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問題解決型救急初期検査


(第2版)

著:田中 和豊

  • 判型 B6変
  • 頁 512
  • 発行 2019年01月
  • 定価 5,400円 (本体5,000円+税8%)
  • ISBN978-4-260-03598-9
救急でよく遭遇するバイタルサインや検査値の異常に対する問題解決のために
いずれも基本的な検査ばかりであるが、どういう症状があったら何を考えてこの検査をするのか、他に組み合わせて実施する検査項目は何か、などを必要に応じて解説した書。フローチャート、step、鉄則、pointなどでわかりやすく示した。内科ではなくあくまで救急という視点から、問題解決のための検査の進め方、検査値の異常への問題解決的アプローチという双方向を意識して、初学者に向けて親切かつ簡潔明瞭に記した。
序 文
第2版 序

 本書は『問題解決型救急初期診療』の姉妹編として2008年に上梓したが,幸い今回改訂の機会に恵まれることができた.
 初版からの10年間,医療は爆発的に進歩し続けている.初版執筆時には何とかまとめ上げるので精一杯であったが,今回の改訂時にも筆者一個人ですべての領域を...
第2版 序

 本書は『問題解決型救急初期診療』の姉妹編として2008年に上梓したが,幸い今回改訂の機会に恵まれることができた.
 初版からの10年間,医療は爆発的に進歩し続けている.初版執筆時には何とかまとめ上げるので精一杯であったが,今回の改訂時にも筆者一個人ですべての領域を十分に網羅できるのか危惧を抱いたまま改訂作業を開始した.
 実際1年以上にわたる改訂作業は,砂上の楼閣を建てるのに似ていて難儀を極めた.その間,新しい知識がすぐに風化して古いものとなっていくことが繰り返され,徒労を感じる日々であった.
 できうる限りの文献を検索し,参考になる文献は英語論文に限らず,日本語の論文や雑誌・新聞記事なども参考文献とした.また,検索して発見できなかったものははっきりとないと記載し,また,古い文献しかなかったものはそのまま古い文献を使用した.
 改訂版は,最新のエビデンスとガイドラインに準拠し,できるだけ簡略化して記載したつもりである.また,他の拙著とも共通するポリシーであるが,本書の内容は筆者が理解していること,および,筆者が実際に臨床で実践していることのみしか記載していない.筆者が理解していないこと,および,実際に臨床で実践していないことは一切記載しないこととしている.

 本書の基準値については,下記の書籍などを参考にして筆者が選出した.

・河合忠(監),山田俊幸,本田孝行(編):異常値の出るメカニズム,第7版.医学書院,2018.
・Kasper DL, Fauci AS, Hauser SL, et al:Harrison’s Principles of Internal Medicine, 19th ed. McGraw-Hill Education, New York, 2015.
・UpToDate®

 初版との重要な改訂点を以下に列挙する.

第1部 イントロダクション
・医療も含めて現代のテクノロジーを理解するのに絶対不可欠な「8.Bayes統計学」の章を追加した(→26頁).
第4部 血液検査
「7.カルシウムとリン」に新しい制御ホルモンFGF-23の記述(→201頁)を追加.
「9.腎機能」における急性腎障害(AKI)(→217頁),および「10.肝機能」における急性肝不全(→228頁)は新しい診断基準に準拠した.
「14.循環器系マーカー」(①トロポニン,②BNP/NT-proBNP,③D-dimerの各項目)については全面的に内容を刷新した(→264頁).
・新たに「15.急性期反応因子」(①CRP,②ESR,③CRPとESRの乖離,④プロカルシトニン,⑤フェリチン,⑥可溶性IL-2受容体の各項目)の章を新規追加した(→271頁).
第5部 動脈血ガス
「4.低酸素血症」では,急性呼吸促迫症候群(ARDS)のBerlin定義を追加した(→292頁).
「7.酸塩基平衡障害の評価」では,130年間混乱が続いているという酸塩基平衡障害の評価法について,その歴史を交えて以下の3つのアプローチ法を明確に区別して記載した(→308頁).
  Copenhagenアプローチ(別名 BEアプローチ)
  Bostonアプローチ(別名 生理学的アプローチ)
  Stewartアプローチ(別名 物理化学的アプローチ)
 また,Bostonアプローチで使用する一次性酸塩基平衡障害に対する二次性反応の予測式は40年以上前のものであったので,今回改訂した.
第7部 尿・体液検査
「1.尿検査」に利尿薬服用時に有用なFEUN(→396頁),そして,薬物中毒の診断に有用な尿中薬物検査(→397頁)の記述を追加した.
第8部 感染症検査
「2.染色法」LAMP法(→431頁),「4.各種検査」CD検査(→437頁)およびβ-D-グルカン(→439頁),「5.結核検査法」インターフェロンγ遊離試験(IGRA)(→442頁)の各項目を追加した.
「6.敗血症」に新しいsepsis-3の定義を追加した(→451頁).

 また,病態生理を理解するためにはイラストが効果的である.そのイラストも今まで自分自身で描いていたが,より効果的なイラストにするために今回からプロのイラストレータである伊藤弓美氏に依頼した.下記に本書のイラストを列記する.

・ルビンの壺(→21頁)
・診療過程(→24頁)
・錐体路(皮質脊髄路)(→134頁)
・感覚神経経路(→136頁)
・好中球の分化過程(→149頁)
・浸透圧調節系と容量調節系(→176頁)
・浸透圧調節系・容量調節系および血漿Na濃度のダイアグラム(→177頁)
・高Na血症の鑑別診断のダイアグラム(→178頁)
・肝胆膵酵素の動向による胆管閉塞部位の推測(→234頁)
・古典的血液凝固モデル(cascade or waterfall model)(→251頁):Frank Lloyd WrightのThe House on the Waterfall風に描画
・止血(凝固)の細胞基盤型モデル:cell-based model of hemostasis(coagulation)(→252頁)
・酸塩基平衡の海(→304頁):初版のイラストをルネッサンス風に描画
・The Great Trans-Atlantic Acid-Base Debate(→308頁)
・冠動脈の解剖(→361頁)
・冠動脈と刺激伝導系(→363頁)
・尿電解質による血漿浸透圧変化の評価(→395頁)

 薬物については原則として日本の保険適用の薬物と使用量とした.日本の保険適用外である場合には明記した.ただし,アミノグリコシドについては筆者は米国の使用量で投与している.
 現在ではインターネットで瞬時に様々な情報にアクセスできるようになった.しかし,ネット検索でヒットした知識は信頼性に疑問が残る.医療の知識は単に医療者にとって検索しやすいという利便性だけではなく,患者の命に直結するものであるので,信頼性が最重要であるはずである.したがって,安易なネット検索で医療を実行するよりも,多少知識が古いかもしれないが信頼性がある書籍の知識を基に医療行為を行うべきである,と筆者は信じている.

 本日ここにようやく砂上の楼閣は形になり出版にこぎつけることができた.

 最後に,本書を上梓するにあたって,丹念に原稿をご校正いただいた神戸大学大学院医学研究科微生物感染症学講座感染治療学分野/同大学医学部附属病院感染症内科・国際診療部/同大学都市安全研究センター感染症リスク・コミュニケーション研究分野・教授 岩田健太郎先生,聖路加国際病院内分泌代謝科・部長 能登洋先生(五十音順),および,忍耐強く校正にご尽力いただいた医学書院の方々に深く感謝する.

 なお,本書に対する質問・要望やご意見は下記の連絡先までお願いいたします.

 連絡先 prアットマークigaku-shoin.co.jp

 2019年1月
 田中 和豊
書 評
  • 現場での重要点を的確に網羅した「おねだん以上」の書
    書評者:志水 太郎(獨協医大主任教授・総合診療医学)

     本書は,救急のマニュアルとしては最も有名なものの一つである,田中和豊先生の『問題解決型救急初期診療』(医学書院)の姉妹本にあたる同...
    現場での重要点を的確に網羅した「おねだん以上」の書
    書評者:志水 太郎(獨協医大主任教授・総合診療医学)

     本書は,救急のマニュアルとしては最も有名なものの一つである,田中和豊先生の『問題解決型救急初期診療』(医学書院)の姉妹本にあたる同著者の「検査版」の第2版である。

     検査と銘打たれているが,本書の本質は検査の解説本やマニュアル的な内容ではない。

     「この本を眼の前の患者を救いたい人に捧げる」とだけ書かれた冒頭のページは鮮烈である。救急現場で疾患と対峙する医師ならではの魂のこもったお言葉と思う。田中先生は自分より10年ほど上の学年の先生にあたられるが,このような先生が自分が1年目の時に上級医にいらしたら,どれだけ心強いか。勇気が湧き明日へのモチベーションが高まることは,自分の研修医時代を振り返っても想像に難くない。

     「診療」は初版が2003年,「検査」は初版が2008年である。これらの本がなぜ長く読まれているか。序文にも書かれているが,エビデンスに配慮するだけではなく,ご自身で実践されていないことは記載しない,という田中先生のポリシーが活きているからだと感じる。ベッドサイドの実感を伴わない臨床教育は内容が薄い。これは評者自身も日々感じていることであり,患者不在のディスカッションや一般論は,魂に刻み込まれることはないだろう。一見すると「実践していないことは記載しない」という本書の方針は一般化されたマニュアル的書籍としては異彩を放つように映るが,実臨床家の眼から見れば大変リーズナブルである。また,幸い本書はマニュアルのように見えて,マニュアルとは銘打たれていないところに独自性が高い。

     本書の臨床的こだわりは随所に見られる。検査という本のタイトルからにわかに想像する採血や尿の検査などの総花的マニュアルという印象を覆し,470ページにわたる本文のおよそ3分の1までが臨床の考え方をまとめた総論につづくバイタル・サイン(とモニタ),フィジカルに割かれている。これは,バイタル・サインの測定と解釈やフィジカルもれっきとした検査であり,またそれらの検査は項目が少ないながらも,より高度なテクノロジーを要する現代医学の検査を圧倒するかのような情報量を秘めている,という田中先生の強いメッセージが込められた結果であると感じる。実際に救急の現場では,一般採血や尿を見てマネジメントが変わることもたまにはあるが,大方の方針はフィジカルまでで立ってしまうということが多い。例えば発熱の患者では,救急外来における採血が与える熱源に関する情報は極めて限定的であることは,読者の皆さまなら想像に難くないだろう。

     フィジカルの章も,目次だけを見ても素晴らしい。フィジカルが網羅的に並べられるのではなく,呼吸,循環を筆頭に,危険な病態を示唆する腹部や皮膚といった項目が優先的に並べられていることなど,現場で用いるフィジカルが濃淡をはっきりさせて記載されていることに強い共感を覚える。身体診察の2つ目の項目は「Stridorと肺音」という章だが,「呼吸」などと平板な章立てになっていない点など,重要度のメリハリを実感する内容で非常に良いと感じる。

     肝心の「検査」の章だが,各検査について,不要な記載はなく,臨床的有用性や基準値,重要な表などがぎっしりと詰まっていて,この一冊さえあれば検査についての救急における重要点を十分に網羅できる内容になっている。

     このように,本書は救急における熱いハートとメッセージがぎっしり詰まった本である。コンパクトながら定価5000円以上の価値は大きく,この本がボロボロになるまで使い込めば,その価値は10倍にも20倍にもなって返ってくるだろう。
目 次
第1部 イントロダクション―検査の原則―
[1]検査の目的
[2]検査の指標
[3]検査の選択
[4]検査計画
[5]検査解釈
[6]診断
[7]マネジメント
[8]Bayes統計学

第2部 バイタル・サインとモニタ―病態把握の指標―
[1]バイタル・サインとモニタ
[2]意識
[3]呼吸
[4]脈拍
[5]血圧
[6]体温
[7]酸素飽和度
[8]血糖
[9]尿量

第3部 身体診察―鑑別診断の特定―
[1]問題解決型身体診察
[2]stridorと肺音
[3]心音
[4]腹部診察
[5]黄疸
[6]リンパ節腫脹
[7]皮膚
[8]神経学的診察

第4部 血液検査―病態生理の解明―
[1]血液検査の原則
[2]白血球
[3]ヘモグロビン・ヘマトクリット
[4]血小板
[5]ナトリウム
[6]カリウム
[7]カルシウムとリン
[8]マグネシウム
[9]腎機能
[10]肝機能
[11]アミラーゼ
[12]CK
[13]凝固能検査
[14]循環器系マーカー
[15]急性期反応因子

第5部 動脈血ガス―診断・治療の羅針盤―
[1]血液ガス分析
[2]呼吸不全
[3]高酸素血症
[4]低酸素血症
[5]高二酸化炭素血症
[6]低二酸化炭素血症
[7]酸塩基平衡障害の評価
[8]練習問題
[9]代謝性アシドーシス
[10]代謝性アルカローシス

第6部 心電図―心筋の電気活動を通して見る人体―
[1]基本事項
[2]心電図の判読方法
[3]特殊な波形パターン
[4]不整脈

第7部 尿・体液検査―局所から得られる全身の情報―
[1]尿検査
[2]髄液
[3]胸水
[4]腹水
[5]関節液

第8部 感染症検査―微生物との戦い―
[1]基本戦略
[2]染色法
[3]培養
[4]各種検査
[5]結核検査法
[6]敗血症

付録
[1]基準値一覧
[2]計算式一覧

索引