臨床整形外科 Vol.58 No.2
2023年 02月号

ISSN 0557-0433
定価 2,860円 (本体2,600円+税)

お近くの取り扱い書店を探す

  • 更新情報はありません。
    お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。

  • 特集論文要旨
  • 収録内容

開く

特集 外反母趾診療ガイドライン改訂 外反母趾治療のトレンドを知る

緒言 渡邉耕太

外反母趾診療の歴史 奥田龍三
1950年代の病理解剖学的研究により外反母趾における母趾中足趾節(母趾MTP)関節とその周辺組織の形態や組織的異常が明らかとなった.同じ頃,X線学的研究により外反母趾角や第1-第2中足骨間角が考案され,変形の病態や程度が定量的に評価できるようになった.これらの基礎的研究成果は,その後の外反母趾診療の発展に多大な貢献をした.1950年以前の手術療法の多くは母趾MTP関節部の処置によるものであったが,その後,第1中足骨骨切りと遠位軟部組織処置を組み合わせた術式が次々と開発され,今日では骨切り部位により遠位,骨幹および近位に分類され,外反母趾矯正術の主流となっている.

外反母趾の疫学,病態,診断 窪田 誠
外反母趾の疫学,病態,診断について概説した.外反母趾は非常に有病率が高く,65歳以上では,全体で30〜40%,女性では35〜50%,男性でも20%程度とされている.近年,外反母趾に関する3次元的な病態の解明が進み,第1足根中足関節でのhypermobility,第1中足骨頭の回旋,種子骨の外側偏位などが特に注目されている.評価法は,本邦ではJSSFスケール,SAFE-Qが広く用いられている.臨床の現場では,これらの基本的事項について外反母趾患者に正しく伝える必要がある.

保存療法 田中博史
外反母趾に対する保存療法は一般的には最初に選択されることが多い.具体的には靴指導,運動療法,装具療法,薬物療法などが行われている.「外反母趾診療ガイドライン2022(改訂第3版)」では運動療法と装具療法の有用性についてCQを設定し,検討した.軽度から中等度の外反母趾に対して,運動療法や装具療法単独での変形矯正効果や除痛効果を認める質の高いエビデンスは十分ではなく,推奨文として「軽度から中等度の外反母趾に対して運動療法を行うことを弱く推奨する」「軽度から中等度の外反母趾に対して装具療法を行うことを弱く推奨する」とした.

遠位骨切り術 渡邉耕太
第1中足骨遠位骨切り術は,外反母趾に対する手術治療の主要な術式である.多くの術式が報告されているが,それらの特徴を踏まえた比較検討の情報は不足している.今回の外反母趾診療ガイドライン改訂では,CQを「遠位骨切り術を行う場合,どのような術式が推奨されるか」と定め,CQの小項目として3つ設定した.遠位骨切り術式間の比較,経皮的手術の検討,内固定法の検討を行い,それぞれに対し推奨文と推奨度,エビデンスの強さを決定した.これらの推奨文が適応される対象は軽度から中等度の外反母趾であり,重度例についてはさらなる検討とエビデンスの蓄積が必要である.

近位骨切り術 西山隆之
第1中足骨近位骨切り術は外反母趾に対する代表的な術式の1つである.骨切りのデザインは多岐にわたるが,それらの比較検討の情報は少ない.今回の「外反母趾診療ガイドライン」改訂では,CQを「近位骨切り術を行う場合,どのような術式が推奨されるか」と定めた.近位骨切り術式間の比較検討を行い,それに対しての推奨文と推奨度,エビデンスの強さを決定した.

骨幹部骨切り術 平尾 眞
「外反母趾診療ガイドライン2022(改訂第3版)」では,scarf骨切り術,水平骨切り術,Ludloff骨切り術,extended-chevron骨切り術,第1中足骨回転骨切り術に着目して,バックグラウンドクエスチョン(BQ)としては,適応・術式・合併症について検討し,クリニカルクエスチョン(CQ)としては,「骨幹部骨切り術を行う場合,どのような術式が推奨されるか」について検討した.「外反母趾変形に対してscarf骨切り術と同様にextended-chevron骨切り術,Ludloff骨切り術を行うことを弱く推奨する」と結論づけた.

第1中足骨の骨切り部位の違いによる比較 福士純一
①軽度から中等度,②中等度から重度,の外反母趾において,異なる骨切り部位での臨床成績を比較した報告について,システマティックレビューを行った.軽度から中等度の外反母趾における骨切り術の報告は10編で,遠位,骨幹部,近位,いずれの部位での骨切り術も同等の成績であった.中等度から重度の外反母趾での報告は4編で,対象患者の中心は重度に近い中等度の外反母趾ではあるが,いずれの部位での骨切り術も同等の成績であった.外反母趾角(HV角)が40°を大きく超えるような重度の変形に対して,今後の比較研究が望まれる.

第1中足骨骨切り術以外の術式 垣花昌隆
第1中足骨骨切り術以外の術式のうち,母趾MTP関節固定術は,重度の外反母趾に適応がある.第1TMT関節固定術はLapidus法とも呼ばれるが変法が多数ある.中等度から重度の外反母趾で特に第1TMT関節の不安定性(hypermobility)が存在する症例によい適応がある.遠位軟部組織手術は,近年単独で行われることはほとんどなく,中足骨骨切り術やTMT関節固定術に併用して行われる.母趾MTP関節の軟部組織の拘縮解除や弛緩した組織に緊張を与えるために行われる.

外反母趾に合併する病態に対する術式 野澤大輔
「外反母趾診療ガイドライン2022(改訂第3版)」では,外反母趾に合併する病態として第2趾MTP関節脱臼,ハンマー趾,内反小趾を取り上げ,background question(BQ)を作成した.いずれの病態も保存療法の効果の少ない場合に手術が適応となる.MTP関節脱臼の主原因は,蹠側板損傷であり,関節形成と中足骨短縮骨切りを併用する.ハンマー趾は,PIP関節拘縮の有無により腱移行と関節手術を選択する.内反小趾は中足骨骨切り術が行われる.

開く

医書.jpにて、収録内容の記事単位で購入することも可能です。
価格については医書.jpをご覧ください。

特集 外反母趾診療ガイドライン改訂──外反母趾治療のトレンドを知る

緒言
渡邉耕太

外反母趾診療の歴史
奥田龍三

外反母趾の疫学,病態,診断
窪田 誠

保存療法
田中博史

遠位骨切り術
渡邉耕太

近位骨切り術
西山隆之

骨幹部骨切り術
平尾 眞

第1中足骨の骨切り部位の違いによる比較
福士純一

第1中足骨骨切り術以外の術式
垣花昌隆

外反母趾に合併する病態に対する術式
野澤大輔


●論述
日本整形外科学会股関節疾患評価質問票メンタル項目18番の問題点
平尾利行・他

●調査報告
少年野球選手の肘関節痛に関わる危険因子
小関弘展・他

●境界領域/知っておきたい
周術期の急変・心肺蘇生法の最新
栗田昭英

●臨床経験
特発性脊髄硬膜外血腫の治療方針の検討
渡邉健斗・他

骨粗鬆症と血清亜鉛値の関連
高桑昌幸・他

●症例報告
踵骨前方突起偽関節に対し鏡視下骨片摘出術を施行した1例
𠮷本有佑・他

  • 更新情報はありません。
    お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。