総合診療 Vol.31 No.5
2021年 05月号

ISSN 2188-8051
定価 2,750円 (本体2,500円+税)

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届け、医師の“文字”と“声”

大浦 誠(南砺市民病院 内科)

 仲良しブロガーのよしみで編集メンバーに混ぜていただきました。「アウトプットのいろいろな形」をテーマに、自分たちが一番読みたい企画になるようにと、論文だけでなく、医学書や小説(一般書)、ブログやTwitter、はたまたYouTubeやPodcastなど、さまざまなジャンルの“アウトプットの達人”に、ためになる話を書いていただきました。
 私は、アウトプットをすると「記憶の定着によい」(p.618)という動機で、勉強したことを2年ほどブログ(p.551)に記録しているだけでしたが、それをきっかけに連載のお話をいただいたり、ブロガーとのつながりが生まれたりしました。また、とある高名な医師が迷える医学生に「医学界新聞で連載している医師がいるから、南砺市民病院に見学に行ってみるとよい」とご紹介くださり、マッチングで初期研修医が当院に来てくれることにもなりました。人生、何が起こるかわからないものです。
 自分の得意分野でアウトプットすれば、きっとそれを受け止めてくれる方がいるでしょう。別に全世界に向けて発信するという気持ちでなくても、後輩や同僚、指導医に何かワクワクすることを教えてあげるだけで、立派なアウトプットだと思います。大事なのは、自分に合った方法を見つけたら、少しずつでいいので、それを続けることです。続けることで、小さなアウトプットが大きな財産になることでしょう。本特集を読んで、読者のみなさんの明日からの行動が、少しでも変わることを期待しています。


長野広之(京都大学大学院医学研究科 医療経済学分野)

 本誌2019年1月号の特集「教えて検索!」に、「CME編――『生涯学習』の重要性と習慣化」という原稿を書いたのは、2018年夏頃だったかと思います。今まで執筆したなかで1、2を争うほど気に入っている原稿ではあるのですが、読み返すと、当時の自分の生涯学習は「インプット」が中心だったことがわかります。その前年に職場が変わり、周囲が当たり前のように論文を読んでいるのに衝撃を受け、今まで触れることがなかった論文を自分も読むようになった時期でした。
 しかし、インプット中心の学習ではいまいち成長を感じられず悩んでいた時に出会ったのが、樺沢紫苑先生(p.566)の『学びを結果に変えるアウトプット大全』(サンクチュアリ出版、2018。p.570)でした。「学習におけるアウトプットの比率をもっと増やさなければ!」と思い立って始めたのが、「今日何読もう〜病院総合診療医の論文ブログ」(p.551)です。ブログという媒体を得たことで飛躍的にアウトプットが楽しくなり、現在に至るまで書き続け、記事は800を超えました。そこからアウトプットへの興味が増し、今回、このような企画を組み上げることができました。“アウトプットの達人”たちの熱い思いが目白押しで、私自身も大変楽しく読むことができました。
 アウトプットはつながりを広げ、あなたの世界を広げます。本特集を読んだあと、みなさんが楽しく続けられる自分に合ったアウトプット法を見つけ出すことを期待しています。


森川 暢(市立奈良病院 総合診療科)

 未曾有の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックにおいて、医師がアウトプットする意義はますます高まっている。ウェブカンファレンスが急速に普及し、レクチャーや学会もオンラインに移行した。当分、この流れはやみそうにない。オンラインであっても良質に情報を発信する工夫や技術が重要になっている(p.597)。また、COVID-19に関する情報も玉石混交だ。SNSやブログでアウトプットすることが容易になった反面、医師としての「科学リテラシー」や「プロフェッショナリズム」がアウトプットする医師に求められている(p.545)。
 しかしハードルが高くても、医師はアウトプットする必要がある。アウトプットを通じてしか、医師は自己成長もキャリアの発展も望めないとさえ思う。論文や学会発表だけではない。書籍、雑誌、ブログ、SNS、YouTube、Podcastも、立派なアウトプットなのだ。“文字”だけでなく“声”も、インターネットに乗り世界中に届きうる時代に私たちは生きている。良質なアウトプットは、きっと世界を良い方向に変えるだろう。すべての医師が、アウトプットの大海に乗り出すのは、今この時だ。
 最後に、私は心に留めておきたいことがある。アウトプットの原点は、やはり「ベッドサイド」にあるのだと。夏川草介先生(p.593)も作家である前に「臨床医」であることに、私は感動を覚えた。アウトプットとはまさに、医師の生き様そのものなのかもしれない。


吉田常恭(京都大学医学部附属病院 免疫・膠原病内科)

 本を読む時、どこから始めるだろうか? まず目次を開く方、本文にパラパラ目を通す方、さまざまいると思う。小生は「まえがき」、つまり今まさにご覧いただいている、この部分をまず読む。多くの場合、長い本文を書き終えて最後にとりかかるのが、まえがきである。ゆえに、筆者の思いが凝集される文章でもある。まえがきが面白ければ、本文もきっと面白いに違いない。しかし今回、読者のみなさんには、今この瞬間にもここはすっ飛ばして、本文を読み始めていただきたい。なぜか。小生が面白いことを書かなくとも、本文にはるかに面白い内容がすでにあるからだ。
 もう少し付き合ってくださる稀有な読者には、小生なりの本特集の楽しみ方を紹介しよう。まず目次を開き、執筆者の名前を追ってみてほしい。何か気づくことはないだろうか。そう、すべての執筆者がすでに各方面で活躍され、名の知られた先生方である。このようなスターたちが一堂に会することを、誰が想像できただろう。本特集の主題はアウトプットであるが、小生らが純粋に「読みたい」と思った先生方を集めた特集でもある。
 本特集には、さまざまなアウトプットの極意が書かれている。実践できるのであれば、それに越したことはない。しかし、すべてを実践できる必要はない。そもそも、達人の仕事を一見しただけで真似ることなど到底できないはずだ。それでも、普段は見ることができない職人技を垣間見られるという点で、本特集は貴重な媒体である。

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医書.jpにて、収録内容の記事単位で購入することも可能です。
価格については医書.jpをご覧ください。

■総論 臨床医のためのアウトプット
臨床医のための『アウトプット大全』――爆発的「自己成長」を導く“アウトプット力”の鍛え方
樺沢紫苑

忙しくても「アウトプットし続ける」極意を教えます!――動機づけと時間のつくり方
中島 啓

■Ⅰ章 「書くこと」で魅せるアウトプット――君に届けたい“文字”のかたち
書きたいけどなかなか書けない「Letter」の書き方
片岡裕貴

一流雑誌に「研究論文」を載せ続けるために私が意識していること
青木拓也

一流の「医学書」を書くためのマイ流儀を語ります!
上田剛士

「ブログ」を書き続けることで、医師は圧倒的に成長する!
倉原 優

医療の内と外とをつなぐために  医師だからこそできる「一般書」の書き方
夏川草介

■Ⅱ章 アウトプットのための「オンライン」活用法─君に届けたい“声”のかたち
極めればここまでできる!  「オンライン勉強会」の極意
橋本忠幸

「YouTube」は最強の教育コンテンツだ!
平島 修

発信メディアとしての「Podcast」の魅力
藤沼康樹

医師のためのバズる「Twitter」講座  “140字”の意義
市原 真

■スペシャル・アーティクル 
私とアウトプット
仲田和正

■今月のQuestions


●Editorial
届け、医師の“文字”と“声”
大浦 誠|長野広之|森川 暢|吉田常恭

●ゲストライブ
今なぜ「アウトプット」か  コロナ以降の変化と不変の価値
大浦 誠|長野広之|森川 暢|吉田常恭

●What’s your diagnosis?|221
もれないように考えよう
石丸裕康|八田和大

●アスクレピオスの杖|想い出の診療録|13
秋祭りのたびに
松村榮久

●『19番目のカルテ』を読んで答える!|あなたの“ドクターG度”検定&深読み解説|2
本当に必要な治療  (『19番目のカルテ─徳重晃の問診』第2話より)
徳田安春

●オール沖縄! カンファレンス Ver.2.0|レジデントの対応と指導医の考え|53
同じ主訴での頻回受診を「精神的な問題」と考える前に!
譜久山倫子|與那覇忠博|新里 敬|徳田安春(監修)

●“コミュ力”増強!「医療文書」書きカタログ|11
往診先から病院への緊急紹介状  「2回」に分ければ時短&効率的!
天野雅之

●研修医Issy & 指導医Hiro & Dr.Sudoの とびだせフィジカル! 聴診音付|5
心臓のフィジカル  Part1
石井大太|中野弘康|須藤 博

●Dr.上田剛士のエビデンス実践レクチャー!|医学と日常の狭間で|患者さんからの素朴な質問にどう答える?|14
暗い所でスマホを使うと失明する?
上田剛士

●“JOY”of the World!|ロールモデル百花繚乱|16
医師の仕事に広がりと可能性を
吉田穂波

●臨床小説|後悔しない医者|あの日できなかった決断|14
昼間の星空がみえる医者
國松淳和

●投稿 GM Clinical Pictures
視れば忘れない耳寄りな情報
日吉哲也|鍋島茂樹

頸が腫れて痛い! エコーを当てると?
伊豆倉 遥|上松東宏

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