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インターライ方式ガイドブック

ケアプラン作成・質の管理・看護での活用

編集:池上 直己/石橋 智昭/高野 龍昭
執筆:池上 直己/高野 龍昭/早尾 弘子/土屋 瑠美子/石橋 智昭/小野 恵子/阿部 詠子/五十嵐 歩

  • 判型 A4
  • 頁 280
  • 発行 2017年12月
  • 定価 3,888円 (本体3,600円+税8%)
  • ISBN978-4-260-03444-9
MDS方式を刷新したインターライ方式の導入から活用まで解説したガイドブック
MDS方式を刷新したインターライ方式の導入方法から、さまざまな場面での活用まで解説したガイドブック。アセスメントをより効果的に行い、それをケアプラン作成に反映させていくコツを4事例から習得できる。加えて、蓄積したアセスメントのデータからサービスの質管理を行う方法や、地域包括ケア時代の多職種連携に果たす同方式の役割を紹介する。同方式のより効果的な活用、または導入を目指すケアマネジャー必読の書。
序 文
発刊に当たって

 本書は,現場で活躍するケアマネジャーから管理者,教育・研修の担当者に当た...
発刊に当たって

 本書は,現場で活躍するケアマネジャーから管理者,教育・研修の担当者に当たる方々を対象に,多職種によるケアプランの作成と質の管理を支援するために執筆した.2011年に発刊した『インターライ方式 ケア アセスメント-居宅・施設・高齢者住宅』を使いこなすためのガイドブックであり,またMDSの利用者に対しては,インターライ方式に切り替えるメリットおよび両者の相違点などについても解説している.まずは全容を理解していただくために,インターライの前身であるMDSがアメリカで誕生し,日本に広がった過程を解説する.そのうえで本書の構成を紹介する.

[インターライ誕生の背景]
 社会福祉において世界のモデルとなったのは,イギリスで1834年に制定された貧困法である.同法によって身寄りのない高齢者は,浮浪者などとともに貧困院に収容され,劣悪な環境に置かれていた.その後,病院が発達し,治療によって改善の見込める者は病院に入院するようになったが,改善の見込めない者は依然として同施設の長期滞在病床(long-stay beds)に留まり,処遇は改善されなかった.
 こうした長期滞在病床から退院し,自立することもできる,というエビデンスを初めて提示したのが老年医学の泰斗である(イギリスの)Marjory Warren医師であった.Warren医師は,長期滞在病床に入院していた患者に対して,自立を促進するようにチームケアで対応し,ベッドやトイレなどの環境を整備すれば,状態を改善できることを示した.老年科医として初めて統計を取り入れ,1944年から1946年の患者を分析したところ,3分の1は退院しており,さらに1950年には食事の介助が必要で,失禁で寝たきりの状態で2年以上経過していた50人の患者のうち,2割は自立した状態で退院し,さらに3割は昼と夜で着替えをし,部分的に自立できるほどに改善した.
 このように患者の状態が改善して退院できればNHS(National Health Service)に対する財政圧力も緩和できるので,保健省の支援も受けて,新たに創設された高齢者ケア医学会の臨床会議がWarren医師の勤務する病院で1948年に開催された.その後,老年医学は専門医の領域として確立されたが,その対象を75歳以上などの年齢によって区切るべきか,あるいはより若い患者を含めて他の専門の診療科とともに統合的に診るべきかの結論は出ておらず,前者の場合でも,小児科のように一手に対応することはできない.というのは,小児科と比べて対象者は多いが,私費診療の機会がないことなどの理由により,老年科を目指す若い医師は少なく,現在あるポストを埋めることも難しいからである.
 こうした問題点を残しつつも,老年医学によって確立された患者の状態を包括的に評価するComprehensive Geriatric Assessment(CGA:包括的老年科評価)の重要性は,イギリスだけでなく,欧米で幅広く認識されるようになった.ところが,CGAの対象とすべき患者数に比して,対応できる老年科医,看護師,医療ソーシャルワーカー(Medical Social Worker:MSW),療法士などによって構成される老年科チームが絶対的に不足していた.
 そこで,アメリカではナーシングホームの質が社会問題になると,CGAに代わり,看護師やMSWでも使える簡便な方法を,以下の手順で開発した.
1.各診療科の専門医,看護師,医療ソーシャルワーカー,療法士,栄養士などの各専門職から意見を収集して,入所者を包括的に評価するために必要なアセスメント項目を決めた.
2.どの職種でも理解できるように各アセスメント項目の用語を統一し,また厳密に評価できるように,例えば過去3日間に食事などにおける支援の程度と頻度を細かく規定して各レベルを決めた.その結果,約350の項目より構成されるMDS(Minimum Data Set)のアセスメント表を考案した.
3.MDSの各項目における評価によって,それぞれ惹起される転倒や経管栄養などの18の領域において,ケアプランを作成する際の留意点や対応方法をそれぞれ示したRAPs(Resident Assessment Protocols:入所者評価指針)を開発した.
 以上のMDSによる評価と,RAPsを参照したケアプランの作成を,1991年よりすべてのナーシングホームのすべての入所者に対して義務づけた.MDSのデータは,利用者の転倒する割合などから施設の質を評価するQI(Quality Indicator:質の評価指標)に使われ,また入所料を決めるための入所者分類であるRUG(Resource Utilization Groups:資源利用群)にも使われる.このように異なる目的でMDSのデータを使うと効率的であるばかりでなく,精度も高まる.というのは,例えば入所者に褥瘡があれば,ケアコストは高くなるので入所料の高いグループに分類されるが,他の施設よりも割合が高ければ質は低いと評価されるので,いずれにも偏らずに評価することを期待できるからである.
 しかし,アメリカではMDSを導入する際,ナーシングホームの職員に対して,その意義や使用方法について研修などを実施しなかった.そのため現場では有用性は理解されず,政府に提出しなければいけない統計資料として認識された.その結果,政策を立案・評価するうえで有用なデータベースを構築できたが,現場におけるケアの質を改善するうえで必ずしも十分な効果をあげなかった.
 これに対してヨーロッパでは,老年科医がMDSの価値に注目し,彼らが中心になって政府に導入を働きかけたので,十分な研修が実施され,質の改善にも貢献している.現在,アイスランドとケベック州を除くカナダ,およびベルギー,フィンランドとイタリアの主要地域においてMDSによるアセスメントが義務化されている.
 こうした過程で1993年にインターライが誕生した.インターライはMDSを開発したアメリカのシステム工学,看護,医療ソーシャルワークの専門家と,ヨーロッパでMDSに関心をもった老年科医により組織され,発足時に筆者が理事を務めた.非営利の組織としてワシントンに本部があり,印税などの収入はすべて研究開発・広報活動などに充てられ,各国から選ばれたフェロー個人に配分することを禁止している.
 現在,インターライは高齢者ケアだけでなく,緩和ケア版,精神科版などを開発し,さらに各版の整合性を高めるため,共有するアセスメント項目の内容と表記を統一したインターライ方式に2009年に改めた.その際,施設版のRAPsと在宅版のCAPs(Client Assessment Protocols:利用者評価指針)を統合し,CAPs(Clinical Assessment Protocols:臨床評価指針)に改版した.
 このようにMDSからインターライ方式に全面改定する際,様式を統一しただけでなく,インターライに蓄積された70万件のアセスメントデータを活用し,一層根拠に基づいた内容に改めている.例えば,CAPsをトリガー(選定)する際,MDSにおいては専門家の意見や文献に基づいてトリガーを決めていたが,インターライ方式では利用者をフォロー(追跡)し,例えば「転倒」のCAPsの場合は,実際に転倒した者の過去の属性を統計的に解析することによって規定している.その結果,必要に応じて精緻なリスク調整を行う必要もあったので,トリガーする際にソフトのアルゴリズムを必要とするCAPsもある.なお,データベースはアメリカのデータだけでなく,カナダ,アイスランド,イタリアおよび日本などのほか,インターライを構成する30か国から現在も集められている.
 インターライの総会は,隔年に開催されている.その際,組織としての活動報告のほか,急性期医療における要介護者のアセスメント,利用者のQOLやサービスの満足度の評価,救急医療における振り分け,などを目的とした新しいツールの開発と,各国で蓄積された膨大なデータベースを用いた論文の執筆について,それぞれに取り組むグループからの発表と討議を行っている.

[日本における展開]
 日本では家長が家族を養う責任の一環で,高齢者のケアも専ら家族が担っていた.公的扶助は1874年の恤救規則によって初めて制度化され,その対象として極貧者,廃疾者,孤児などとともに老衰者も含まれ,米代が支給されたが,極めて限られた人数であった.同法は1929年に救護法に改められ,この中で極貧の老衰者に対して養老院が設置された.
 養老院は1963年の老人福祉法の制定に伴い養護老人ホームに名称が改められ,併せて所得が必ずしも低くなくても,ケアが必要であれば入所できる特別養護老人ホーム(以下,特養)が創設された.また,同法によって在宅においても,今日のホームヘルパーのルーツである家庭奉仕員が創設された.しかし,いずれも対象は低所得の一人暮らし老人にほぼ限られていた.
 高齢者ケアが大きく拡大したのは1973年の老人医療無料化である.無料化によって医療需要は大きく伸び,65歳以上の入院患者は20年で20倍に増えた.この中には急性期の入院も含まれていたが,大部分は老人病院における長期療養であった.当時,特養はまだ養老院の暗いイメージを継承し,数的にも不足していたので老人病院が特養の機能を代替した.
 このように病院における施設ケアが中心になったが,CGAは行われず,提供されたケアはイギリスで同時期に改廃がほぼ完了した長期ケア病床に近い内容であった.しかも診療報酬におけるケアに対する費用補償が不十分であったため,「薬漬け,検査漬け」の医療が広まった.それを改善するため,1986年に一床8.0m2と包括報酬の老人保健施設,1990年に入院医療管理料によるマルメ,1992年に一床6.4m2の療養型病床群がそれぞれ創設され,こうした診療報酬などによる誘導で医療施設における長期ケアは徐々に改善した.
 こうしたケアの質向上の動きの一環で,1996年にケアプランの作成が加算要件になった.当時はケアプランを作成する方法は,北海道で検証されたMDSしかなかったので,その成果を報告書にまとめ厚生省監修で1994年に発刊された『高齢者ケアプラン策定指針』はたちまちベストセラーになった.そして介護保険の創設が決まると,居宅版であるMDS-HCの『在宅ケアアセスメントマニュアル』も注目され,それをバージョンアップしたMDS-HC2.0は爆発的に売れた.
 その理由は,ケアマネジャー(以下,ケアマネ)に対する実務研修で厚生省が指定したケアプラン方式の1つになり,推奨されたことにある.すなわち,介護保険法の目的である「自立支援」における「尊厳を保持し,その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができる」という目標を具現化するには,CGAに準じたMDSによる転倒の危険性や社会的孤立などのニーズを体系的に評価する必要性があるという判断があった.こうした経緯でケアマネの実務研修でMDSおよびその居宅版であるMDS-HCが取り上げられ,知識と経験の優位性からケアマネの資格をとる職種も当初は看護職が過半数を占めていた.
 しかし,日本にはCGAの基盤はなく,にわかに養成されたケアマネに期待しても無理であった.そのうえ行政による監査の焦点は人員配置などの要件順守に置かれることが現場に周知されたことも受けて,ケアマネの中心業務は給付管理であると認識されるようになった.そして,2006年より実務研修においてケアプラン方式に基づく研修がなくなると,MDS方式に対する関心はしだいに薄れた.
 なお,2010年には『ケアプラン点検マニュアル』は確かに用意されたが,同マニュアルの主な目的は,ケアプランのサービス内容が,本人や家族の状態についての記載によって裏づけられているかどうかの確認に置かれており,アセスメント表による体系的な評価を求めていない.また,同マニュアルに従って点検するかどうかの判断は各市町村区に任されており,順守しない場合の罰則も特に設けられていない.
 こうした経緯で,インターライ日本は厳しい状況に置かれたが,高齢者ケアを真剣に考える現場の皆様からご支援を引き続きいただいた.そこで,インターライ本部が2009年に,インターライ方式を刊行したことを受けて,インターライ日本として独自に居宅・施設・高齢者住宅の各版を1つのアセスメント表に統合し,各事業者の判断で各アセスメント項目を選択できるようにした『インターライ方式 ケア アセスメント』を開発し,2011年に刊行した.そして同書に居宅と施設で共通に使える新CAPsを含めた.MDSのユーザーが1日も早くインターライ方式に変わることを切に願っており,インターライ日本としてもソフトの拡充などで可能な限り支援してゆきたい.
 昨今,「治る介護」などが注目されているが,対応前後の利用者の状態を,厳密にアセスメントしないと改善したかどうかを評価できず,また多職種協働のケアを実施するには共通言語が必要である.介護の分野には,医療と異なり,効果を測ることのできる血圧のような簡便な方法はないので,歩行や食事などのADLや気分の改善などを細かく把握しなければいけない.またサービスの有効性を担保するためには,まずは根拠に基づいて作成されたCAPsに従ってケアプランを作成するべきであろう.

[本書の構成]
 本書は,同マニュアルを使いこなすためのガイドブックとして刊行した.I部とII部に分かれ,I部の第1章「なぜインターライ方式なのか」では,インターライ方式の特徴をざっくり,わかりやすく解説し,併せてケアマネに対して提起されている課題への対応を示している.インターライ方式が初めてである方だけでなく,MDSユーザーの方にも改めて確認していただきたい章である.次いで第2章では,アセスメントからケアプランの作成までのプロセスを丁寧に解説し,第3章では居宅・施設から各2例(施設は特養,老健から各1例)の合計4例の事例を紹介する.ここまでをケアマネジャーと社会福祉士としての豊富な実務経験を有する高野龍昭さんに解説いただき,第4章において早尾弘子さんと土屋瑠見子さんに「よくある質問」に対する回答で細かい部分を補完いただいた.
 以上が基礎編で,続くII部の応用編では,まず第5章で,石橋智昭さんがインターライのアセスメント項目から計算される利用者の全体像を把握するスケールと,各事業者の質を評価するQIについて説明する.第6章と第7章は教育研修における実践であり,第6章では小野恵子さんが「在宅看護論」の学部教育の場においてオンラインでアセスメント表に記入する学習方法,7章では阿部詠子さんが研修の教材として,短期入所中に発症したせん妄をチームで把握し,対応した事例を提示する.そして最後の8章では,五十嵐歩さんが地域包括ケアにインターライ方式を取り入れることによって看護部を中心とした院内連携・地域連携が促進される可能性を事例として提示する.

 本書が皆様のインターライに対するご理解を深め,それぞれが抱えているニーズに応えることができれば幸いである.読み方として,本書の第1章をお読みのうえ,それぞれご関心のある章から開始されることをお勧めする.

 2017年11月
 池上直己
 特定非営利活動法人 インターライ日本 理事長
 聖路加国際大学大学院 特任教授
 慶應義塾大学 名誉教授
目 次
発刊に当たって

第I部 なぜ,どのようにインターライ方式を導入するか
 第1章 なぜインターライ方式なのか
  1.1 インターライ方式の概要と特徴
  1.2 ケアマネジャーを巡る指摘
  1.3 不十分なアセスメント
 第2章 インターライ方式によるアセスメント・ケアプラン作成のコツ
  2.1 インターライ方式によるケアプラン作成のプロセス
   Step 1 アセスメント表による情報収集
   Step 2 CAPの選定(トリガーの確認)
   Step 3 選定された全CAPから詳細に検討するCAP:「主要CAP」を選ぶ
   Step 4 CAPガイドラインに沿って詳細に検討する
   Step 5 課題(ニーズ)設定からケアプラン作成
  2.2 インターライ方式と課題整理総括表
 第3章 ケアプラン事例集
  3.1 はじめに
  3.2 事例
   事例1 在宅の独居高齢者の事例
   事例2 在宅の高齢者(高齢者夫婦世帯)の事例
   事例3 特別養護老人ホームにおける看取り期の事例
   事例4 介護老人保健施設での在宅復帰支援の事例
 第4章 よくある質問に対する回答
  4.1 インターライ方式の導入に関する質問
   これから始めようと考えている方
   旧MDS版を利用されている方
  4.2 アセスメントに関する質問
   全体に共通する質問
   アセスメント領域別の質問

第II部 インターライ方式の活用例
 第5章 ケアサービスの質の評価と改善
  5.1 アセスメントデータを質の管理に活用しよう!
  5.2 スケール:アセスメントデータから算出するスケールの活用
  5.3 介護QI:アセスメントデータから算定する質の指標の活用
  5.4 PDCAサービスの質の改善への活用
 第6章 看護教育での活用
  6.1 歴史の浅さゆえの在宅看護教材の不足
  6.2 教材としてのインターライ方式の活用
  6.3 「在宅看護論」教育における「インターライ方式」の活用例
  6.4 訪問看護計画書の具体案
 第7章 施設の看護職員による活用
  7.1 はじめに-なぜいま,「せん妄」を取り上げるのか
  7.2 せん妄の原因と早期対応の重要性
  7.3 せん妄の評価とアセスメントによる把握
  7.4 6つのせん妄の原因と確認
  7.5 せん妄の疑いが強い場合の対応
  7.6 せん妄の事例
  7.7 事例におけるせん妄の発症と対処
  7.8 せん妄に対して早急に行うべき看護はなにか?
  7.9 改めてFさんの事例から知る,入所時の包括的なアセスメントの重要性
 第8章 地域包括ケアにおける活用
  8.1 地域包括ケアとインターライ方式
  8.2 仮想事例(Gさん)の概要
  8.3 急性期病院入院時の生活情報の把握
  8.4 病院内における情報共有
  8.5 地域医療連携における情報共有
  8.6 在宅ケアにおける多職種連携
  8.7 居住系施設における看取り
  8.8 今後の発展