臨床整形外科 Vol.57 No.8
2022年 08月号

ISSN 0557-0433
定価 2,860円 (本体2,600円+税)

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特集 整形外科ロボット支援手術

整形外科手術支援ロボット開発の歴史 髙尾正樹
整形外科におけるロボットは1980年代後半に開発が進み黎明期を形成したが,さまざまな問題によりその市場は拡大しなかった.2010年代に入り,ロボットの製品化と開発企業の大企業による買収が進み,先進国各国で年平均30〜40%の市場拡大が予測されている.股関節や膝関節の人工関節置換術,脊椎の椎弓根スクリュー挿入に臨床応用されている.現在主流となっているロボットは,ドリルガイドスリーブや骨切除ジグの位置や向きを制動するなど間接的に手術の支援を行うが,ロボットは患者に対して骨切除などの直接的な操作は行わないセミアクティブと分類されるシステムとなっている.

股関節におけるナビゲーションとロボット支援手術 池 裕之,他
現代の外科治療において,安全で精度の高い手術治療が求められており,ナビゲーションシステムやロボットを使用するコンピュータ支援手術が注目されている.人工股関節全置換術にナビゲーションシステムやロボットを使用することでインプラント設置精度が向上するが,導入コストなどの問題により使用率はいまだ低い.人工股関節全置換術のさらなる成績向上が期待される中で,コンピュータ支援手術の普及・発展が望まれる.

ロボティック・アーム手術支援システムを用いた,人工股関節全置換術の実際
—Mako®によるロボット支援THA 佐藤敦子,他

Mako®ロボティック・アーム支援システムはCT画像をもとにした術前計画に従って大腿骨の位置情報と正確な臼蓋リーミングならびにカップ設置を制御するセミアクティブ・システムである.2021年末にVer.4.0となり,カップの設置精度誤差は角度1.3°,位置1.3mm程度と高精度の設置ができるだけでなく,大腿骨側のレジストレーションを行うことで,頚部骨切り高位の決定やステム前捻角,脚長・オフセットの変化も術中にリアルタイムに認識できるようになった.さらに術前計画では事前にインピンジの有無の確認や骨盤の前後傾についても考慮できるようになっており,今後長期経過を見ていく必要はあるものの,短期的には良好な成績が報告されており,安全で質の高い手術を提供する有効な手術支援ツールである.

ROSA®によるロボット支援TKA 植原健二,他
人工膝関節TKA支援ロボット(ROSA®)はロボティックアームを有するロボティックユニットと術野とROSAの位置情報を認識するオプティカルユニットからなる.術者の計画した骨切り平面へロボティックアームがカッティングブロックを移動し,これに従って術者が骨切りを完了する.従来のjigを用いて行う手術方法から大きく変更することなく行える.この特徴はROSAの開発コンセプトである“surgeon center=術者中心“に象徴される.術者はロボットを操作して手術をするというより,ROSAという正確かつ優秀な助手とともに手術を遂行していくと言える.

CORITMによるロボット支援TKA 二木康夫
近年,全世界的にコンピュータ支援整形外科(CAOS)による人工膝関節全置換術(TKA)が増えている.CAOSの種類はさまざまであるが,本邦では2019年からロボット支援技術が導入された.ロボット支援TKAは他のCAOSとは一線を画し,骨切り精度の向上により軟部組織バランスとアライメントの調整を術者の思いどおりに再現することが可能である.次世代型ロボット支援手術システムCORITMを用いれば前十字靱帯(ACL)や膝内側側副靱帯(MCL)を最大限温存し,狭いストライクゾーンにインプラントを設置することが可能である.本稿ではCORIを用いたACL温存TKAを紹介するとともに今後の可能性や課題について述べる.

Mako®によるロボットアーム支援下TKA 石田一成,他
Mako®を用いた人工膝関節全置換術では,CTを用いた術前計画をもとに,術中軟部組織バランス評価を加味して手術計画を最終決定し,ロボットアームによる骨切りを行う.高い設置精度,軟部組織バランスの改善,関節周囲組織への低侵襲化,良好な超短期臨床成績と,医療費への好影響が報告されている.本稿では手術手技の解説と,現在の課題や注意点について述べる.

ロボット支援上肢手術 内藤聖人
近年,整形外科分野において手術支援ロボットが実臨床で使用されている.一方,上肢手術では,手術用ロボットシステムda Vinci®シリーズ(INTUITIVE社,California)が海外では応用されているが,本邦での臨床応用にはいくつもの障壁がある.本稿では,筆者が経験したda Vinciロボットを用いた上肢手術の実際と課題について紹介する.さらに,課題解決の鍵となり得る“腔”と“遠隔手術”について提言する.

脊椎手術におけるナビゲーション支援とロボット支援手術 金村徳相,他
ナビゲーション支援脊椎手術は術中3D画像装置により大きく進化し,脊椎手術の安全性や侵襲低減化に寄与してきたが,視覚的支援のみで手技自体を直接支援しない.最新IT技術を備えた脊椎手術支援ロボットは脊椎ナビゲーション機能を基本に多軸性ロボットアームがインストゥルメント手技を強固に保持することで,手術操作のばらつきを抑えることが期待されている.本邦でも2021年より臨床使用が開始されたが,本邦での普及のためには手術侵襲低減化,合併症回避,治療の質的向上などの検証とともに費用対効果の改善が望まれる.

MazorXTMによるC-armを用いたロボット支援脊椎手術 鳥居良昭,他
Mazor XTM Stealth EditionによるC-armを用いたロボット支援脊椎手術は,CT画像を取り込ませた専用ソフトウエアにて精密な術前計画が可能である.術中準備に時間は要するが,従来手術に比してより正確なスクリュー挿入が可能である.

ExcelsiusGPS®によるロボット支援脊椎手術 川口善治,他
2021年12月よりExcelsiusGPS®(グローバスメディカル社)のロボット支援脊椎手術を開始した.本システムの利点は,①一体型カメラスタンドを有するコンパクトな設計となっている,②移動可能なロボティック・ベースステーションがある,③タッチ式スクリーンモニターを使用できる,④高剛性のロボットアームとエンドエフェクタが備わっている,⑤統合された各種インプラントと手術器械類が使用可能である,等である.脊椎ロボットは稼働が始まったばかりで,今後の進展が期待される一方,検証も必要である.

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特集 整形外科ロボット支援手術

緒言
赤澤 努

整形外科手術支援ロボット開発の歴史
髙尾正樹

■股関節編
股関節におけるナビゲーションとロボット支援手術
池 裕之・他

ロボティック・アーム手術支援システムを用いた,人工股関節全置換術の実際──Mako®によるロボット支援THA
佐藤敦子・他

■膝関節編
ROSA®によるロボット支援TKA
植原健二・他

CORITMによるロボット支援TKA
二木康夫

Mako®によるロボットアーム支援下TKA
石田一成・他

■上肢編
ロボット支援上肢手術
内藤聖人

■脊椎編
脊椎手術におけるナビゲーション支援とロボット支援手術
金村徳相・他

Mazor XTMによるC-armを用いたロボット支援脊椎手術
鳥居良昭・他

ExcelsiusGPS®によるロボット支援脊椎手術
川口善治・他


●境界領域/知っておきたい
慢性疼痛治療におけるマインドフルネス
田中智里・他

●臨床経験
CTを用いた人工骨頭置換術前後の短外旋筋群の評価──後外側アプローチと共同腱温存後方アプローチの比較検討
横山勝也・他

骨粗鬆症性椎体骨折に対する保存治療──診療報酬制度からみた治療戦略
藤原啓恭・他

●症例報告
整形外科疾患による慢性疼痛を契機として自殺企図に至った7例
松本匡洋・他

胸髄症を呈し緊急手術を要した胸椎黄色靱帯内血腫の1例
撫井貴弘・他

超高齢者に発症した脱分化型骨外性粘液性軟骨肉腫の1例
國島麻実子・他

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