後早期から広く蔓延し,機能予後に負の影響を与える.脳卒中患者のサルコペニアの要因は脱神経や活動量の低下に加え,嚥下障害・意識レベル低下による栄養障害であり,評価には低骨格筋量と低筋力(握力)が多く使用される.脳卒中の標準的な評価に加えて,サルコペニアや低栄養に関連した評価を実施し,良好な機能予後となるためのサルコペニアの予防・改善をめざした介入が重要になる.

脳卒中治療の進歩と理学療法への影響 徳田和宏
 急性脳梗塞に対する急性期治療の進歩は著しい.特に血栓回収療法においてはその適応範囲も拡大されつつある.本稿では,血栓回収療法後の症例を提示した.血栓回収療法により血行再建でき劇的な症状の改善を認めた症例となる.急性期からの予後予測ならびに在宅復帰までの経過と理学療法について,今後の課題も含め紹介する.

予後予測と目標設定に基づいた脳卒中患者への装具療法 脇坂成重,他
 脳卒中リハビリテーションで装具療法は不可欠であるが,適切な装具療法が実施されないと,治療効果ないしは患者の予後が左右される可能性を含んでいる.適切な装具療法を実施していくためには,的確な予後予測に基づき,装具処方や装具療法の必要性を検討していく必要がある.また,脳卒中後の装具療法では,理学療法士が立てる治療戦略が科学的根拠に基づいていることが求められる.

脳卒中後疼痛の発生予測と予防 壹岐伸弥
 脳卒中後疼痛の特に中枢性脳卒中後疼痛は生活期リハビリテーションにおいて,介入に難渋することが多い.近年,病態メカニズムに関する報告が増えている一方で,理学療法に関する介入研究や症例報告は少ない.本稿では,温冷覚障害が中枢性脳卒中後疼痛の主要な病態の問題と考え,仮説段階にある温度覚課題を実施した症例経過を報告する.

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特集 脳卒中の予後予測と目標設定

エディトリアル 脳卒中における予後予測と目標設定の重要性
野添匡史

脳卒中後運動障害の予後予測と目標設定
久保田雅史,他

脳卒中後起居動作の予後予測と目標設定
石渡正浩

脳卒中後歩行障害の予後予測と目標設定
関口雄介

脳卒中後pusher現象の予後予測と目標設定
深田和浩,他

高齢脳卒中患者の予後予測と目標設定
阿部貴文,他

脳卒中治療の進歩と理学療法への影響
徳田和宏

予後予測と目標設定に基づいた脳卒中患者への装具療法
脇坂成重,他

脳卒中後疼痛の発生予測と予防
壹岐伸弥


■Close-up 職場管理
職場管理──経営者として
松井一人

職場管理──中規模民間病院の部門責任者として
田中隆司

職場管理──大学病院の部門責任者として
山本周平


●とびら
トップは孤独なのか
小島伸枝

●単純X線写真読影達人への第一歩 3
肺炎・急性呼吸促迫症候群
花田匡利,他

●「経営者」の視線 [最終回]
社会での存在意義
岡持利亘,他

●臨床研究のススメ──エビデンスを創ろう 6
臨床研究に必要な統計知識
田島敬之

●臨床に役立つアプリケーション活用術 [最終回]
文献検索
森山英樹,他

●臨床実習サブノート 臨床実習で技術のステップアップをめざそう 3
評価② 筋力検査
磯邉 崇

●報告
小学生の軟式野球選手におけるFunctional Movement Screenと過去の肘・肩痛との関連
大山祐輝,他

●症例報告
Extension thrust patternを呈する脳卒中片麻痺患者の下肢装具変更後4年間の歩行能力の変化
栗田慎也,他

有鉤骨鉤摘出術後に尺骨神経障害を呈した1症例──超音波画像診断装置を用いた病態解釈
西野雄大,他

●私のターニングポイント
“理学療法士という人”との出会い
桑原 渉

●My Current Favorite 15
地元の理学療法のあり方を考える──日本理学療法士協会の活動を通して
渡邊家泰

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