臨床外科 Vol.77 No.11
2022年 10月号(増刊号)

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 近年,画像診断は極めて精度が高くなるとともに,術前にさらに緻密に検討されるようになった.また,手術術式も縮小手術から拡大手術まで細分化されており,術前に自信をもって予定術式を決定するには緻密な術前診断によりなるべく正確に臨床病期分類を行う必要がある.また,診断結果次第では集学的治療を行う順番が変わり,術前に薬物療法や化学放射線療法をもってくるような判断もなされうる.結果的に判断が裏目に出ることもあるが,その可能性をなるべく低くすべく,的確な術式選択に資するガイドブックの編纂を目指した.
 一方,ひとたび術式が決まっても,臓器の大きさや形,そして術中に露出したり処理したり温存したりすべき構造物の走行は人それぞれである.触診に頼ることができない完全鏡視下手術においては,組織に覆われて直接視認できない血管などの走行や分岐のしかたが事前にわかっていると大変心強い.開腹手術であっても肝実質というブラックボックスの中を走る脈管は,直接は視認できない.局所解剖の正確な把握は精緻な手術を行う準備として極めて重要であることは言うまでもなく,また,この点においても近年の術前画像の情報量は極めて多い.そこで,術式選択とともに,的確な解剖把握のために資するガイドブックの編纂を目指した.
 本増刊号は令和の時代にふさわしい画像診断のガイドブックを目指して,上記の2つの目的を達成すべく総力を挙げて編纂されたものである.読者の皆様にこれまで幾多編纂された画像診断の特集とはひと味違ったものをお届けしたいと考え,著者の先生方にはいろいろと無理なお願いをして応えていただき,深く感謝したい.皆様の日常診療に役立てていただけるものと願ってやまない.

小寺泰弘(名古屋大学大学院医学系研究科消化器外科学)


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ISSN 0386-9857
定価 9,020円 (本体8,200円+税)

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特集 術前画像の読み解きガイド 的確な術式選択と解剖把握のために

■I 食道
頸部食道癌(再建含む)
峯 真司・他

胃切除後食道癌(再建含む)
八木浩一・他

根治的化学放射線療法後サルベージ手術
丸山 傑・他

食道裂孔ヘルニア
三ツ井崇司

開胸下縦隔リンパ節郭清
加藤寛章・他

胸腔鏡下縦隔リンパ節郭清
藤原尚志・他

縦隔鏡下縦隔リンパ節郭清
藤原 斉・他

■II 胃・十二指腸
食道胃接合部癌
中村謙一・他

胃癌
金治新悟・他

表在性非乳頭部十二指腸上皮性腫瘍(SNADET)
速水 克・他

幽門部リンパ節郭清
小濱和貴・他

膵上縁リンパ節郭清
三澤一成

脾門部リンパ節郭清
徳永正則・他

■III 小腸・大腸
◎悪性疾患
直腸癌
関 健太・他

直腸癌術後局所再発
池田正孝・他

右半結腸切除術
米澤博貴・他

左半結腸切除術
小杉千弘・他

直腸授動
笠井俊輔・他

側方郭清
花岡まりえ・他

◎良性疾患
潰瘍性大腸炎
松田圭二・他

クローン病
品川貴秀・他

大腸憩室炎
小練研司・他

成人腸重積
横井圭悟・他

腸閉塞
小山文一・他

S状結腸軸捻転
佐々木貴浩・他

虫垂炎
塩谷 猛・他

虫垂腫瘍
武田 和・他

痔瘻
三浦康之・他

急性腸間膜動脈閉塞症
平野昌孝・他

■IV 肝臓
肝癌:術前評価および蛍光ナビゲーション手術
西岡裕次郎・他

肝癌:疾患別の術式選択
長谷川 康

腹腔鏡下肝S7亜区域切除
三島江平・他

腹腔鏡下肝前区域切除
門田一晃・他

腹腔鏡下肝後区域切除
齊藤 亮・他

腹腔鏡下肝左葉切除
石川喜也・他

腹腔鏡下肝右葉切除
西澤伸恭・他

腹腔鏡下肝中央二区域切除
武田大樹・他

■V 胆道
胆管癌(遠位・肝門部領域・広範囲)
椎原正尋・他

胆囊・胆管良性疾患
川﨑洋太・他

肝門部領域胆管癌に対する胆管切除を伴う肝切除
細川 勇・他

拡大胆摘
青木 琢・他

胆囊摘出術・胆管結石除去術
梅澤昭子・他

先天性胆道拡張症に対する胆管切除+胆道再建
森根裕二・他

■VI 膵臓
通常型膵癌
木村七菜・他

膵囊胞性腫瘍(IPMN, MCN, SCN, SPN)
橋本大輔・他

慢性膵炎
種村彰洋・他

膵頭十二指腸切除
須藤広誠・他

膵体尾部切除
高橋秀典・他

膵中央切除
元井冬彦・他

Frey手術
堂地大輔・他

■VII 後腹膜
後腹膜腫瘍
横山幸浩・他

■VIII ヘルニア
鼠径ヘルニア・大腿ヘルニア
三澤健之・他

閉鎖孔ヘルニア
佐々木 愼・他

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術式選択の分水嶺,術中判断の勘所がわかる1冊
書評者:鈴木 研裕(聖路加国際病院消化器・一般外科副医長)

 「担当患者を術前カンファでプレゼンしてね」。

 学生実習や初期研修で外科をローテーションしている際によく聞かれるフレーズだ。プレゼンテーションを見れば,発表者が準備し理解しているのか,伝わってくるものである。ツボを押さえたプレゼンテーションを見ると,「デキる!」と感嘆してしまう。

 外科医にとって術前に把握すべきことは数多いが,大ざっぱにまとめると,(1)現病歴・手術適応,(2)耐術能,(3)予定術式,(4)予想される合併症と対応手段,となろう。多くの研修医は,(1)から(2)まではうまくまとめてくれるが,(3)・(4)となると難しく,高難度症例ほど指導医のサポートが必要となる。患者によって状況が異なる上に,術前診断法や手術手技が急速に進歩していることから,的確なプランを提示するには高度な知識と経験の両方が必要だからだ。まさにAIが苦手とする範囲であり,外科医の実力が出る。

 『臨床外科』編集委員会により編さんされた本書はまさに,この点に注目した書籍である。編者代表の小寺泰弘先生は日本外科学会専門医制度委員長を務められた日本外科学会の重鎮であり,本書からは教育の専門家として現状の問題点を指摘し,改善したいという気概が感じられる。的確な術式選択および的確な解剖把握に資するガイドブックをめざすべく,編者の「無理なお願い」(p.1)に応じた各分野の第一人者が,術式選択の要点や術前画像検査の読み解き方,術中判断の勘所を,570枚の術前画像と術中写真とを対比させ,詳細に記してくれている。内容も幅広く,鼠径ヘルニア根治術から腹腔鏡下肝S7亜区域切除まで取り上げられている。また,各術式について概説だけに終わらず症例を例示しながら考え方が述べられているので,術式選択の分水嶺を理解する助けとなる。

 読み進めていくうちに,まるでエキスパートのいる施設の術前カンファレンスに参加した気分になった。評者は上部消化管が専門であり,食道・胃の領域の術中写真を見ていると容易に手術をイメージすることができ,第一人者の考え方を体感した心地になった。ただ,次の大腸や肝臓の領域に入ると,途端に術中写真から局所解剖を把握することに時間を費やすようになった。難しいことを承知で言わせていただくと,術式選択にかかわるポイントとなる解剖については,術前CTと術中写真の間にイラスト解説があると,本書の伝えたい要点がより理解しやすくなると感じた。

 言い方を換えれば,本書はどんなエキスパートであっても読み応えのある内容である。術前カンファレンスの準備に悩む学生・研修医だけでなく,これから執刀する外科専攻医にも,煩わしいと思いつつ(?)外科医のお相手をしていただいている放射線科医にも,そして高難度症例に挑んでいく消化器外科専門医にもお薦めできる良書である。エキスパートの先生方には,ぜひ専門外の分野についてもご一読いただきたい。令和時代のレジデントの気持ちが少し理解できるかもしれない。

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